AO入試

 理研小保方晴子さんのSTAP細胞の研究が話題を呼んでいる。Wikipediaを見たら、早速同氏のエントリー(見出し)があり(以前からあったのかも知れないが)、早稲田大学理工学部*1応用化学科卒だが、入学はAO(Admission Office)入試で合格したとのことだ。私はAO入試には、かねて謂われなき偏見を抱いていたが、改めることとした。以下、小保方さんのことではなく、主にAO入試について述べる。
 早稲田大学のHPのトップページに、1月30日付けのニュースリリースが出されている*2http://www.waseda.jp/jp/news13/140130_obokata.html
 これによれば小保方さんは、早稲田の理工のAO入試第1期生ということだ(2002年)。AO入試は本当に素晴らしい人をピックアップしたものだ。早稲田のAO入試のページを見てみた。小保方さんの入学年のAOの詳細は判らないが*3、2014年度入試の要綱は次のとおり。
http://www.sci.waseda.ac.jp/admissions_us/admissions/ao/tokusen/
 数学オリンピック、化学グランプリなどの世界的、全国的コンテストで、Aランクとか上位10%以内とかの実績が条件だということだから、なかなか厳しい。10月から12月にかけて選考をして、駄目だったら1-2月の通常の入試も受験できるようだ。なかなか合理的なシステムだと感心した。
 wikiで見ると、「AO入試」の最初は1990年、慶應義塾大学の湘南藤沢キャンパス(SFC、2学部)だという。「学科試験の結果で合否が決まる一般入試とは異なり、志望理由書、面接、小論文などにより出願者の個性や適性に対して多面的な評価を行い合格者を選抜する」ものだ。自己推薦入試公募推薦入試、一芸入試等、学校により名称は様々とのこと。その評価もいろいろあるらしく、例えば出願が11月以降とされている推薦入試に対し、AOは大学にとって早めの志願者確保対策とも言われているとして、wikiの評価は厳しい。 http://ja.wikipedia.org/wiki/AO%E5%85%A5%E8%A9%A6
 文部科学省の2013年度入学試験の実施状況によれば、学部数ベースで、国立大学の36%、公立大学の20%、私立大学の70%がAO入試による選抜を実施しているとのことだ。入学者数も国立、公立は1-2%台だが、私立では10.3%にも達している。
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/25/10/1340441.htm
 他の大学の例として、早稲田大学と並ぶ東京の私立の名門である慶應義塾大学のHPを見てみた。同大理工学部早大の理工とほぼ同様の基準(世界的・全国的なレベルでの高い評価を得た者)のAO入試を実施している。 http://www.admissions.keio.ac.jp/exam/ao_riko.html
 また、1990年にAO入試を始めた慶応のSFCキャンパスの2学部は、基準がやや多様化しているようだ(2014年度入試要項)。 http://www.admissions.keio.ac.jp/exam/ao_sfc.html
(感想)
 大学の入試は、約半世紀前の私の時代(1965年)とは随分様変わりしている。一言で言えば「多様化」だ。いろいろ議論があるようだが、今回の小保方さんの成果は、「多様化論者」にとっても大きな成果と言えよう。私としては、適格な人に大学の門戸を開く入試の多様化も重要だが、それだけでは従来のような均質な社会が継続し、グローバルな国際競争下で衰退する恐れがあると思っている。日本にとってより必要なのは、人生の多様化、進路の多様化を通じた社会の多様化ではなかろうかと思う。

*1:早大理工学部は、2007年に改組され、基幹、創造、先進の各理工学部となった。http://www.sci.waseda.ac.jp/about/overall/ それらの違いは誰も言えない(某早大教授談)。

*2:自分の大学での研究成果ではなく、卒業生の卒業後の成果のことで、トップページに掲載することをはしゃぎ過ぎと感ずる人もいるかも知れないが(大学は小学や中学とは違う)、今回のことはいいのではないか。私も心から祝福したい。

*3:早大のHPのニュースリリースに、当時の指導教官常田聡教授の記者会見の動画が掲載されている。同教授が覚えている応用化学科のAO入試では、受験生に化学の実験をさせ、その後面接をした。彼女は非常に実験の手際がよく、かつ博士課程に行くとどういうことをするかと質問したことが印象に残っているとのことだ。