インド雑記(2) 警笛を鳴らせ

(2013/12/16 末尾に短い2項を補足追加)

 インドの都市の交通渋滞はひどくて、うるさい。車道には、車に加え、バイク、リクシャー*1、更に人までが繰り出し、危険なこと極まりない。車、バイクなどは譲るという精神など全く持ち合わせていず、クラクションを鳴らしながら、隙あらば赤信号でも先を急ぐ。街はそのクラクションの音で非常にうるさい。以下、車の話として、クラクションを奨励する車とサイドミラーの無い車を紹介する。
(Horn Please)

 ある日本人の出張者(U氏の仕事関係者)と雑談していたら、トラックの後ろ部分に「Horn Please(警笛を鳴らせ)」と書いてあるのがあって不思議だという。その後私も車に乗っていると見かける。「Blow Horn」という勇ましそうなのもある。私の撮った下手な写真を載せる。「Blow Horn」の方の写真は、見づらいが私の乗った車の後部座席から運転席を通して撮ったものだ。観察していると、トラック以外には付いていないようだ。トラックの中にも付けていないのも多い。
 インド人に聞くといろいろの見方を紹介してくれた。1つは、トラックは遅く他の車に道を譲らないといけないが、運転席にいると後ろの車の状態が判らないから、クラクションを鳴らしてもらうことによって、道を譲るのだという。それならば、何時も左側の車線(インドは、英国占領時代の名残で日本と同じ左側通行)にいればよいが、中央寄りの(日本で言う)追越し車線を走っているのもいる。前掲の私が車の中から撮ったBlow Hornの写真の車も中央車線をずっと走っていた。クラクションを鳴らされても車線を譲る気配は無く、私の車は左側から追い抜いて行った。
 別のインド人は、後進表示灯(白色)やブレーキランプが壊れている場合、後ろに車がいるのに後進や急ブレーキをかけないよう、(後ろの車から)トラックの運転手に警告するためのものだとする。何となく変だ。後進灯やブレーキランプが壊れたら(そのような車は多い)、それを直すのが先決で、「クラクションをどうぞ」とペンキでわざわざ描くのは変だ。意見を聞いたインド人は、ガイドとインド人経営者だが、相当でたらめとの印象を持った。
 帰国してから、ウェブで調べるとインドのこの話は有名のようだ。Wikipediaでは、「Horn OK Please」の見出しで紹介されている(http://en.wikipedia.org/wiki/Horn_OK_Please)。後ろの車が追い越しする時には、クラクションを鳴らして教えてくれという意味だそうだ。他にパキスタンでも同種の表示が使われているらしい。英国BBCの「インドで知られていない10のこと」の中の4番目にも紹介されている。http://www.bbc.co.uk/news/magazine-22772391
 
(サイドミラーが無い)
 これはU氏が教えてくれたのだが、インドには時々左のサイドミラーが無い車がいるが、最近は小型車の新車で、コスト削減のため最初から左のサイドミラーを付けていないものがあるという。前述のとおり左側通行なので、左側ミラーは運転手の反対側だ。車で移動中に観察すると、そんなに多くはないが確かに小型車で無いのがある。最初から無かったようなのもあるが、壊れたような形跡のものも多い。中には右のサイドミラーも壊れて無いものもある。ムンバイの小型タクシーは、殆ど左サイドミラーが無い。私の撮った写真は珍しく中型の大きめの車だが、大半は小型の車だ。
 インド人に聞いてみたら、いろんな意見があった。サイドミラーの設置はcompulsory(強制)だが、壊れた場合に費用を惜しんで付けない運転手がいる。また法令違反で警察に捕まるとペナルティを払わなければいけないが、払えない運転手からはサイドミラーを没収する(信じられないので、同席した日本人と後で聞取り内容を確認したが、やはりこういうようなことを言っていたようだ)。
 サイドミラーが無いのは運転手から後方確認がしにくいので危ないことこの上ない。しかも運転手側(右側)が無いのであれば何とか首をひねって後方確認ができるが、運転手の反対側が無いので基本的に困難だ。ただ、道路が混み合っているので、サイドミラーが無い方が他の車や人との接触が少ないという利点があるかも知れない。上記の「Horn Please」の表示はトラックに見られるもので、このサイドミラーが無い小型車には付いてない。
 実はこの左サイドミラーの無いことが許されている(小型車の新車も販売されているよう)状況の理由や背景は、これ以上調査できていない。ご存知の方がいれば教えて頂きたい。
(道路の混雑状況)
 以上のような状況での道路の混雑状況は動画で見るのが判りやすい。今回宿泊した都市では1番人口が少ないプネ(それでも600万)の繁華街の状況を動画で撮った。雰囲気が伝わると思う。もし、そのまま再生できなければダウンロード(21MB)すれば再生できると思う。

http://d.hatena.ne.jp/oginos/files/PuneTraffic.MOV?d=.mov


(2013/12/16)補足追加
(左サイドミラーの無い小型新車)
 本文中に述べた友人U氏が、左サイドミラーの無い新車のモデル名を教えてくれた。インド最大のコンツェルン、タタ・グループが、10万ルピー車との触込みで2008年に発売した「ナノ」だ。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BF%E3%82%BF%E3%83%BB%E3%83%8A%E3%83%8E
 同ページの「3.性能・整備」項にあるように、コスト削減のため、左サイドミラーの無いことのほか、4ドア車なのに後部トランクを後ろから開けるドアが無い、などの工夫が凝らされている。
 「タタ・ナノ」は、その後販売不振が続いていると報道されている。例えば、http://kinbricksnow.com/archives/51853433.html
(女性ドライバーがいない)
 今までの記事とは脈絡なく想い出したが、女性が運転しているのを見かけなかった。一般に、女性の社会進出はなお未だしということなのだろう。

*1:日本の昔の人力車が元になっていて、小型オート三輪の後ろをホロがけの2人ないしそれ以上の乗客を乗せるようにしたもの。前が人力の自転車のものとオートバイのもの(オートリクシャー)がある。