ネット環境の完全無線化

 この3月初旬から4月初旬にかけて、家及び自分のインターネット環境(以下「ネット環境」)を抜本的に入れ替えた。すなわち光ファイバーからWiMAXに全面的に入れ替えたので、インターネットに関しては我が家と外界の間では銅線もファイバーも無くなった。若干身辺雑事的であるが、同じようなことを検討されている方もいるかも知れないので参考までに紹介する。以下、1)入替えの概要と目的、2)従来のネット環境、3)WiMAX導入による新しいネット環境、4)検討の経緯、5)テザリング機能付きスマートフォンへの機種変更、6)その他について述べる。以下本文で8,000文字程度で少し長いがご容赦を。

1) ネット環境入替えの概要と目的
 この1か月余りで導入した我が家のネット環境機器は、外とはa)UQ WiMAX(モバイル・ルータ)、補助的手段としてb)スマートフォンテザリングだ。新たに購入した端末はc)7インチタブレットで、Wi-Fiを介してa)又はb)経由でネットに繫がる。7インチタブレットは、弊ブログ(「福島原発民間事故調id:oginos:20120326)の最後の項で紹介したとおり、机上のパソコンとスマートフォンとの中間の大きさでコートやジャケットのポケットにも入るという優れものだ。
 ネット環境再構築の目的は、実は逆の順序で、先ず7インチタブレットを買いたい、そのWi-Fi対応のタブレット*1を外でも使えるようにテザリング付きスマートフォンかモバイルルータがほしい、しかし、通信費の増加を防ぎたい、ということだった。結果としてテザリングとルータは両者とも用意することとなった。
 モバイル・ルータは家では従来の光ファイバーの替りとして2台のパソコン等のネット環境となり、外出する際に持ち出せば、7インチ・タブレットのネット環境となる。家人が家にいて私1人が外出する場合はモバイル・ルータは持ち出せないのでスマートファンのテザリングで対応できる。テザリングは、家のルータがトラブルの時のバックアップとしても期待できた。
2) 従来のネット環境
 我が家のブロードバンドは、1999年に小田急ケーブルテレビ(現J:COM)がCATV回線を利用したインターネット接続実験を開始した際にそのモニターに応募し、翌2000年開始の本格サービスにも参加したことに始まる。この時のCATVの基幹線網は光ファイバーだったが、各家庭には同軸ケーブルであった。この環境は、当時大学生だった息子に提供し、喜ばれた。
 私自身のパソコンは、細々とISDN回線や携帯電話を使ったダイヤルアップ接続だったが、2003年の3月頃、最寄り駅の駅前でキャンペーンをしていた「Yahoo! BB」の説明に引かれ、導入した。これは、外との間の線は銅線の電話線を利用したADSLだったが、家庭内はオプションの無線LANパックを利用した。無線LANの規格はIEEE802.11b (公称速度11Mbps)で今より少し遅い。ところが翌2004年4月に、光ファイバーの語に引かれ、東京電力の同サービス「TEPCOひかり」に変更した。家庭内は、その東電の無線LANのレンタル・サービスを利用した*2無線LANによって可能になるノートパソコンの家庭内移動の便利さはその後も手離せかった。無線LANの規格もIEEE802.11g(公称速度54Mbps)にアップ。
 その後、2007年に、TEPCOひかりの事業は東京電力からKDDIに譲渡され*3、「ひかりone」(2010年から「auひかり」)となった。
 それで、この3月までの我が家のインターネット環境は、外からはKDDI光ファイバーが入り、その終端はONU(光回線終端装置)で、それからLANケーブルを介してホームゲートウェイ無線LANステーションへ繫がる。無線LANステーションからは無線LAN(Wi-Fi)で、ノートパソコン2台(私と家人用)、無線LANプリンター、その他(一時あった10インチタブレットiPad、時々は携帯電話、息子が来た時の息子のモバイルパソコン)が繫がる。KDDIへ支払う料金は月6000円強だ。

