安倍首相の外国での演説

 安倍首相は、今週4月29日から10日間の予定で欧州6か国を歴訪している。ドイツに続いて2か国目は英国だ。今日5月2日の日本経済新聞の夕刊のコラムを見てびっくりした。短いから全文引用する。

2014年5月2日(夕) 日本経済新聞
首相 「午年、小泉・中曽根両氏と同じ」 長期政権に意欲
 「政治家で午(うま)年生まれは小泉純一郎元首相と中曽根康弘元首相だ。2人の特徴が何かといえば、首相を長く務めたことだ」。安倍晋三首相は1日夜(日本時間2日未明)、ロンドンの金融街シティーでの講演で、自らのえとが午年であることに触れ、長期政権への意欲をにじませた。「私は午年だが妻は寅(とら)年だ」と昭恵夫人にも言及。「馬と虎。常に妻に従うことにしているゆえんだ」と笑いを誘っていた。

 安倍首相は疲れているのではないかと心配になる。通訳がどう訳したのかは知らないが、英国人には理解できないであろう。誰の笑いを誘ったのだろう。相手が理解できるかどうかを想像せずに、自分ないし自分の取り巻きだけが理解できる話をして喜ぶというのは深刻な老化の始まりかも知れない。

 私には、これと殆ど同種の強烈な想い出がある。30数年前だが、日本政府は、民間企業100人以上からなる貿易関係のミッションを英国、アイルランドに派遣した。日本政府の高官も参加し、私も政府の事務方職員として随行した。ミッションの団長は某大商社の社長で、あちこちで挨拶された。聞いていて恥かしかったのが2つある。
 安倍首相の挨拶と同じ、干支の話から言うと、先方政府主催の夕食会における挨拶で、団長は同行ミッションの主要メンバーを数人紹介したのだが、自分の会社の(確か)常務を紹介する際に、「自分より一回り下の戌年で、自分とは非常に気が合う」と言った。通訳の説明は長くなり、しかも内容が相手国の参列者には全く面白くない。
 もう1つ、ロンドンの夕食会での挨拶もひどかった。相手国のVIPが何人か出席していたので、その人たちの名前を挙げて感謝の辞を述べた。通訳が気を効かせて、出席していたが団長のリストから抜けていた、ロンドン市長の名も加えた。、通訳の次に、団長は「自分がロンドン市長の名前を忘れたのに、通訳が加えてくれたので感謝する」と述べた。この際に他のこともしゃべっておけば、通訳はこの余計な感謝の部分を省略できただろうが、団長は、この通訳への感謝だけ言って下駄を預けてしまった。通訳は困って、団長の話をそのまま伝えた後、自分は当然のことをしたまでで感謝されることではないと付け加えた。
 特に外国でのスピーチは、相手にとって理解できることを言うことが重要であると思うが、日本のトップはその配慮が少ないのではなかろうか。安倍首相の就任後の昨年初め、外国での講演でよく「Buy my Abenomics.」述べたという。これについても、私は、自信の表れやユーモアというより、何となくアロガントな響きを相手に与えたのではなかろうかと思っていた。
 なお、冒頭のロンドンでの講演に戻ると、安倍首相は、こんな詰らないことだけをしゃべっていたのではないようだ。産経新聞のウェブによれば、タキシードを着て、次のようにしゃべっている。
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/140502/plc14050208320008-n1.htm