タイムシフト・テレビ

 前回に続いての、この3月の2つ目の買い物の話。イーモバイルLTEサービスへの加入キャンペーンによる15,000円のクーポンを活用して買った、タイムシフト搭載のブルーレイディスクレコーダーの紹介だ。
 タイムシフトの概念については後で私見を述べるが、ここでは取りあえず、テレビ番組の全てに近いチャンネルを数日間全て録画しておく機能をいうこととする。この「タイムシフト」の語を使ったテレビや録画装置というと、東芝の製品だ。ただ、これは、全画面録画とか多チャンネル同時録画とも呼ばれる機能で、パナソニックの「まるごと録画」やバッファローの「ゼン録」に相当する。しかし、まだこれを備えた機種の数は少ない。本稿では、先行していると思われる東芝の「タイムシフトマシン」を中心に説明する。http://www.itmedia.co.jp/keywords/multi_recording.html
(タイムシフトマシン)
 東芝の「タイムシフトマシン」は、2011年に発売されたブルーレイディスクレコーダーの「レグザサーバー」モデルの2機種、すなわち「DVR-M190」と「DVR-M180」と、2012年秋に発売されたテレビ受像機「REGZA Z7シリーズ」だ。
具体的仕様は、「レグザサーバー」の「DVR-M190」は5TB のハードディスクを備え、6チャンネル分15日間のテレビ番組を自動的に録画してくれる。「DVR-M180」は少しスペックダウンするが、2.5TBで 6チャンネル分8日間分を自動録画する*1。「REGZA-Z7シリーズ」のテレビは6TBのハードディスクを外付けすれば、6チャンネル5日間を自動録画する。注釈すると、レグザサーバーの15日間/8日間というのは画質が少し落ちるモードで録画するもので、放送そのままの高画質画像(ハイビジョン)で録画する場合は、それぞれ5日間、2.5日間と短くなる。
 話は古くなるが、ハードディスク内蔵テレビの登場以来*2、私はハードディスク録画装置のテレビが買いたかった。昔のカセットビデオやDVDは、マウント、入替えが面倒で、ワンタッチで録画再生できるハードディスクは効率的と思ったからだ。それで2011年の上記のレグザサーバーには驚愕した。テレビ文化を変える技術革新だ(後述)。
(1年越しの折衝)
 しかし、妻はタイムシフトマシンの価値を認めない。何日分も録画してどうするのか、見る時間が無いという。それでも1年以上にわたり、機会あるごとに買いたいと言ってきた。妻は、別に住んでいる息子まで味方に引き入れて反対させる。 私はそれで作戦を変え、値段の下るのを待つことにした。ハイエンドで高価なM190は諦め、M180に絞ってコジマ電気に時々行き、値段の推移を見てきた。1年前は14万円だったが、昨年秋には8.4万円になった。その後なかなか下らない。
 この3月にやっと74,800円になって、妻の方も長期間の陳情のためか少し軟化してきた。その中で、前回述べたLTEルーターの買い物のおまけの15,000円クーポンだ。ということで、1年越しの買い物がやっと実現した。
(使用感)
 先ずタイムシフトの画質と自動録画期間の設定をどうするか。高画質で2.5日か、低画質で8日間か。その中間もある。試しに低画質で見てみたら、昔のアナログ時代よりもいいようだ。ということで8日間に決定。それで改めての感想だが、便利だ。新聞や知人などの噂で評判だった番組も直ぐ確認できる。それから、テレビでも見ようかという時間ができた時に、それまでの時間表を見て好きなものを選べる。自分の時間にテレビを合せられる訳だ。
 1週間前に遊びに来た息子の家族に紹介したら、息子の嫁さんが、1週間も録画できるのはすごい、すごいと感心してくれた。息子は未だシニカルで、年寄りとのコミュニケーション・スキル(何か講習会があったらしい)が上がったねと彼女を冷かす。何れにしろ、息子は本当にいいお嫁さんに来てもらった。妻の方は、不承不承ながら、この2-3日、少しだが便利さを評価している。
(タイムシフトの概念)
