フェイスブックのタイムライン

 米TIME誌の最新版2012年2月13日号に、フェイスブックの新サ−ビス「タイムライン」が取り上げられている*1 *2。以下、それを簡単に紹介する。私の感想を先に述べれば、この新サービスはあまり普及しないのではと思う。
 1年前の弊ブログで、2010年のTIME誌のパーソンオブザイヤーとなったマーク・ザッカーバーグとそのフェイスブックを紹介した(id:oginos:20110113)*3フェイスブックはその後発展を続け、会員数は世界で8億人を突破した。また、本年2月1日には、IPO(新規株式公開)を発表した。上場による調達額は50億ドル(約3800億円)に達し、2004年のグーグルを上回って米インターネット企業としては過去最高になる見通しとのこと(2012/2/5日経新聞)。
http://www.nikkei.com/paper/article/g=96959996889DE1EAE6EBEBE6E5E2E2E0E2E0E0E2E3E09F9FE2E2E2E2;b=20120202
 「タイムライン」は、昨2011年9月のフェイスブックの「f8(エフエイト)コンファレンス」*4で、ザッカーバーグが自ら大々的に紹介した新機能だ。TIME誌によれば、この9月の発表から数か月経った現在、この2-3週間でフェイスブックの全ユーザーに紹介されているとのことだ。
 日本語のフェイスブックのHPにも紹介されている。http://www.facebook.com/about/timeline これによれば、「タイムライン」は、「新しいプロフィール」のページで、言うなれば「自分史」とのこと。

自分がフェイスブック上に投稿した出来事、アップした写真やチェックインしたスポットなどはもちろん、大学の卒業や、結婚といったライフイベント、いままで聞いた音楽や観た映画、作った料理など、自分に関するありとあらゆる事柄がタイムラインに積み重なっていきます。

 すなわち、今までフェイスブックに自分が書いたことが、時間軸上に表示され、容易に閲覧することができる。更に新しく、過去に遡っての自分の「ライフイベント」を簡単に追加することもできる。ザッカーバーグは、昨年9月のプレゼンの際、「誕生」イベントとして、自分の赤ん坊の時の写真も見せていたとのことだ。
 TIME誌の記事は、SNS(ソーシャル・ネットワ−キング・サービス)関係のジャーゴンが多く、私には読みにくいもので十分理解できたとは言えないが、理解の範囲内で紹介する。同誌によれば、フェイスブックのプロダクト・マネージャーのレッシン氏は、世の中のソーシャルメディアが「現在にしか優先順位を置いていないことに」不満だとのことだ(タイムラインは、全人生を表現する)。ザッカーバーグの狙いは、Twitterも含むSNSの中でトップを確保したいとのことで、このタイムラインはその切り札らしい。
 日本のウェブを見ていると、タイムラインの使い方等を紹介する記事は多いが、今のところ否定的なコメントはあまり見られないようだ。しかし、TIME誌の記事は、やや批判的な見方のようだ。
 フェイスブックは、SNSの中でトップの座を維持すべくいろいろ努力してきた。今や人がネットで過ごす7分間のうち1分間がフェイスブックであり、ソーシャル関係サイトで過ごす4分間のうちの3分間がフェイスブックとの調査もある。グーグルもフェイスブック上で交わされる情報にはアクセスできない。今ではウェブ世界の覇者だ。
 しかし、抵抗もある。ある社がフェイスブックの利用者4000人以上から回答を得たアンケートによれば、83%がこのタイムラインに否定的な感想を持っている。フェイスブックが登場した時(2004年)は、せいぜいが大学生間の情報共有であったが、会員数がこれほど増大した中では、個人情報の提供範囲が問題になる。タイムラインを開始して1週間以内に個々の情報についてその公開の範囲を限定しない限り、公開になるようである。また、フェイスブック関係の他のアプリケーションが、それらの情報にアクセスすることも可能になるとのことだ。ある意味で便利になるが、個人情報が広範にアクセス可能になることを嫌がるメンバーもいる。
 アップル創業者のスチーブ・ジョブズマーク・ザッカーバーグは似ていると言う人もいる。すなわち、「顧客がその希望を我々に伝えてくるのを待っているのではなく、顧客が最も興味を持つと我々が考える商品を我々が開発し、顧客に提供していく」という点だ。このタイムラインについても、抵抗があることを知って、積極的なPRはしていないらしい。ザッカーバーグは、タイムラインを使用してその価値を知った利用者が口コミで他に紹介していくであろうと、その普及を確信しているとのことだ。
 私としては、前にも書いたが、実名主義はいいにしても、履歴書を額にぶら下げたみたいなウェブ世界へのデビューには抵抗感がある。また、自分の過去をウェブ上にぶちまける気にもなれない。

*1:TIME誌とtimelineとでややこしいので、この記事では、後者を「タイムライン」とカナで表記する。

*2:不思議なのだが、ウェブ版のタイムには掲載されていないようだ。しかし、検索すると、TIME会員だと読める。http://www.time.com/time/magazine/article/0,9171,2105972,00.html

*3:フェイスブックについては、その後もマージナルな話題で2回。id:oginos:20110220、id:oginos:20111211

*4:フェイスブックが毎年1回開催している開発者向けコンファレンス。「f8」とは、そのコンファレンス後に恒例となっている8時間のHackathonに由来するという、よく判らない説明がある。http://en.wikipedia.org/wiki/Facebook_f8