階段の登り方

 先月3月まで4か月間、ある団体の仕事の手伝いをしていて都心に通勤していた。その通勤途上で感じたことを紹介する。駅の階段を登る時に人によって2通りの歩き方があることだ。仮に、第1を「つま先型」、第2を「全足型」と名付けよう。
 「つま先型」は、階段の各ステップの踏み面(ふみづら)*1に足の前から2分の1ないし3分の2を掛け、言い換えると足の後ろ側3分の1程度は踏み面に掛からない。男性の大半と女性の半分ぐらいだ。「全足型」は、踵も含む足の全部を階段の踏み面に置く。男性では殆ど見かけず、女性は半分ぐらい。気になるのは、ハイヒールを履いた女性の場合だ。ハイヒールを履いた人でも、正確な比率は取っていないが、つま先型と全足型の両者がいる。
 こんなことを観察していると書くと、女性の足を見ていて変態と思われる恐れがあって躊躇する。写真は撮らないし、脚部は見ない、スカートの人だけでなくスラックスの人も観察対象として差別しない、足の踵の部分だけの観察だと言っても、見られていると知った人はいい気持ちがしないかも知れない。ということで、通勤が終った現在では、止めた。ただ、このウォッチのため、昇りではエスカレーターではなく階段を使うことが多かったので、健康にはよかった。
 ウェブで、「階段の歩き方」ないし「階段の登り方」で検索すると、驚くことに殆どが「全足型」を薦めている。男女を問わずである。足を踏み面に降ろす順序では、「踵から」派と「全足を1度に」派が拮抗している。階段の降り方にも触れてあるのがあり、これには「つま先から」派も一部出てくる(これも最終的には全足をつける)。
 これで思い出すのは、スポーツと古武術に造詣が深いという私の友人の3年前のアドバイスだ。階段で転んで軽傷を負った私のことを心配して、メールで歩き方の指南をしてくれた。「足で大地をグリップする感じを常に持って」歩くべしというのだ。素足で小枝を握るのも、猿ならぬ身には難しそうなのに、靴を履いて大地を握ろうとすると、靴の中で足裏が「空滑り」する。隔靴掻痒ならぬ「隔靴握地」だ。禅問答の公案みたいで当時は(今も)よく判らなかったが、これは「全足を1度に」派なのであろう。
 ハイヒールの全足型は難しいのではないかと思って、「階段 ハイヒール」で検索すると、女性の悩みが出てくる。本来は全足型かも知れないがとしつつ、ヒールを付けるまで足を上げるのは結構大変だし、つま先が前のステップへの垂直の壁(蹴込み板という)にぶつかりそうということで、つま先型を取っている人が割に多いようだ。YOMIURI ONLINEの「ハイヒールを階段から外して登る方」という掲示板( http://komachi.yomiuri.co.jp/t/2009/1212/281546.htm )が面白かった。レス数100本ということからも、関心の高さがうかがわれる。
 男性の大半がつま先型なのは、足が大きいためということもあるだろう。踏み面の幅が十分広くないので、踵を乗せると、つま先が前の蹴込み板にぶつかりそうだ。出勤時に急ぐときにはつま先型の方が早い。全足型だと少し時間が掛かるし、つま先をぶつけないように下を見ていると姿勢が悪くなる。「階段の正しい歩き方」の中で、急ぐ場合のつま先型を認めてほしい。踏み面の幅が狭い時なども認知してほしい。

*1:建築用語で、階段で足を乗せる踏み板の上面のこと。http://www.homeclip.co.jp/houhou/MameTisiki.Mame_Search?varInFunrui_code1=023&varInFunrui_code2=002