ナデシコ

(10大ニュース集計結果)
 2011年の10大ニュースもあちこちで発表されている。このブログ*1で注目していた読売新聞の「読者が選ぶ十大ニュース」の結果も発表された。12月に入っての北朝鮮金正日総書記の死亡は、番外として扱われている。
読売新聞のページは、http://www.yomiuri.co.jp/feature/2011news10/list_j.htm 。なお、私が見やすく1ページにまとめたファイルを添付した。
2011年10大ニュース集計結果一覧.docx 直
 私が弊ブログで主張していた「不正事件(私の定義では「人が意図的に法や倫理に反することをする」事件)」は、結局30位までのランキングで8件入選(?)し、比率は27%となった。2009年の4件(13%)、2010年の3件(10%)に比して急上昇している。これは、遵法意識の欠如により意図的に不正をする人が増えた面もあるかも知れないが、世の中の不正への意識が以前より厳しくなり、発見され、騒がれる度合いが増えたという要素もあるのかと推測する。
(ナデシコ)
 国民栄誉賞も得た「なでしこジャパン」の活躍は、明るいニュースの筆頭で、堂々2位。ナデシコは英語では pinkだ。このことを知らない人が多い(私も知らなかった)。年の最後に、ナデシコという言葉に関して若干のうんちくを述べる。1)各国語でナデシコをなんと言うか、2)ピンク色は各国語では何と言うか、3)わいせつを表す色は各国語にあるか、4)大和撫子とは何かに分けて説明する。調べた各国語とは、手許の電子辞書の中にある、独語、仏語、スペイン語、イタリア語、中国語。
1) ナデシコを各国語で何というか
 以下、各国語でアルファベットによく付けられるアクセント記号等は、フォントの関係で全て省略している。
○ 英語では前述のとおり、pink。 pinkは第1義がナデシコの花のことで、ピンク色はこの花の色から取られた第2義的な意味だ。pinkは、日本語と同じく性的な意味の俗語でもある。
 英語以外の言語を見たが、英語のpinkほど面白い発見はあまり無い。
○ ドイツ語 Nelke (ネルケ) ナデシコ*2の植物、クローブ(チョウジ)などを指す語。
○ フランス語 oeillet (ウィイェ) ナデシコカーネーションを指す。oeil (ウィユ)は「眼」。oeilの派生語には、oeil-de-faisan(ウィユドゥフェザン、アネモネ、直訳はキジの眼)、oeil-de-paon(ウィユドゥパン、ティグリディア、直訳はクジャクの眼)などの花がある。なお、oeillet de mer (ウィイェドゥメール)は、イソギンチャク(直訳は、海のナデシコ)。
スペイン語 clavellina (クラベイーナ)はナデシコclavelカーネーション
○ イタリア語 garofano (ガロファーノ) ナデシコカーネーションクローブなどを指す。
○ 中国語 瞿麦 (qumai チーマイ) 「瞿」は、元来「目をきょろきょろさせて驚いたり、怖がったりするさま」だ。 「瞿麦」が何故ナデシコかよく判らないが、日本語でも、音読み「クバク」、訓読み「ナデシコ」で、国語辞書に掲載されている。後述するが、「瞿麦」は元来セキチクのことを指していたようである。
2) ピンク色を各国語で何というか
 ナデシコの英語がpinkであり、色もpinkと言うのは前述した。それではこのピンク色を各国語で何と言うか。各国語の「和○辞典」で調べた。以下のように、欧州の言語はroseを語源とする語で、バラ色とピンク色の両方を示しているものが多い。ロゼワインもこのrose系の形容詞を用いている。以下、原則形容詞(ピンク色の)を掲げる。
○ ドイツ語は、rosa(ローザ)又はrose(ロゼー、eの上にアクセントが付いているから仏語であろう)で、何れもバラ色、ピンク色だ。rosa Rosen (ローザローゼン、ピンク色のバラ)というややこしい用例も出ている。
○ フランス語は rose (ロゼ)。
スペイン語rosado(ロサド)。
○ イタリー語は、rosato (ロサート)。
○ 中国語は「粉紅色(fenhongse、フェンホンスー)」。「粉」はおしろい、「紅」と併せてピンク色となる。
3) わいせつな色
 1)の英語の所で述べたように、日本語と英語のピンク色には、わいせつなニュアンスがある。上記の他国語のピンク色を表すrose系の語には、そのような意味は無いようである。それでは各国語でそのような意味の色はあるか、可能な範囲で調べた。参考にしたページは、http://r25.yahoo.co.jp/fushigi/rxr_detail/?id=20060824-90001838-r25
○ 英語 pinkの他、blueにもそのような意味がある。blue filmなどその例だ。
スペイン語 verde (ヴェルデ、緑)がその意味で使われることがある。cine verde (シネヴェルデ)とは、ブルーフィルムのこと。
○ 中国語 「桃色」と並んで「黄色」もよく使われるようだ。ある中国語会話の本に、色を指すときに他の色は「○色」でいいが、「黄色」の場合は「黄顔色」と、本当の「色」を示す「顔色」をつけないと誤解されるとの説明があった。桃色と言えば、私の小学生の頃、新聞で「高校生が桃色遊戯で補導」などの記事がよく出ていた。内容はよく判らないまま、妖しげな禁断の香りを感じたものだ。「桃色(遊戯)」は、今の日本語では死語に近い。
 他の言語はよく判らない。参考にした上記のURLでは、仏語では白にわいせつなニュアンスがあると書いてあるが信じられない。私の辞書ではよく判らなかった。
4) 大和撫子
 なでしこジャパンの女子選手たちは、ヤマトナデシコ(大和撫子)の象徴だとも言われる。大和撫子とは、例えば新明解国語辞典では、「(か弱いながらも、りりしい所が有るという意味で)日本女性の美称」とある。ワールドカップでの彼女たちの活躍には私も賞賛を惜しまないが、それ以外の場合での選手たちのはしゃぎ振りを見ると、「か弱さ」があるとはとても思えず、大和撫子と呼ぶのには違和感がある。それで、大和撫子について調べた。
 平安時代に中国から石竹(多分当時も中国語で「瞿麦」)が伝わった時、日本のカワラナデシコ(河原撫子)に似ているので、中国の石竹をカラナデシコ(唐撫子)、日本のをヤマトナデシコ(大和撫子)と称することとしたとのこと。私の推測だが、カラナデシコカワラナデシコだと紛らわしいので、日本のカワラナデシコの方をヤマトナデシコに変えて区別することにしたのだろう。
 大和撫子も、元々は河原に咲く河原撫子だった訳だ。

*1:弊ブログ「2011年10大ニュースと不正事件 id:oginos:20111203参照

*2:ナデシコ科は、ナデシコカーネーション、後述のセキチク