3) WiMAX導入による新しいネット環境
 検討経緯は次項で説明するが、1)で概要を説明した環境の詳細は次のとおり。
 外部との間はWiMAX(ワイマックス)と呼ばれる無線WAN(Wide Area Network)(次項で少し解説)で、10?x6.5cm程度の小さなモバイル・ルータが、上記の光ファイバーの場合のONU、ホームゲートウェイ無線LANステーションを兼ねる一体型ルータだ。従来のパソコン、無線LANプリンターはそのまま。ただ、これらのパソコン等には無線LANの設定の変更をする必要があるが、「らくらく無線スタートEX」というツールを使うと驚くほど簡単に設定できた。
 私が今でも不思議で、買う前にも電気店の店員にしつこく確認していたのは、パソコンから無線LANプリンターに印刷できるのかということだった。インターネットと個々のパソコンとの間の通信の仲介をしているだけなら何とか理解できるが、プリンターでの印刷だと、パソコンとプリンターとの仲介もする訳で、上記の機能とは異なる。それでもそれがルータの機能だからできると言われる。たった1円(後述、キャンペーン価格)の機器なので釈然としない。しかし本当に印刷できるので有難い。
 機器やスペックは次のとおり。
 UQコミュニケーションズ(株)の「UQ WiMAX」がルータの名称。WiMAXのスピードは、下り最大40Mbps、上り最大10Mbps(後述するが実効速度はもっと遅い)。月額3,880円で使い放題。私の買ったルータは、「NEC Aterm WM3500R」という型番で、WiMAXの1年契約が前提で1円だった。通信料は毎月3880円(使い放題)。無線LANで同時に接続できる機器は同時に最大8台まで。家では電源コンセントに繋いで使うが、約120gの重さなので外にも持ち出して最大8時間持つ(モバイル・ルータ)。http://www.uqwimax.jp/service/product/model12/
 3月3日に購入し、家で使って様子を見てから、3月24日にKDDIauひかりを解約した。これにより、毎月の料金は、6237円から3880円に下る。
 使用心地は、今のところダウンはしていないので信頼性はまあまあか。残念ながら速度は遅くなった。ウェブのスピードメーターで計測すると、前の光ファイバーは10Mbps前後(下り)だったが、今のWiMAXは下りで1Mbpsから7-8Mbpsとむらがあって少し遅い。上りだと0.2-1Mbpsだ。その点は若干がっかりするが、私は音楽とか画像の送受信とかはあまりしないので致命的な苦には思っていない。そのうち慣れて電波がよく通ずるようになるかも知れないと期待している。

