有料道路障害者割引・その3

 去年の11月に次の記事を書いた。
id:oginos:20101106 (有料道路障害者割引制度)
 障害者だった友人が、有料道路障害者割引制度の運用について嘆いていて、具体的には、割引制度が適用されるのが、あらかじめ登録した1台に限定されているので、車の故障で代車を使うときに適用されないのは不当だということだった。私は、このことに深く同感して、いろいろ調べたというのが上記の記事だ。その中で、総務省の「インターネットによる行政相談窓口」に質問したことも紹介した。その質問は10月6日で、永く返事が来ないのであきらめていたが、1月31日に総務省から返事のメールが来た。国土交通省に再度照会し、国土交通省の方でも検討が進められる可能性のある旨が記載されていた。
 まだ検討の可能性だけで、先行きどうなるかは判らないが、返事のあったことは嬉しい限りである。以下、総務省からの回答メールと私のお礼の返信メールを添付し、最後に若干のコメントを付け加える。
1) 総務省からの回答メール(2011年1月31日)

荻布様から、当省が平成14年6月に国土交通省にあっせんした「有料道路料金の障
害者割引制度における利用手続の緩和」の改善状況について、お問い合わせいただきましたが、次のとおりお答えいたします。

1 平成14年8月、国土交通省から、各有料道路事業者に対して検討を要請したとの回答がありました。
その後の対応状況について、当省から国土交通省にフォローアップを行ったとこ
ろ、以下の対応が講じられたことを確認しました。
a) ETC処理の場合、事前に必要な情報を登録することにより割引を適用(平成16年1月から実施)
b) 料金所係員が処理する場合、割引証を廃止し身体障害者手帳等の提示により割引を適用(平成15年12月から実施)
2 その後も、総務大臣が委嘱する行政相談委員から以下のような意見が寄せられたことから、2度に渡って国土交通省に照会を行いました(平成17年及び22年)。
(意見要旨)
車検、修理等の事情により登録した自家用車ではなく、代車を使用して身体障害者の通院等のために有料道路を通行する場合にも割引を適用してほしい。
国土交通省の回答)
登録自動車の代車として使用しているということを確認する具体的手段がない中で代車を割引の対象とすることは、目的外での利用の拡大や不正利用につながりかねず、結果としてそれによる減収拡大分が有料道路利用者全体の負担に帰することとなるため、割引対象にするのは難しい状況である。
しかしながら、適切な確認手段さえ確保されれば本来的には代車に対する割引適用は妥当なものであり、利用者からの要望等を踏まえ、これまでも有料道路事業者に対し、利用実態等を踏まえて検討が進められるよう求めてきているところである。
障害者割引制度に関する意見・要望等に対し、国土交通省では、引き続き割引制度の実施主体である有料道路事業者(高速道路6会社、地方道路公社等)へ適宜情報の提供を行うとともに、その対応について検討を依頼している。    
また、修理等において登録自動車が使用できない場合の代車の割引適用については、運用面の課題等があり、有料道路事業者間でその課題等について情報交換や検討を行っているところである。
3 こうした国土交通省の取組状況については、行政苦情救済推進会議のメンバーにも報告することとしております。

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実名(秘匿)
総務省 行政評価局 行政相談課 行政相談業務室 行政相談官
Tel

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2) 私から総務省へのお礼の返信(2011年2月1日)

拝復 ○○様。
 ご回答をたまわり、有難うございました。待ち焦がれていまして嬉しい限りです。感謝申し上げます。
 ご回答によりますと、総務省から国土交通省に何回か照会され、同省の方でも問題の趣旨を理解されて検討をされているとのことで期待しております。

