ヘモグロビンA1c値変更の混乱

 この記事は、1月の弊ブログ(「ヘモグロビンA1c値の変更」 id:oginos:20120129) の続編。予想した通りの混乱が現場で生じていることの紹介だ。以下、前回の弊ブログの簡単な紹介、私の担当医の変更の経緯を踏まえ、今回の小さな混乱を述べる。
(前回の弊ブログのポイント)
 糖尿病診断の検査指標値であるHbA1c(ヘモグロビンA1c)値は、本2012年4月から国際標準に適合させるため改訂される。区別するため、旧基準はHbA1c(JDS)、新基準はHbA1c(NGSP)と当分の間表記される(JDS日本糖尿病学会、NGSPは米国の組織だが詳細不明)。換算式は、NGSP値=JDS値+0.4
 私の当時のコメントは、糖尿病学者が国際学会などで発表する(論文執筆を含む)場合には、国際的に標準化されている指標を用いないと不便であるのは理解できるが、診療の現場では、患者や医師に多大の混乱を生ずるのではないかということだった。しかも、今回の改訂は、0.4の差だけで本質的な違いは無い。
(私の担当医の変更)
 この3月までは、勤務先と同じビル内にある診療所で、非常勤の糖尿病専門医の診療を2−3か月に1度程度受けていた。4月からの退職に伴い、住居の近くにある開業医の看板に糖尿病科との表示も出されているのを見つけ、先の診療所から紹介状をもらって替えることとした。既に貰った投薬も切れたこの6月から新たに通院を始めた。1か月に1度くらいの頻度で定期検診を受けている。この医院にはHbA1c測定器というのがあって、耳たぶから瞬時に微量の血を取り(穿刺採血)、5分ぐらいで検査結果が出てくるので簡便だ(3月までは、腕からの採血を外部検査機関に出して2-3日後以降に結果を聞きに行くので、診療所に2回行かなければならない)。
 A1c値は、3月以前より下った値が続くので、このHbA1c測定器で大丈夫かと若干の疑念を抱きつつも一応安心していた。更に、薬もジェネリック薬品に変える処方として貰い、4割ほど安くなった*1。また、糖尿病連携手帳というのを作ってくれて、毎回の数値とグラフを書き込んでくれる。今までは自分で記録していたので、便利になった。
(表)HbA1c値の変化

2011年以前 2012年3月 6月 7月 8月 10月
HbA1c (JDS)旧基準 6.5前後(6.0~7.0) 6.9
HbA1c (NGSP)新基準 (6.9前後) (7.3) 6.6 6.5 6.7 6.3(注)

(注) ・2012年3月以前は、検査機関に外注されている血液検査によるもので、6月以降は、診療所に設置されたHbA1c測定器による耳たぶ穿刺採血によるもの。
・検診間隔は1か月強で、9月の検査値が無いのはそのため。
・10月の検査値については後述。
(10月の健康診査による採血検査)
 世田谷区では、1年に1回、健康診査(本人負担500円)をやっているので、新しい担当医の診療所でこの診査をしてもらえば、定期糖尿病検診1回分の検査費用が節約できる。それで10月の定期糖尿病検診は、久しぶりに腕から採血してもらった。
 検査機関からの検査報告が出る数日後に行ったら、検査結果は新基準で6.3という好成績だ。旧基準のJDSに換算すると5.9という(私にとっては)夢の5台で感激ものだ。やはり退職してからはストレスが無くなったのでこのように改善したのだろうかと、先生と分析したりした。ただ、検査機関からの報告書の患者用のものが紛失したらしく見当らないので、見つけたら渡してくれるということだった。
 それで2-3日後に見つかったという連絡があって、看護婦さんが検査報告書をくれた。かねて本当かと気懸りだったので、確認して見ると、HbA1c値には、JDSとNGSPと2欄あって、「6.3」は、JDS欄に記載してある。NGSP値に換算すると6.7だ。翌日先生の所に聞きに行くと、転記ミスでしたと謝り、(しぶしぶ?)糖尿病連携手帳の数値を書き直してくれた。
 次の気懸りは、6月から8月までにNGSP値として記載されていた値も本当に新基準なのかだ。問い質してみたが、それは間違いないとのことだ。まあ、多分間違いないのだろうが、この0.4の新旧基準値の違いによるミス、混乱は医療現場では相当生じているのではないかと思う。
 話は変るが、本人や家族ががんなどの重病に罹ると、医学関係書を読みあさるという人のことをよく聞く。私の知人でも奥さんをガンで亡くした人がいて、自費出版された看護手記を読ませてもらったことがあるが、よく医学関連書を読まれていて、その研究熱心さに敬服した。その研究熱心は、病気をよく理解するとともに、医者の言うことをよく理解するためのものであったろうと思っていた。しかしひょっとしたら、医者が間違ったことをしている、言っているかも知れないという医者への疑念と不信からということもあるかも知れないと思うようになった。
 最後に、私のヘモグロビン値の推移の修正版を示す。6月以降は横ばいという所か。
(表)HbA1c値の変化(修正値)

2011年以前 2012年3月 6月 7月 8月 10月
HbA1c(NGSP)新基準 (6.9前後) 7.3 6.6 6.5 6.7 6.7

*1:3月までの診療所は院内処方、6月以降は院外処方との違いがあるが、60日分処方(薬は3種)で比較する。3月までの先発医薬品は1,676点、6月からのジェネリック医薬品は薬局では1,013点、医院での処方箋代が135点の計1,148点。医薬品代だけの比較では、1013÷1676で60.4%。院外処方の処方箋代を入れると、1148÷1676で68.5%となる。なお、何れも1点10円、本人負担はその3割。