4) 検討の経緯
 WiMAX導入を検討する際のポイントは2つあって、第1は有線を無線にして大丈夫かという点、第2は無線にするにしても、他の選択肢との優劣だ。
(無線の信頼性)
 1月頃に近所の電気店でキャンペーンをやっているのを見てから、魅力を感じていたが、信頼性について不安があり、親しい友人2人に聞いて見た。2人からは信頼性と安定性の点で真っ向から反対された。しかし改めて考えると、2人は大学で情報関係を教えるプロであり、インターネットのヘビーユーザーであり、家、大学には長年の間に構築されたレガシー(?)なシステムがある。それらにトラブルが生ずるとしたら食い扶持にも影響しよう。それに引き替え私の家庭内システムは半ばお遊びだ。何日間か繫がらなくても多分致命的な問題ではなかろうと楽観的に考えられる。
 それでも心配なことは心配なので、バックアップを考えることとした。それが、自分の現在のスマートフォンを「テザリング」機能の付いたスマートフォンに買い替えることだ。
 テザリング(tetherとは英語で「繋ぎ止める、縛る」の意)とは、携帯電話を、パソコン等の他の機器と接続して外付けのモデムのように扱ってインターネットにつなげる機能で、従来も携帯電話とパソコンをケーブルで繋げれば可能だった*4。問題は携帯電話の使い放題の対象から外れていることで、実際にウェブ閲覧などすると禁止的に高額になった。しかし、最近通信回線等の高速化に伴い、この機能を定額(使い放題)で提供し、かつパソコンとの間をケーブルではなく無線LAN(Wi-Fi)で接続するものが出てきており、これがテザリングと言われ、一部のスマートフォンで導入され始めた。
 家のUQ WiMAXの調子が万が一悪くなった時には、スマートフォンテザリングを使って、家のパソコンのネット接続を確保できると考えた訳だ。それに、私の今のスマホは、もう1年4か月経っていて、2-3日に1回はフリーズして電源を入れ直さなければならない。そろそろ替え時かなと思っていたので、機種変更の方向は定まった。
(他の選択肢)
 このようにインターネットへの接続が無線で自宅でもモバイルでも使えるルータは、上記のUQWiMAXの他にも最近出てきている。2種類あり、1つはイーモバイル社のPocketWiFiであり、もう1つは3月中旬以降各社で計画されているLTEを利用したものだ。
(PocketWiFi)
 第1のPocketWiFi(http://emobile.jp/products/hw/d25hw/)は、インターネットへの接続方法は、3.5世代の携帯電話の通信回線の技術を進化させたDC-HSDPA方式で*5、最大下り42Mbpsと言われるものである。名称中にある「Wi-Fi」とは、国際通信規格IEEE802.11シリーズによる無線LAN機器間の相互接続性が「Wi-Fi Alliance(米国の団体)」によって 認証されたことを示す名称だが、最近はもっぱら無線LANと同義だ。無線LAN(改めて書き下すと、Local Area Network)の到達距離は途中の障害物の有無にもよるが100m程度以下である。すなわちPocketWiFiのWiFiとは、このルータから建物内や手許のパソコン等の無線機器に接続する無線LANのことを意味している。外のインターネットへの接続は前述の携帯電話回線(DC-HSDPA)だ。
 この意味では、UQWiMAXも、パソコン等の無線機器への接続はWi-Fi無線LANで、PocketWiFiと全く同じだ。WiMAXとは、このルータから外のインターネットに接続する際の無線で使われているWAN(Wide Area Nwetwork)の規格だ。この関係が実に紛らわしく、当初私には理解できなかった。WiMAXは、通信規格としてはIEEE802.16シリーズで、通信距離は中長距離で1kmから50kmとのことだ*6
 このPocketWiFiかUQ WiMAXかについては1か月間ほど悩み(実は私には本当の違いがよく判らないから)、結局、携帯通信回線よりWiMAXの方が少し速いかという比較レポートを見たことと、少し安かったので、UQ WiMAXにした次第だ。
(LTE)
 第2のLTEとは、「Long Term Evolution」のことで、新たな携帯電話の通信規格だ。下り100Mbps以上、上り50Mbps以上と速い。当初第3.9世代携帯電話(3.9G)と言われていたが最近は第4世代(4G)とも言われている。技術的なことは私には説明できない(そもそも上述のWi-FiWiMAXについても、その技術的内容は全く理解していない)。
 LTEの日本での展開は、NTTドコモの「Xi(クロッシー)」が、2010年12月に部分的な商用サービスを開始した。ただサービス地域が限られているので、旅行の際には使えないし、やや高い。ソフトバンクモバイルは2012年10月頃、KDDIは2012年12月頃に商用サービスを開始するとしている。
 イーモバイルは2012年3月15日に、「emobileLTE」の名称でスタートさせた(ルータ名はPocketWiFiLTE)。通信速度最大75Mbps(その後早期に112Mbpsを目指すとしている)でその魅力は大きい。私がUQ WiMAXを買ったのは3月3日だったので、その予告は見ていて速いので魅力はあったが、内容がよく判らなかったのと初物(IT業界では実績の無いものは一般に嫌われるそうだ)は導入したくなかったので見送った。当面は東名阪地域に限られているので旅行の時には使えないとの問題もある。
 それにしても、LTEはその速度で携帯電話としては大きな魅力だが、現時点ではなかなか実力を発揮できないようだ。(「続々サービス開始するLTE、真の実力を発揮できない理由とは?」 http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/column/20120403/1040306/?rt=nocnt)
5) テザリング機能付きスマートフォン
 テザリングは、KDDIau、NTTドコモイーモバイルで提供されている(http://www.infraexpert.com/study/wireless43.html)。私は、長年使っているauを変えるとメールアドレスの変更等の手間が面倒なので、最初からauの機種変更に絞った。auテザリング機能があるのは5機種で何れもスマートフォンだ(高価という意味)。その中で私にとっては必須機能のおサイフケータイ(この機能は安価な機種にも付いている)も備えているのは2機種しかない(何れも私にとって必須条件のAndroid機種)。
 この2機種間で迷ったが、決め手は、価格.comの「クチコミ」ページに書き込まれた投書のスレッド数だ。大体クチコミにはクレームが多い(もちろん評価している書込みや利用者間の情報交換も多い)。その2機種とも数百から1000を越える書込みスレッドがあるが、一方が他方の倍近い。多い方の機種の書込み内容を読んで見ると、何度もショップに修理に出したという話が目立つ。スペックはいいので、当り品を買えれば最高ともある。私もそちらのスペックの方がやや好みだったし、近くの携帯専門ショップでもそちらの方が値下りしていたので(1か月前までは同額)そちらを買いたかったが、「当り品」外れでは困るので、結局次を4月2日に買った。
 京セラ製 「DIGNO」 「WiMAX搭載スーパースリム防水モデル」と謳われている。ディスプレーのサイズは4インチだ。
 この「WiMAX搭載」について説明すると、auテザリングは、全て「WiMAX搭載」だ。WiMAXとは、先に述べたように、WANの通信規格のことだが、auのカタログをよく読むとUQWiMAXを利用しているということで、自前の通信システムではない。冒頭に述べたテザリング導入の目的の1つであったUQ WiMAXのバックアップという趣旨は、両者ともUQに依存しているので完璧では無くなる。しかし、トラブルは機器の故障ということもあり得るから、バックアップの意味は多少はある。テザリングは、最大8台まで接続可能ということだから我が家のルータとして十分だ。早速タブレットテザリングができることを確かめた。
 WiMAXテザリングだけでなく、高速通信にも使えるが、問題はバッテリーを大量に使うらしい。料金はWiMAXを1度でも使った月はプラス525円の定額だからリーズナブルだ。