 私は、「タイムシフト」という言葉には違和感があった。IT事典などには、「ハードディスク録画での追っかけ再生機能をいう」と書いてある。私はもう1つ別の機能を考えていて、それが元来買いたかった理由の1つだった。すなわち番組を見ている途中で、ちょっと前の見落したことや聞き落したことを直ぐ巻き戻して(ディスクだから、「巻き戻し」ではないが)見返せる機能を期待していた。最近コマーシャルやドラマを見ていて理解できないことが多い。耳が遠くなったせいもあろうが、直ぐ見返したいと思うことがある。録画したものを見ている場合は問題ないが、何時も録画している訳ではない。
 この常時巻き戻し機能は、10年ぐらい前に、確かNECのマルチメディアパソコンと銘打ったパソコン(VALUESTARと言ったか)があり、パソコンからケーブルで繋いだテレビを見ることができた。テレビ番組をパソコンのハードディスクに録画もできる。それに「タイムシフト」と名付けられた機能があって、それをオンにすると、パソコンに映る画像は常時20秒ほど遅れるが、直前への巻き戻しが可能で、便利だと感心した。しかし、パソコンでテレビを見るのも迫力が無いし、繋いだケーブルもうっとうしく、そのような利用は直ぐ辞めた。
 また、かねて加入しているCATVのセットトップボックスは、ハードディスク内蔵だが、これに「タイムスリップ」という機能がある。この機能をオンにしておくと、今見ているチャンネルだけを60分間自動的に録画してくれる。これは実に便利で、直ぐ簡単に巻き戻せる。これを使っていればよさそうなものだが、EPG番組表の表示法が実に劣悪で(詳細略)、CATVとBSを見る時はともかく、地デジを見る時(これが圧倒的に多い)はこのセットトップボックスは使わなくなった。
 このような過去もあり、タイムシフトマシンなら、即時巻き戻しは可能だろうと期待した。結論は、できない。通常見ている場合にタイムシフトボタンを押すと、全体のタイムシフト録画リスト場面が出てきて、今見ている番組を選ぶとその番組の最初から始まってしまう。今見ている時間まで早送りしないといけない。そんなことをしていると何を見落したのかさえ忘れるし、とにかく面倒だ。直ぐ巻き戻せるようにするためには、その番組を最初からタイムシフト方式で見始めていないといけなくて、それも極度に面倒だ。そうすると実時刻から20秒ほど遅れて映る(これもタイムシフト)。朝の出勤で忙しい時など、忘れると大変だ。
 ということで若干がっかりしたが、考えてみると、私の思っていた「タイムシフト」は、「追っかけ再生」やマルチメディアパソコンの「タイムシフト」、CATVの「タイムスリップ」のように、短時間のポーションを1次元の方向(時間)にしか移動できない。これに対し、東芝の「タイムシフトマシン」は、2次元(時間とチャンネル)の方向を自由に移動できるという機能で、「シフト」の概念を拡張させた。前述のように、人とテレビとの時間軸を逆転させ、新しい関係の開拓につながる画期的な機能だと評価できる。
 それは評価するが、私の期待していた、難解なコマーシャルを直ぐ見返せるというタイムシフト機能もほしい。15日間録画のハイエンドマシン「M190」には付いているだろうか。
(その他の若干の問題点)
 タイムシフトで録画できるチャンネル数の上限が6チャンネルだが、これが少ない。東京での地デジのキー局7局のうち、NHK(#1チャンネル)、日本テレビ(#4)、テレビ朝日(#5)、TBS(#6)、フジテレビ(#8)で5チャンネルになる。あと1つはNHK教育TV(#2)かTV東京(#7)かだが、これが悩ましい。TV東京も稀だが見たい番組をやっている。本当は、教育TVと両方入れたいが、そうすると民放3局のうち1つを外さなければいけないが、どれもレベルのが低く、かつその差が無くて選びにくい。7チャンネルまで可能にして貰いたかった。我が家では教育TVを採った。
 もう1つの問題は、ブルーレイディスクプレーヤーを買ったはずなのに、まだブルーレイの機能を使っていない。a)タイムシフト以外の通常録画の時間が100時間以上あること、b)長期保存したい番組がまだ無いこと、決定的なのはc)歩いて5分ぐらいの距離にあったツタヤが数か月前に閉店してレンタルビデオが借りられなくなったためだ。今後の課題だ。

*1:もちろん、ブルーレイ・レコーダーの機能もあるし、タイムシフトではない通常の録画機能もある。

*2:東芝については2005年に商品化された。http://www.toshiba.co.jp/tech/review/2008/06/63_06pdf/a02.pdf