2011年の漢字−京

 2011年の漢字は「絆」だそうだ。
 科学技術の分野での2011年の漢字は、私が思うところ、数の単位の「京」(けい)だ。京にまつわる今年の大きな話題は2つある。
 第1は、福島原発事故で放出された京ベクレル・レベルの放射能で、第2は「京コンピュータ」だ。
 第1の放出された放射能の量については諸説ある。100京ベクレルとの説もあるが、この10月のフランスの調査機関の発表では2.71京ベクレルだ。
http://www.afpbb.com/article/disaster-accidents-crime/accidents/2837858/8001194
 本ブログでも、京ベクレルの問題を国際単位系の問題点として取り上げた(id:oginos:20110425)。
 第2の京コンピュータについては、和光市理化学研究所理研)を見学した際の話の1つとして取り上げた(id:oginos:20110129)。理研が開発中で、2009年秋のの行政刷新会議事業仕分けで、蓮舫議員(現大臣)から「2位じゃダメなんですか」と言われたスパコンだ。10ペタFLOPS*1の超高速演算速度を目指し、その後、本年11月にはこの京コンピュータが、世界のスパコンの第1位になったと発表された。来年にも他国に追い抜かれるとの話もあるが、取りあえず誠に喜ばしい。当初「京速コンピュータ」と言われたが、今では、単に「京コンピュータ」と呼ばれている。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%AC_(%E3%82%B9%E3%83%BC%E3%83%91%E3%83%BC%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%83%94%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%BF)
 京コンピュータの設置場所は、神戸市のポートアイランドで、三宮駅からポートライナーで行ける。私は行っていないが、このポートライナーの駅名が、2011年の7月に、旧「ポートアイランド南」駅から「京コンピュータ前」駅に改称された。
 この駅名はある意味で画期的で、「コンピュータ」が付く初めての駅名だ。ウェブの乗換検索で「コンピュータ」が付く駅を探してもこの駅しか出てこない。
 数の単位としての「京」が駅名になったのも珍しい。ウェブ・アプリの「ナビウォーク」は単なる乗換案内アプリと異なり、駅名に加え、住所も検索できる(有料会員のみ)。「京」は東京、京都の例もあり多いが、単位としては無さそうだ*2。「兆」は駅名では無いが、住所では京都市に「鳴滝吉兆谷」だけがある。「億」は、鉄道の駅名では無いが、バス停で、広島市の「弘億(ひろおく)団地*3だけがあり、住所では愛知県半田市に「億田町」と言うのが中、西、東と3か所出てくるだけだ。
 以上から、「京」は、「億」、「兆」を抜いて(?)、大きな数の単位としては初めて鉄道駅名に採用された画期的な単位と言える。
 数の単位の話を少し続けると、京は10の16乗、その次は「」(がい)で10の20乗だ。その上は延々と続き、最大では「無量大数」=10の68乗というのがある。英語ではもっと大きいのがある。10の100乗を「googol(グーゴル)」と言う。今を時めくGoogleは、このgoogolをもじって付けられたものだ。世界の全ての情報を整理しようとの創業者の意欲の表れだ。更に、googolplexという言葉があり、10のgoogol乗、すなわち10の(10の100乗)乗だ。これが私の知っている最大の数だ*4
 ベクレルの「京」は歓迎できないが、スパコンのFLOPSは、どんどん進歩して遠い未来には、googolplexまで行くことがあるのだろうかと想像すると楽しい。また、創業者の意欲通りのGoogleの発展も祈りたい。

*1:FLOPSは、1秒当りの浮動小数点演算回数、ペタは1000兆なので10ペタは1京。

*2:奈良市にJRの京終(きょうばて)駅という想像力をかきたてる駅があるが、単位では無さそう。

*3:この団地名から始まるバス停名が8つもあるから相当大きな団地のようだ。

*4:googolもgoogolplexも、普通の英和辞書に昔から載っている(少なくとも私の持っている1960年発行の辞書に載っていた)。