糖質制限食に挑戦(その2)

 1か月前の弊ブログ(id:oginos:20150904)で、糖尿病対策として、糖質制限食に挑戦し始めた話を紹介した。開始後約40日間の糖質制限食(概ね10-30g/日以下)の成果として、ヘモグロビンA1cが6.5(前回7.5)、食後(2.5時間後)血糖値が106mg/dl(前回165)になった。先週、更に35日経過時点で検査をした。結果はA1cが更に5.6にまで下っていた。これは健常人のレベルだ。(血糖値は、空腹時で111と若干上昇したがほぼ正常値の範囲内)。
 通常の1-2か月ごとの検診ではA1cと血糖値、血圧などを検査するだけだが、今回は糖質制限食の他の影響も診るために、たまたま夏に世田谷区から案内が来ていた特定健診*1を利用した。結果は、コレステロール、肝機能、心電図等、全て取りあえず問題無しだった。
 これなら、服用している糖尿病薬(血糖値降下剤)も止めてよさそうなものだが、医師は慎重派で、次回も診てから検討しましょうと言う。この近所の医師とは今後も付き合いが長そうだから、逆らわずに耳順(したが)うこととした。
 今後、私としては糖質制限の程度を少し落す、すなわち糖質摂取量を若干増やすこととした。主眼は体重を少し増やしたいからだ。例えば、ご飯は1日1食(半杯から1/3)食べる、果物(後に説明)は解禁などだ。
 以下、私なりのオブザベーションを幾つか述べる。

1) 体重は、弊ブログでも述べたとおり、糖質オフ前の54kgから前回52kgに落ちた。その後の1か月間、タンパク質、脂質をできるだけ取ることにより、今回53kg程度に戻した(身長167cmだからBMIでは19)。しかし、従前の糖質摂取相当分の熱量(エネルギー)をタンパク質、脂質で摂取するのは相当大変だ。
2) 体重が減っているせいか、糖質を食べていないせいか、歩くと疲れやすい、今1つ体力が出ない。もう少し食べる必要がありそうだ。
3) 体質が少し変ってきたような気がする。これは後述の夏井著「炭水化物が人類を滅ぼす」にも出ているが、糖質を摂取すると身体が拒否反応らしきものを示すというのだ(同書では、糖質を口に入れた時から判ると言い、糖質センサーと名付けている)。私の場合も、糖質を食して(ご飯を2-3箸程度、ビールを2杯程度など)、1-2時間経つと顔が火照る、頭がぼうっとするような気がしたことが一再ならずある。糖質センサーが本当かどうか知らないが、今後検証していきたいと思う。同書によれば、体が低糖質体質、低カロリー体質になっていくので心配ない、むしろ望ましいとのことだ
4) 従来の便秘傾向が改善している。3-4日に1回程度だったが、連日が多い。これは糖質オフの食事というよりも、フマニ油などの高級油の摂取のせいかも知れない。
5) 脂質の摂取については、本の勧めに従い、1月半ほど前からフマニ油を買い、生食している。しかし、こんなに油を取っていいものかと不安になり、次の本を読んだ。
○ 藤田紘一郎監修「危ない油と健康になるオイル」(英和出版社、2015/9/1発行)
○ 日経ヘルス2015年9月号特集「正しい油ダイエット」(50ページの特集。日経BP社)
○ 板倉弘重監修「(認知症を防ぐ正しい油のとり方)脳にいい油・悪い油」(永岡書店、2015/10/10発行)
 油の種類が多すぎて、真面目に読んでいると嫌になってくる。正直言ってこんなに神経質に食用油を区別してそれほど違いがあるものかと思う。しかし、折角読んだから、キーワードを紹介する。
a)よくない油は、トランス脂肪酸とオメガ6のリノール酸
b)いい油は、オメガ9のオレイン酸を含むオリーブ油、オメガ3のアルファリノレン酸を含むフマニ油・エゴマ油、飽和脂肪酸の中で例外的にいいココナツオイル。
c)油は酸化すると駄目になるから、開けたら短時日で使う、揚げ・炒め用油は再使用しない。
 専門語がいろいろ出ているが説明は省略する。私は、人体はもっと柔軟に対応していると思っているので、神経質に考えないことにした。しかし、従来漠然と恐れていた油の摂取には抵抗を感じなくなった。

