「小沢一郎 妻からの離縁状」とマスコミ報道

 本日6月21日、国会の会期延長(9月8日までの79日間)が議決され、「社会保障と税の一体改革関連法案」の採決の目途が付いたようだ。私としては、現状のまま赤字国債の発行額が歯止めなく増大していく状況は破滅的で、それをコントロールできる最低条件が整備されたと考え、ほっとしている。私には、政局の全般について述べる能力は無いので、部分的なトピックとして、小沢一郎(以下、敬称略)の「妻からの離縁状」報道と、余談として、野田首相の最近の多忙な日程についての感想を述べる。
1) 小沢の妻からの離縁状
 先週発売の週刊文春6月21日号(東京では6月14日発売)に掲載された標記の記事*1は、小沢一郎が、昨年3月の地震原発事故以来、放射能怖さに、津波被災地への訪問のみならず、東京からも逃げ回っていたという隠れた言動を、小沢夫人の手紙というエビデンスを元にして報じたもので、衝撃的なものだ。今日21日(木)発売の同誌6月28日号*2は、健気にも前週の記事をフォローする特集を組んだ。早速買ってきた。田中角栄の金脈問題を最初に提起した立花隆が文春記事を称賛する寄稿をしている。
 しかし、大新聞、テレビは殆ど報道していなくて、何故かと訝しんでいる人も多いと思う。ウェブでは大変な反響を呼んでいる。いろいろあるが、紹介したいのは次の毎日新聞の記事だ。

「風知草:手紙の波紋」山田孝男(毎日新聞 2012年06月18日 東京朝刊)
http://mainichi.jp/opinion/news/20120618ddm002070050000c.html
 じつは、(週刊)文春編集部は、発売寸前、東京のほぼすべての民放テレビの取材に応じていた。ところが、オンエアされない。調べてみると、小沢系の国会議員からプレッシャーがかかったらしいことが分かった。「取り上げるなら、もうオタクの番組には出ませんよ」と。政治家のテレビ出演が日常化した時代、週刊誌のスクープとテレビの取り上げ方、小沢系の思惑が互いに絡み合う消費税政局の一断面である。

 この記事(コラムと言った方がいい)によれば、民放テレビ局(NHKも報道していない)は、国会議員から、番組には出ないという圧力がかかると従うらしい。私は、政治家がテレビに出るのは、自分の政策を国民に紹介できる機会を得られることだから、政治家からテレビ局にお願いすることはあっても、テレビ局がへりくだって政治家にお願いすることはないと思っていた*3。番組として小沢系の議員の出演を要請し、それが断られればその旨を番組で述べれば何も問題が無い。
 この毎日新聞の記事のもう1つの問題は、テレビ局だけ悪者にして、大新聞が取り上げない理由にはほおかぶりしていることだ。この記者は毎日新聞編集委員だが、毎日新聞は正式の報道記事としては取り上げず、「風知草」というこのコラムで、かつテレビが報道しないことについて伝聞という形でしか紹介していない。全く報道しない新聞よりはましという意見もあろうがおかしい。
 大新聞が報道しないのは、大新聞の矜持として、離婚という私的なスキャンダルめいたことは採り上げないということだろうと思う。しかし、小沢一郎は、現時点では、野田首相の方針に逆らう民主党内の大グループを率いる領袖だ。そういう公人が放射能怖さに逃げたという告発に対し、国民としてはその真偽を知りたいと思うのは当然だ。それなのに、小沢本人からは、現時点まで何の弁明もなく、大新聞は真偽を確かめず黙殺している(私的なスキャンダルということは言い訳だ)。これは異常だ。小沢一郎に日本を任せられるか、原発事故の時に首相であったらどうなっていたのか、大新聞は検証の必要があろう。
 前述の週刊文春6月28日号のスクープ記事は、「巨人原監督が元暴力団員に1億円払っていた」というまたもやスキャンダルだ。こちらの方は、発売日の21日の朝のニュースショーで大きく取り上げられている。また、硬い方と思われる日経新聞でさえ20日付け夕刊で、巨人軍がその記事に対し、週刊文春を告発したと紹介している。他の新聞はもっと派手だ。例えば、朝日新聞は、http://www.asahi.com/national/update/0621/TKY201206210009.html
 原監督の1億円強請られ問題が低俗とは言わないが、公人小沢の人格問題はもっと真偽を明らかにしてほしいと思う。
2) 小沢支持派とは?
 小沢一郎の胡散臭さはかねがね感じていたが、今回のようなことがあればなおさら、このような人に日本の政治を委ねてはいけないと確信する。しかし、小沢支持派国会議員は、21日夜のニュースの段階では意気高く、週明けにも予定される「社会保障と税の一体改革関連法案」の採決では反対票を投じ、場合によっては新党を結成するという。
 話はちょっとずれるが、6月に入り、オウム真理教事件の、菊池直子、高橋克也が17年の逃亡の末逮捕された。びっくりするのは、高橋克也は逃走時にも、麻原彰晃の写真、説法の録音テープ、教本を所持していたという。麻原彰晃教祖をまだ信じているということで、私には全く理解できない。
 小沢一郎派の議員が40名とも50名とも言われるが、このような人格で、かつ政策方針も便宜的な人を支援するというのは、私には全く理解できない。5月の弊ブログ「小沢一郎判決文」 id:oginos:20120511 でも述べたように、裁判官は小沢を嘘つきと断じている。小沢支持派議員というのは、オウム教信者と同じではないか。
 このような政治家の行動と前述の大マスコミの小沢への対応を見ると、日本では民主主義や自由が根付いているのだろうかと不安になる。
3) (余談)首相の日程(帰国記帳の問題)
 政局話を取り上げたついでに、余談を述べる。6月21日の国会の会期末を迎えての約1か月間の野田首相のブレの無さと併せ、その多忙さに私は実は感嘆している。
 小沢が反対票を投ずるとしている「社会保障と税の一体改革関連法案」の3党合意、民主党内了承という国会会期末の多忙な中で、野田首相は、メキシコで開催されるG20に出席のため、17日の夜羽田を経ち、20日の朝帰国した。帰国した日の首相の日程は次のとおりだ。

