Thumbs-up

 鳩山総理が6月2日(水)午前に辞任表明をした。前日夕の小沢、輿石との会談後、記者団の続投ですかとの質問に対して、総理が黙って示した親指立てのポーズをした。辞任の本筋に関係なく、このポーズ(Thumbs-up)について調べてみた。

 私は、このThumbs-Upについては、よく知らなかったが、うまくやったとかの意味のようである。調べ始めた際の主な疑問は、a)何故thumbsと複数なのか、b)英和辞典だと「賛成」との意味だが、どうして変化したのか、などであった。
 例によってウェブで調べたが、日本語のページは語源としては物足りなく、次の英語のWikipediaが非常に詳しかった。これに加え、最後に映画「ターミネーター2」についても若干触れる。
http://en.wikipedia.org/wiki/Thumbs_up

1) thumbs-upのオリジンは、古代ローマの剣闘士(gladiator)の試合に遡る。負けた剣闘士を殺すか許すかを観衆に聞き、観衆は、thumbs-up(賛成)かthumbs-down(反対)のジェスチャーで答えた。この場面を描いた有名な絵が19世紀フランスのジェロームのPollice verso(英語ではthumbs-downとされているが、原語の意味は「曲げた親指」。現代イタリー語でもpolliceは親指)だ。絵は上記のWikippediaのページにある。この絵は、勝った剣闘士が相手を殺すか、許すか、観衆のverdict(評決)を聞いているところらしい。
 面白いことに、thumbs-upとdownとどちらが剣闘士を殺すことになったのかは不明らしい。すなわち、勝った剣闘士が負けた側を殺すことに賛成(反対)なのか、負けた側を許すことに賛成(反対)なのかが、残された記録では不明らしい。

2) これで、thumbsと複数になっている理由が判る。競技場とか議会とかで多数の人が賛成(反対)の意思を表現するためのジェスチャーなのだ。この他に、中世の、商取引書類に封印(seal)する慣習に由来し、thumbs-upの仕草が、調和と善意を示すようになったとの説もある。これでは、「よくやった」などの意味につながることは判るが、何故複数なのかよく判らない。

3) その他の語源説もあるが、この仕草が一挙に世界に拡がったのは、第2次大戦時の米軍の空母の艦載機のパイロットが出発OKの状態を示すためにthumbs-upをしたことらしい。これにより甲板上の乗員が離陸の作業に入った。そもそもは中国に駐在した米軍に由来するとの説があり、中国ではこのジェスチャーは、「第1」とか「尊敬」とか「いい」とかを示すとのこと。

4) この仕草は、各国で意味が違う場合がある。有名なのは、中東では卑猥な意味の侮蔑を表すものであり、米軍がイラクに進駐した時に、沿道のイラク国民からこの仕草を浴びせられた。しかし、進駐米軍兵士は、歓迎されていると誤解した。
 Wikipedia では、その他にも各国の例が紹介されている。日本については、男を示し、小指は女性だと紹介されている。

5) "Thumbs up!"は、このようにして、元来の賛成、反対(down)の意味から、「いいぞ、うまいぞ、やったぞ」(研究社、リーダーズ英和辞典)の意味になったのであろう。その際、1人の片手でも、元来の用法を受け継いだ複数形が残ったのであろう。

6) ところで、鳩山総理(当時)がこの仕草をしたのは、ウェブでも指摘されているように、多分、映画ターミネーター2(1991)の最後の場面で、シュワルツネッカーが人類のために溶鉱炉の中に自ら沈んでいく時にこのThumbs-upをしたことが頭にあったのではないかと思う。
 この親指立ては感動のシーンなのだが、テレビでの放送やレンタルショップでの貸しDVDには、これの伏線となる場面が省略されているとの話をウェブで読んでびっくりした。すなわち、映画の途中で、少年ジョンと未来から来たロボットのシュワルツネッカーの交流を示す場面がある。ジョン母子を守る使命を帯びているが人間の感情を解さないロボットに対し、ジョンがいろいろな人間の感情を教え、ロボットが完全には理解できないまでも少しずつ理解しようとする。その中に、うまく行ったという喜びを示す仕草としてthumbs-upを教えるところがあり、これがラストシーンの伏線である。
 私はたまたま当時映画館で見たのでよく覚えているが、これが抜けたのでは、最後の感動シーンもぼやけてくるに違いない。時間の関係でカットされたらしいが、残念だ。
 これに触れてあるページは、例えば次。
http://oshiete.goo.ne.jp/qa/2840276.html
 thunbsupを「GoodLack」と教えるとあるが、「Good Luck」のミスプリ。