6) 本を読んでいてびっくりしたのは、ブドウなどの果物はブドウ糖だけかと思っていたら、ブドウ中の炭水化物は、ブドウ糖と果糖(フルクトース)が半々ぐらいだという。しかも糖尿病の指標の血糖値はブドウ糖の値で、果糖は関係ないというのだ。説明によれば、ブドウ糖*2は、小腸で吸収され血管内に入って体内を廻り、各所でグリコーゲンの形で貯蔵され、余ったものは肝臓で中性脂肪の形になる。これに対し、果糖の消化吸収は特殊で、直接肝臓に行って中性脂肪になるとのことだ(10%程度はブドウ糖になるらしい)。
 従って、果糖単体では血糖値や糖尿病への影響は無い。ブドウなどの果物を食する場合、糖質含有量の全てが血糖値に影響するのではなく、約半分のブドウ糖だけが関係する。それから果糖は直ぐ中性脂肪になるので、肥満につながるという。体重減少等に悩んで(妻に心配されて)、糖質オフを緩和することにした私としては、これは好都合だ。果物を解禁することとした次第だ。
 ブドウ以外のものに多く含まれているものをなぜ「ブドウ糖」というのかについて、Wikipediaでは、ブドウ果汁に含まれているものが発見されたとの説とブドウ糖分子の形状がブドウの房に似ていたからとの2説を紹介している。誤解を招く命名ではないか。

7) 補足だが、糖質を若干解除したことで、前の弊ブログで紹介したが解除したものを2つ紹介。
 ビールは糖質ゼロのアルコール度6%を飲んでいたが、妻が美味しくない、アルコール度が高くて自分には飲みにくいと言っていたので、元の発泡酒に変更した(糖質3.2g/100ml、アルコール度5%)。350ml缶を妻と分け合い、その後焼酎の水割りを飲むのが私の晩酌だ。
 明治の「チョコレート効果 カカオ95%」を時々食べていたが、やはり苦いので、カカオ86%に変更。これは糖尿病対策としてではなく、後述の板倉著「脳にいい油・悪い油」の中で、認知症対策としてカカオポリフェノールがいいとされ、砂糖が少ない70%以上の純度のチョコレートが推奨されていたことによる。70%台もあるが、糖質のより少ない86%にした。95%よりは甘く美味しい。

8) 糖質制限食は、前回弊ブログでも紹介したように議論が多い。反対派の書2冊も入れ、次を読んだ。
岡本卓 「本当は怖い「糖質制限」」(祥伝社、2013/7 第2刷発行)
 この著者の本は前回弊ブログでも紹介した(「薬が減らせて、血糖値にもしばられない、糖尿病最新療法2」)が、題名に引かれて買った。ほぼ同じときの発行だがトーンがやや違う。丁寧に書いてあるが、糖質制限食には2か月間程度の効果は認めつつも、中長期的な影響がはっきりしないから駄目だという。根拠にしている研究報告は、前回弊ブログで紹介した賛成派の書でも引用されているものもあるが、全く逆の評価になるのも面白い。患者の読者にとっては迷惑な話だが、医学というのはこういうものかも知れないと思い至った。
松生恒夫 「炭水化物を抜くと腸はダメになる」 (青春出版社、2015/6/15 第1刷発行)
 今までの本とは違い、主張の根拠となる症例や研究報告の出所が示されていないのには当惑した。本の3分の2以上が、食物繊維の重要性と(オリーブ油を主体とする)地中海式和食の紹介に充てられていて、書名とは少しずれている。
夏井睦 「炭水化物が人類を滅ぼす−糖質制限から見た生命の科学」 (光文社、2013/11 第 3刷と電子書籍発行) 文字通り、糖質制限食賛成派の本だ。
 以上のことから私はどうするか。体調を見つつ、緩和した糖質制限食(100g/日程度)を続けていく。少量ながらも晩酌を続けられるのを励みにする。糖尿病専門医の看板も掲げている近所の医者とは適宜仲良くしていくように心がけよう。

*1:2008年度から始まった、40歳以上を対象とする、いわゆるメタボ検診。本人負担は500円。

*2:デンプンも唾液アミラーゼ等での分解を経て結局は腸内で分解されてブドウ糖になる。