TIME誌表紙になでしこの澤選手

 7月21日(土)に配達された米国TIME誌(2012年7月30日/8月6日号)の表紙は、日本の女子サッカーなでしこジャパン澤穂希(さわほまれ)選手の雄姿*1なので驚いた。中のカバーストーリーは、ロンドン・オリンピックの開会を27日に控えてのオリンピック特集だ。その1つに澤選手の記事もある。
 TIME誌で日本が取り上げられることはここ1-2年極めて少なく、ジャパン・パッシングの1つかと嘆いていたので、表紙にまでなったのには本当にびっくり。以下は、これを頭にしてのとりとめのない話。
 1)澤選手はTIME誌の他の版でも表紙になっているか。2)他の版でも澤選手の記事は掲載されているか。3)澤選手のチーム名「なでしこ」の意味が英語のpinkであることが説明されていないが何故だろうか。4)なでしこチームが今回のオリンピックに参加するために乗った飛行機がエコノミー・クラスだった。5)全く別の話だが、TIME誌の記事がウェブで読めなくなった。
1) TIME誌の他の版の表紙
 TIME誌は世界で地域別に4版あって、同じ記事が多いが、違う記事もあり、記事の扱いが微妙に違う場合もある。米国版、欧州・中東・アフリカ版、アジア版、南太平洋版だ。これはTIMEのウェブ版TIME.comのmagazineタグをクリックすると一覧が出てくる。
http://www.time.com/time/magazine
 私の購読しているのはアジア版で毎週シンガポールから送られてくる。このウェブ・ページを見れば判るように、表紙が澤選手なのはアジア版だけだ。他の版の表紙は何れもオリンピック選手だがそれぞれ異なっている。ただ米国版は、何故か複数枚が出てくる。
2) 他の版での澤選手の記事
 澤選手の記事は、「Swift Kick」と題して、日本では全くマイナースポーツだった女子サッカーを率いて、昨2011年のワールドカップで優勝にまで導いた功績が語られている。特に、昨7月17日の米国との決勝戦で、延長戦の終了間際に澤がゴールして同点に追いつきPK合戦で勝ったことを印象的に記している。
 それで、他の3つの版ではどうかというと、上記のTIME.comのmagazineタグで、各版の表紙をクリックするとその版の目次が出てくる。幸いどの版にもこの記事は掲載されている。
 「注目のライバル対決」という別の記事に、全部で7組のライバルが出ているが、女子サッカーの日本対米国もリストアップされている。この記事も他の各版に掲載されている。
 ということで、澤選手のことは実にグローバルな話題だ。ただ、米国人にとって昨年のワールドカップ勝戦での敗北がよほど口惜しかったための、米国誌だからの扱いかも知れない。
3) なでしこの英語名
 昨年12月の弊ブログ「なでしこ」(id:oginos:20111225) で、「なでしこ」を英語ではpinkということを紹介した。pinkの原義は色ではなく、花のナデシコということだった。それで、このTIME誌の記事を読んでいて、日本のチーム名がNadeshikoと書かれているが、その意味がpinkであることに一言も触れていないことに違和感を覚えた。執筆者はKrista Mahr氏だが、Lucy Birmingham and Chie Kobayashi / Kobeの報告に基づいて書かれたとあり、何人も関与しているから、知らないわけではない。Nadeshikoの説明はあえて記事から外したのだろうと思う。
 私は、このような外国語の固有名詞には、原則として原語の意味を付けておくべきだと思っている。それを外した理由は、pinkの語感があまりよくないからかも知れないし、逆にナデシコの可憐なイメージが澤チームのイメージと合わないからかも知れない。前者の根拠としては、昨年の用例で、「Nadeshiko or "beautiful flower"」として、あえてpinkに触れていないものがあるからだ。
http://www.time.com/time/world/article/0,8599,2083703,00.html
4) なでしこチームの欧州への飛行機の席
 TIME誌の記事では、日本のサッカー界の男子優先主義に対する澤選手の長年の苦労も紹介されている。女子サッカー試合での手当が少ないため、今でも別の仕事を抱えている選手が多いこと、色んな待遇面では依然として男子との差があることなどだ。
