21世紀の最初の10年

 そろそろ2010年も終りに近づいた。21世紀も10分の1、最初の10年を終えることになる。米国の雑誌TIMEの2010年12月6日号で、「What Really Happend 2000-2010」と題した特集が組まれ、2000-2010年の10年間に何が起きたかを振り返っている。TIMEのウェブ版のページでは、http://www.time.com/time/specials/packages/article/0,28804,2032304_2032746_2032955,00.html
 ただ、ウェブ版の特集のタイトルは、「TimeFrames」となっていて、何故か、雑誌の特集のタイトルとは異なる。中の個別記事のタイトルは同じで、次のとおり。

  • Looking Back to the Future (前書き。2000年のY2K騒ぎから説き起こしている)
  • 2000: A Nation Divided (2000年のブッシュ、ゴアが争った僅差の大統領選の騒ぎ)
  • The Men Who Stole the World (エンタテイメント業界を崩壊させかねかなかったファイル交換ソフトNapstarその他のソフトを作ったShawn Fanning他計4人の若者達)
  • Ground Zero: Out of the Ashes (2001年9月11日の貿易センタービルの崩壊の後)
  • The Long View (長期的視点。内容はよく判らない?)
  • Why Journalists Get the Big Things Wrong (ジャーナリストの過ち。内容はよく判らない?)
  • Katrina: A Man- Made Disaster (ニューオリンズを襲ったハリケーン)
  • China: Too Little Information (中国の台頭)
  • Shrek: Mr. Influential (アニメ映画)
  • Was It Really So Bad? (リーマンショックは本当に悪かったか)

 このタイトルを見ているだけで、米国人の捉え方には、日本人と違うところがあるものだと感じる。例えば、
a) ブッシュ、ゴアの大統領選のごたごたは米国人にとって相当衝撃だったようだ。
b) 何と言っても、9/11のテロとイラク戦争は、米国人にとって歴史的大事件。
c) 日本では必ず問題にされるであろう地球温暖化問題が、少なくともタイトルからは出てこない。関心が薄いようだ。

(10年間の変化)
 ウェブ版には出ていないが、雑誌版では、世界の10年間の変化を示す色々な指標がイラストやグラフで楽しく紹介されている。私の勝手な視点で面白かったものを紹介しよう。
1) 同性婚を国家として認める国が、2000年にゼロであったのが、2010年に10か国と増えているのには驚いた(欧州がオランダ他6か国、カナダ、南アメリカ、アルゼンチン)。米国では、州単位では認めている所があると、かつて読んだことがある。こんなことで、将来の人類の存続は大丈夫だろうか。日本では当分関係の無いことだと信じたい。
2) 携帯電話が増えている。特にインドは、2000年に200万台だったのが、2010年には5億4500万台。
3) インターネットの世界でも新しいものが出現した。2001年1月にWikipedia、2005年4月にYou Tube。何れも今日の世界では無くてはならないものになっている。

(Googleのdecade)
 TIMEでは明示的に紹介されていないようだが、私は、この10年で最も目覚しいのは、Googleの発展だと思う。1990年代に発展したインターネットは、21世紀に入り、Googleやそれに牽引された前述のWikipediaYou Tube等により、Web2.0クラウド等今までとは質的に違う新しい世界を開いたと思う。
 Google社は、1998年に、当時スタンフォード大の学生だった、ラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンによって設立され、翌1999年にベンチャーキャピタル2社から計2500万ドルの出資を受けた。2001年には、かねてサン・マイクロシステム社の創業に携わってきたエリック・シュミットをCEOに迎え、これにより、Googleは企業としても大きく成長した。
 私の思い入れで言えば、この10年間は、Googleのdecadeだったと思う。TIMEは、毎年の最終号で、表紙を飾るPerson of the yearを発表する。2010年の最終号では、Person of the yearに加え、「Persons of the decade」も選んでもらいたいと思う。もちろん、Larry PageSergey Brinだ。
 しかし、多分、この提案は陽の目を見ないだろう。というのは、前述の12月6日号に、Person of the yearの候補者が12名ノミネートされているからだ(当然この2人は入っていない)。もっとも、このリストは、有名人(多分)12名がそれぞれ候補者を挙げているもので、ちょっと筋違いの人も多く、冗談ぽい感じがする。このリスト以外の人になるかもしれない。

(次の10年、2010年代*1 )
 前述のとおり、21世紀の最初の10年は、Googleに牽引されるインターネットの「新しい発展」の時代だったと考える。梅田望夫ウェブ時代 5つの定理」(文春文庫、2010年2月。単行本は2008年3月)は、シリコンバレーのヴィジョナリー(意味合いとしては、オピニオンリーダー的な感じか)達の金言集である。アントレプレナーと技術に対する絶対的な信頼から生ずる持続的発展への信仰は、我々を明るい気持にしてくれる。その金言の1つを紹介する。
「私はGoogleが大好きだけれど、歴史の進展も大好きだ」−Esther Dyson*2
 ITの世界は、絶えず新しい波が寄せる。明年からの10年にも、Googleを越える新しい波が起るに違いない。その新しい発展を見るのが本当に楽しみだ。
以上

*1:次の10年は本当は2011年から2020年までだが、呼びにくいので「2010年代」とする

*2:エスター・ダイソンは知らなかった。次のペ−ジが詳しい。http://d.hatena.ne.jp/different/20080902/1220343239