6月20日首相官邸」(日経新聞6月21日)
▽6時23分 政府専用機羽田空港着。
▽7時3分 公邸着。
▽7時54分 藤村官房長官
▽8時35分 輿石幹事長、樽床幹事長代行、岡田副総理。副総理が残る。
▽10時4分 官邸で政府・民主三役会議。副総理が残る。
11時24分 皇居で帰国の記帳。
▽11時50分 官邸で田中、直嶋両副代表。
13時32分 幹事長代行。
16時35分 国民新党の自見代表、下地幹事長。輿石幹事長が加わる。
▽17時2分 永田町の憲政記念館で両院議員懇談会。
▽20時 輿石幹事長、幹事長代行、城島国対委員長
▽20時37分 官邸で副総理。
▽21時3分 公邸に。

 私が注目したのは、11時24分に記載されている皇居での帰国記帳だ。この首相の帰国記帳については、2年前の弊ブログ(「首相の宮家挨拶、帰国記帳」 id:oginos:20100629 )で説明しているが、私の見る限り、歴代首相は律儀に守っている。しかし、6月20日は上記のとおり極めて多忙な日で、その中で皇居に行かねばならないというのは大変だったと思う。
 上記の日程の中で、13時32分の幹事長代行と16時35分の国民新党自見代表等との間が3時間ほど空いている。私の想像だが、ぶっ倒れて寝ていたのではなかろうか(17時から始まる両院議員懇談会に備えていたのかも)。何れにしても激務の日々であったことは確かで、この中で皇居への帰国記帳などを強制するのは悪弊ではなかろうか。1国の首相にはもっとゆとりを持たせ、明晰な頭で最適の判断ができる環境と日程を与えてほしいと願う。
 更に余談だが、私は何年もの習慣として、新聞の首相動静(日経では首相官邸欄)を見てきた。今までの首相たちと比較して、野田首相の場合は、特徴が2つあると思う。第1は、割と多くの人と会っていて日程が詰っていること、第2は、夜の会食の頻度が割に少ないことだ。統計を取っての定量的な分析ではなく全くの印象論だ。
 その理由として私が想像することは、会いたいという人(手続き的には秘書官等が会わせたいと取り次ぐ人)を万遍なく受け入れているのではないか。また夜は、自分から飲みに行こうという気が少ないのではないか。言い換えると、歴代首相に比較して、真面目な宰相なのではないかという印象だ。ただ、少し心配なのは、多忙な日程に追われ、大局的な勉強をしていないのではないかということだ。会食が少ない夜に勉強していればいいのだが。

*1:http://shukan.bunshun.jp/articles/-/1442

*2:28日号目次は、http://shukan.bunshun.jp/articles/-/1467

*3:もちろん、報道の自主性の観点からは、政治家が出演を望めば直ぐ応じるとの考えは不適切で、番組の趣旨に沿って報道側に確固とした方針があるかが問題だ。