 これに関連して、TIME誌の記事ではないが、今回のヨーロッパへの飛行機に関しての男女格差が話題になっている。ロンドンに行く前に、日本のサッカー代表は、フランスとの練習試合などをするため、7月17日にフランスに向け出発したが、その飛行機の席がなでしこジャパンはエコノミーだった。これに対し、男子のサッカーチームはたまたま同じ便で、ビジネスクラスだったということが問題になっている。
http://www.afpbb.com/article/london2012/london2012-soccer/2889918/9260670
 これによると、日本オリンピック委員会による選手派遣旅費の基準はエコノミー席だが、男子サッカー代表は、プロでもあり、日本サッカー協会の援助があってビジネスクラスにグレードアップされた。女子代表はメダルへの期待があって、基準のエコノミーではなく、「プレミアム」エコノミー席へのグレードアップという配慮(日本オリンピック委員会からか)は一応されたが、男子との格差は依然としてあるということだ。男子サッカーはいわゆるU-23で、3人のオーバーエイジ組を除き基本的に23歳以下で、澤などより年下ということも、この話のおかしさを増している。
 この話は、国内では2チャンネルやブログでの格好の話題になっているが、英国のデイリー・メール紙やガーディアン紙なども採り上げているらしい。
http://spokonmatome.blog.fc2.com/blog-entry-2246.html
5) TIME誌オンライン等のクローズド化、有料化
 今回、2-3か月振りぐらいにTIME.com のウェブ・ページにアクセスした。そのページの中で前述したようにMAGAZINEタグをクリックすればTIME誌の各版の記事が読めるはずだったが、今では出てくるのは表紙と目次だけで、記事はTIME誌の購読者でないと読めなくなっている(雑誌以外のTIME.comの膨大な記事は読める)。
 私のTIME誌購読歴の始まりは2-30年前で古いが、あまり読まないのでその後は中断が多い。現在の購読は、2年ほど前に、あるキャンペーンで何年間かの契約で1冊(各週)当り200円というのに飛びついたものだ(書店で買うと1冊840円)。
 購読していても、TIME.comのウェブで雑誌の記事が読めるのは便利だ。理由は、a)記事の検索が容易、b)ブログで引用する時にウェブのURLを示せばいいので、長文を引用する手間がなくていいし、読者にも好都合、ということだ。今回は、従って、記事のURLを表示できなかった。
 最近、パブリックの理念に反し(弊ブログ「パブリックとプライバシー」 id:oginos:20120422 参照)、報道関係でクローズド化するものが多くなっている。例えば、2008年から2012年2月まで続いた「あらたにす」(朝日、読売、日経の新聞記事の読み比べサイト)は本当に便利だった。
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20111110_489930.html
 もっとも、当初の「あらたにす」は各紙の記事の相当部分が全文読めたが、終期に近づくと、それぞれの新聞のウェブ会員でないと開けなくなり便利度が相当落ちてきた。今では、この3紙のそれぞれのウェブ・サイトを開いても、会員登録(有料)しないと全文は読めない記事が大半だ。これに対し、毎日新聞産経新聞のウェブページは無料で読める(毎日.jp、MSN産経ニュース)。これに関連して、最近よくアクセスしているのは、Androidタブレットで使っている「社説リーダー」だ。全国紙を含む30紙余りの新聞の社説とコラムが無料で読める(iPhoneでも可能なよう)。
https://play.google.com/store/apps/details?id=jp.amz.android.editorial
 もちろん著作権は新聞社にあり、無料で読めないからとクレームをつけるのは筋違いなことは承知している。しかし、かつての便利さが薄れていくのは残念だ。利用あっての著作物という観点も考慮してほしいと思う。
(提案)
 私見だが、安価(数円/ページないし数十円、コピーやダウンロード無しの閲覧30秒以下無料、など)かつ簡易に(ワンクリックで)、記事を読めるシステムが用意されれば、有料のシステムも支持できる。今流行のHTML5で、このようなシステムの構築は容易だろうか。

*1:女性だから「雄」はまずいか。では、勇姿、英姿。