6) その他
(7インチタブレット)
 3月3日にUQ WiMAXと同時に7インチのタブレットも買った。東芝REGZAのAT3S0が型番。
http://dynabook.com/pc/catalog/regza_t/111003at700at3s0/
 価格は店頭で44,800円だが、上述のUQ WiMAXのキャンペーンで、11,000円引きの33,800円ということで同時に買った次第だ。実は、ルータのWM3500Rは少し古い機器だが、新しいのだと、一緒に買うタブレットが5,000円引きにしかならない。ということで1万円引きを選んだ訳。
(評価)
 7インチタブレットは快適だ。WiMAXルータも当初2-3日間のトラブルを越えた後はトラブルなく動いている。前述のとおり少し遅いが、ライトユーザーの私には余り気にならない。
 問題は、テザリングスマホのDIGNOだ。第1は高価だったこと(熟慮の末の衝動買いとの感も)。第2はバッテリーが持たないことだ。ある日は午前11時半でバッテリー切れとなった。1年4か月前に初めてスマートフォンを買った時には新製品だからバッテリーが持たないのはしょうがないかと多少我慢し、次の製品では改善されるかと期待していたが予想を裏切られた。
 省エネ・モードにしているので、明るい戸外ではカメラを撮る際にもボタンの位置がよく見えなくて困る。戸外でのテザリングも未だ確認していない。何かしようと思う時には傍に充電器を抱えておかなければいけない。今後対策を考えて行かなければならない。
 それから問題とは言えないが、このスマホのディスプレイは大きくて4インチだ。タブレットの7インチと差が少なく、お互いの特色が際立たないのは予定外だ。スマホテザリングがあればもう少し小さくてもよかった。
(光ファイバーの撤去)

 解約したKDDI光ファイバーの撤去工事が4月に入って行われたので見ていた。家から出たファイバーは電柱間に張られた架線から撤去された。そうすると電柱間はファイバーを吊すメッセンジャーワイヤー(支持鋼線)だけになり、両側の電柱からのワイヤーが家の前でホックで留められているだけになってしまった(右の写真を参照)。その電柱間には他の光ファイバーは無い。たまたまこの間は私の家しかKDDI光ファイバーは無かったようだ。工事のお兄さんに聞いたら、そのうちどこかの家が契約したら、また光ファイバーを引いてこのワイヤーに吊すのだそうだ。私は秘かに、そのうちみんなが無線になってこのワイヤーも無用になるのではないかと思った。

*1:携帯電話回線対応のタブレットは毎月の通信料が必要で高い。

*2:この毎月900円のレンタル料を払うより、自分で無線LAN機器を購入して設置することも考えられたが、無線LANの設定の手間とその後のトラブルの可能性を考えると怖くて、レンタルで業者に依存することとした。

*3:その前から、業務の提携はあったようで、我が家への請求書はKDDIの請求書の内訳に、「TEPCOひかり」分として入っていた。

*4:10年ぐらい前までの第2世代携帯電話の頃からモバイルと言われ、私も使っていたが、メールはともかくウェブの閲覧には耐えがたく遅かった。

*5:DC-HSDPAはDual Cell High Speed Downlink Packet Accessの略。ドコモの第3世代携帯電話の方式であるW-CDMAを拡張させたHSPA(HighSpeed Packet Access)を更に進化させたもの。HSPAは最大下り14.4Mbps、更にHSPA+(2009年7月からイーモバイルがサービス開始)は最大下り21Mbpsで、DC-HSDPA(2010年12月からイーモバイルがサービス開始)はこのcellを2つにして最大42Mbpsとなっている。以上Wikipediaによる。

*6:WiMAXは、元来50km程度の距離の固定局/端末間の無線アクセスを想定して作られた規格だが、その後モバイル機器にも適用されだし、モバイル用の規格はモバイルWiMAXと呼ばれている。UQWiMAXは正確にはモバイルWiMAXのようだ。この場合のモバイルとは端末の移動の際に基地局のハンドオーバーが可能なことで、このため携帯電話は歩きながらでも自動車で移動していても通話が続けられる。Wi-Fiはハンドオーバーを想定していないので、この意味でモバイルとは言わない。