テレビドラマと食前マナー

 4月からテレビ各局のドラマ番組が新しくなった。見ていて1つ気に懸ったことがある。食事の前に、行儀よく、合掌して「いただきます」と言ってから食べ始める場面が目に付くのだ。私としては、子供時代に親に言われて合掌していた記憶しかないので、テレビでこれだけ目に付くと気恥かしい。この4月から多くなったのかどうかもはっきりしないが、私の当惑に関し、想像される理由は次のようなことか。
a) 私の知らない間に、食事マナーのキャンペーンがおこなわれていて、文部科学省、学識経験者辺りが、テレビ局ないし脚本家に圧力をかけている。
b) 単なる偶然で、たまたま食事マナーにうるさいドラマが続いているだけ。
c) 私の勘違いで、テレビドラマの食事マナーは変っていない。
 それで、「食前に合掌して、いただきますと言う」の食事マナーのシーンがあるドラマを調べて見た。具体的方法は後述するが、弊ブログ(タイムシフト・テレビ、id:oginos:20130401 )で紹介した8日間6チャンネル全番組録画を活用して、1週間分のドラマを倍速以上で流してチェックした。
 以下、番組チェックの概要と若干のオブザベーションを述べる。
1) 1週間のテレビ・ドラマでの概況
 具体的な調査方法は、次のとおり。
 2013年5月18日(土)から24日(金)の7日間の5テレビ局*1のドラマ(映画、アニメを含む)をざっと見て食事シーンを確認する。あれば、巻き戻して、合掌して「いただきます」と言っているかをチェックする。タイムシフト・テレビの全番組録画を活用できるので、時間的制約は無く、好きな時間にチェックできるという便利さがある。それにしてもドラマの中味を全て見るのは不可能なので、基本的に4倍速ないし8倍速で流し、食事シーンが出てくると巻き戻して食前のマナーをチェックすることとした。これだと、2時間ドラマでも最速10分程度でチェックできる。
 週刊テレビ番組表を参考にして、結果的に合計77番組をチェックした(全ドラマの9割程度か)。細かく述べると、30分以上のドラマ、映画を対象にした(NHKの朝の連続テレビドラマ「あまちゃん」は15分なので外数になる)。食事シーンとは、ちゃんとした食物を食べているシーンで、サンドイッチやハンバーガーも対象とするが、コーヒー、アルコール、お菓子だけの場面は除いた。
 食事シーンの無いドラマは26件あったので、食事シーンのあるドラマは51件だ。

件数 内訳 分類 小分類
77 確認したドラマの総数
26 食事シーン無し
51 食事シーン有り
40 A)食前の挨拶等が無し
6 B)食前の「いただきます」だけ有り
5 C)合掌も「いただきます」も有り

 私が気に懸っているC)の合掌付きは、5件で、これだけでは4月以降多くなったとは言えない。それで、放送時間帯により、時間的変化を推測することとした。すなわち、普通のドラマ(日本の現代ドラマで、アニメを除く)で、夕方以降放送されているものは新作で、昼間に放送されているものは旧作の再放送と想定する。そうすると上記のA)からC)は次のように分解される。

小分類 件数 細内訳(昼夜放送は日本ドラマ、その他は外国、時代劇、アニメ)
A)食前の挨拶等が無し 40 夜放送13件、昼放送15件、その他12件
B)食前の「いただきます」だけ有り 6 昼放送4件、アニメ2件
C)合掌も「いただきます」も有り 5 夜放送5件

 C)は全て新作だ。以上から、「食前マナーにうるさいドラマが最近多くなった」という私の仮説が少し実証されたかと思う。ただし、昼間再放送されているドラマは刑事ものが多く、夜のドラマとは少し構成が違うこともあり、十分な立証とは思っていない。また、今週放送分だけの分析なので、期間を拡げれば違うかも知れない。なお、上記の統計の対象外のNHKの朝の連続ドラマ「あまちゃん」でも、今週はちゃんとした食事シーンが無かったが、今までに合掌したシーンを見た記憶がある。C)にカウントできるだろう。
 上記の食事マナーがいいC)の番組をリストアップする。*2

 次に、最近、食前マナーに気をつけようとのキャンペーンがあったかと思って、ウェブをいろいろ検索してみたが、見当らない。従って、食前マナーのドラマが増えた(立証した訳ではないが)理由はよく判らない。
2) オブザベーション
 倍速で見ているだけでドラマの内容は判らないが、食事シーンについての若干の観察を述べる。

  • 家庭アニメ(ちびまる子ちゃん等)では食事シーンがよく登場するが、合掌しているのは無い。これは30分アニメでもその中身は2-3本の短編で構成されている。その短さでは合掌シーンを入れるのはもったいないのかも知れない。
  • 時代劇に食事シーンが登場するのは少なく(この7日間の6件中では1件で、かつ食前マナーは無い)、またかつて見た時代劇でも合掌するシーンは無かったような気がする。私の推測だが、これは、昔の食事に関する情報が不十分か、又は昔は粗食だったため、現在のテレビ画面に登場させると視聴者に違和感を抱かせるためだろうか。ただ、食事シーンは無いが、酒を飲む場面や居酒屋はよく登場する(食事や肴は無い)。またお菓子を食べる場面も登場する。
  • 乾杯の後では、合掌や「いただきます」のマナーは実行されない。乾杯の前にするのだろうか(それも変か)。
  • 韓流ドラマは数本あったが、食事シーンが割に多い。食前の挨拶は無さそう。
  • その他の外国ドラマ(米国ものだけだった)では、食前の祈りはどのようにするのかとの興味があった。しかし、そのような祈りのシーンは無かった。
  • 最後に、「いただきます」もさることながら、食べ始めて直ぐに「おいしい」の言葉が飛び交うことが多いことも気になった。この「おいしい」については、調査の半ばを過ぎてから気になりだしたので、頻度も時間的変化も分析していない。ただ、私の子供時代は、美味しい食べ物に乏しかったせいか、周りではあまり聞いたことがなかった言葉だ。

*1:東京での、NHK(地上波デジタルの1チャンネル)、日本テレビ(4ch)、テレビ朝日(5ch)、TBS(6ch)、フジテレビ(8ch)。NHK教育テレビ(2ch)ではドラマは殆ど放送されない。テレビ東京(7ch)は我が家のタイムシフト・テレビでは残念ながら登録していない。

*2:私はこれらの番組を全て視聴した訳ではない。この5件の中で毎週見ているのは、ガリレオと第二楽章だけだ。