 僭越ながら、ご回答中にあります「国土交通省の回答」のうち1点について、コメントを申し上げます。「代車を割引の対象とすることは、目的外での利用の拡大や不正利用につながりかねず」に関してです。
 「不正利用」の定義についてはいろいろ考え方があると思いますが、単純に「障害者以外の人」が利用することとします。ETC利用車について1台限定を外すと、不正利用を防止することは極めて困難という点については同意見です。従って、私としては、有料道路の有人出口については、登録車両制を廃して障害者手帳の提示のみで割引を受けられるようにするということを提案したいと思います。これにより、不正利用を防止できますし、代車への適用等、利用者の利便は高まります。ETC利用車については、不正利用防止の点から現行の1台登録は止むを得ないと思いますし、利用実態によっては制度の見直しも検討していいかと思います。

 以下、ご参考までに、昨年10月14日に、私が貴省HPの「インターネットによる行政相談受付」に本件照会を提出して以降のことで、4点ご報告したいと思います。
1) 本問題について嘆いていて、照会文の冒頭に書きました障害者の友人(太皷地武君)が、11月16日に心臓病が急変して亡くなりました(死亡と本件とは関係ありません)。
2) その友人が亡くなる前に毎日新聞の投書欄に、本問題について投稿していたのですが、たまたま死後の11月20日に掲載されました。(「有料道路障害者割引制度について」、添付ファイル参照)毎日記事101120.pdf 直
3) 少し時間を遡って、私は、友人の嘆きを聞いた後、11月6日付けの私のブログにこの問題についての調査結果と提案を掲載しました。ブログのままだと見にくいので文書ファイルにダウンロードして添付しました。上記の私の提案についてその考え方を説明してあります。少々長いですが、ご参考までにと思います(上記のブログと同じなのでこの記事では省略)
4) 私の友人は、このブログを読んで、11月7日付けで同ブログへコメントを寄せてくれました(上記の文書ファイルの最後に付いています)。それによれば、a)ETC車の代車への適用までは考えていなかった、b)茨城県の高速の出口で細かくチェックされ駄目だと言われた、と書いてあります。b)のことから見ると、例えば出口で柔軟に対処するようにというような事務的連絡では駄目で、明文化された改善が必要かと思います。

 以上ご参考になればと思います。
 最後に重ねてですが、ご回答を頂きまして本当に有り難うございました。

2011年2月1日
荻布真十郎

3) コメント
 総務省から返信が来たのは誠に結構であるが、文面を見て若干気に懸かることがある。すなわち、「修理等のために登録車が使用できない場合の代車」に繰り返し言及し、問題を代車に絞っているように見える点である。
 しかし、私の総務省への質問にあるように、問題は、「介護者や知人等の手助けを受ける場合」にも割引が適用されることである。何故「代車」に問題を限るかというと、太皷地氏の新聞への投書が、代車が適用されなかったという彼の実体験から書き始められていたからで、取りあえずそれに対応すればいいとの考えであろう。しかし、彼の要望は、投書の最後にもあるように、障害者手帳だけで割引が受けられるようにとのことである。
 実際、今の登録車制度のフレームをそのままにして、代車にも対応できるように修正するとすると、代車の都度、市の福祉事務所に行って登録をやり直す手続になると思われ、それは相当煩瑣なことであろう。
 国土交通省が、代車に限定したいのは、割引額の規模が本当に巨額であるためかも知れない。利用実績を踏まえての検討が必要だろうが、私にはデータが無い。ただ、国土交通省が不正利用の防止に加え、目的外使用の拡大の防止を言っているのは、そのためかも知れない。
 目的外使用とは、制度の趣旨の「通勤、通学、通院等の日常生活における…支援」に外れる利用である。具体的にはレジャーなどでの利用は割引対象にすべきでないとの考えであろう。私は、障害者が喜ぶならレジャーの遠出も割引してもいいと思うが、それは制度の趣旨に関する見解の相違だから特に主張しない。ただ、「通勤、通学、通院等」に限りたいなら、1台限定登録という不便な制度でなく、割引は例えば100キロ以内に限るという制度もあり得、その方が、関係者の事務も合理化され、利用者も喜ぶのではないかと思う。
 何れにしろ、今後国土交通省内で検討が進められることを期待する。
以上