富士登山(結果)

 さる1月25日の弊ブログ(目指せ!富士山 id:oginos:20170125 )で触れていた富士山に、息子と2人で7月8-9日の1泊で行ってきた。結果は、3400m地点(吉田口ルートの本8合目)で引き返した。私の体力が続かなかったためだ。以下経緯も含め、報告する。最大の目標は、山頂到達よりも、できるだけ人に迷惑をかけないことだったが、何とか達成できた(息子には世話になったし、少なからず迷惑もかけた)。以下、1)簡単な経緯、2)その他のトレーニング、3)低山登山、4)登山用具その他、5)実際の登山、6)反省について述べる。約7000字と長いがご容赦を。

1) 経緯
 今年の元旦に息子が年賀に来て、飲み食いしているうちに、富士登山に誘われた。私が素面であれば即刻断っていた筈だが、酔っぱらっていて前向きなコメントをしたようだ。忘れていたが、数日後家人から言われた。息子と改めて連絡を取り、私の方で、体力チェックなど可能性を調べ、1月末までに方向を決めることとした。
 その後、前述の1月弊ブログでも説明したように、本を読む、友人に聞く、トレーニングをするなどの検討を進めた。基本は50年間使っていなかった身体のトレーニングだ。その過程で、富士山不可能という決定的な要因が出ないまま、なし崩し的に(?)富士登山に進んできた次第。

2) 各種のトレーニン
 1月ブログで紹介したデパートの階段昇りは、バス等に乗ってデパートまで行かねばならないので、少し面倒だ。やや飽きて、目標(階段12階分を10回)も沙汰止みになった*1。それ以外に、近くの国分寺崖線という、多摩川沿いに細長い傾斜地の、階段もよく登った。適当になってきたが若干効果があり、友人たちとの飲食の場所がビルの6、7階だと1人で階段を昇った。エレベーターが混むからだが、みんなにびっくりされた。
(インターバル速歩トレーニング)
 リアルな書店でたまたま、次の本を見つけた。
〇 能勢博「山に登る前に読む本」(ブルーバックス、2014年8月)
 副題の「運動生理学からみた科学的登山術」の「科学的」に惹かれて買った、その中で薦める「インターバル速歩トレーニング」を始めた。3分間速歩、3分間並歩(ゆっくり歩き)を5回繰り返すというものだ。この30分間のトレーニングを1週に3-4回おこない、半年ほど続ければ10歳若返る体力が得られるとのことだ。簡単そうなので、早速、冷蔵庫のドアに磁力で貼り付けていたキッチンタイマー(元は100円ショップ)を持ち出し、3分間ずつ測ることとした。3分間も3回ほど続けると割に息が上がり、トレーニングになりそうだ。

3) 低山でのトレーニン
 春になって、近くの山に行った。高尾山(東京都八王子市、標高599m)に3回、大山(神奈川県伊勢原市、標高1252m)に2回行った。そのうち高尾山の最初の2回は、家族と行った初歩的なコースで、私はトレーニングだからケーブルカーは使わなかった。特に問題なかったので、上々の出足と感じた。
a) 大山の1回目、貧血
 大山の1回目(5/2)は老人大学のグループのハイキングで、途中の見晴台(769m)までのもの。実は途中で(標高678m辺り)、貧血状態になった。ケーブルカーに乗らずに登ったら階段の連続で割にきつく、真っ青になったらしい。茶屋で5分ほど1人で休んでいたら元に戻ったので、皆の後を追いかけた。その後は問題なかったが、一時ダウンしたのはショック。多分4月に香港マカオに行って夫婦でお腹をやられ、1-2週間調子が悪かったことが後を引いていたのだと思う。
b) 高尾山の3回目、足つり
 高尾山の3回目(5/27)は、私の単独行で、少し積極的に試みた。すなわち、高尾山頂から更に足を延ばし(小仏城山峠まで)、計5時間ほど歩いた(昼食休憩を含む)。高尾山は6種類以上コースがあるが、そのうちハードそうなものを選んだ。
 富士山などの下り坂で足ががくがくすることが多いと聞いていたので、試しの意味で少しハード気味(足への衝撃を大きめ)に歩いた。予想通り(予想以上に)、最後の40分の下り坂で、10-15分ほど歩くと足ががくがくしてきて痛くなり、普通には歩けなくなった。どうなるかと思ったが、ゆっくり歩いて辛うじて下に辿りついた。
 帰ってからウェブで調べると、膝の皿が笑うともいわれる症状で、下り坂、段は重力がプラスされ、足への衝撃が大きいからとのこと。対策は、衝撃を避けるためゆっくり、回り道(段の場合は途中の足場を探す)をして降りる、事前対策は上腿と下腿の筋肉を強くするトレーニングをするのが基本のようだ。このトレーニングも始めた。
 友人にこの話をしたら、漢方薬ツムラの68番「芍薬甘草湯」がびっくりするほど効くという。そのメールをたまたま近くのスーパーにいた時に受信した。店の薬剤師に聞くと、ツムラは無いが小林製薬芍薬甘草湯「コムレケア」ならあるという。早速買った。
 持久力の方は5時間歩けたので、なんとかなるかも知れないとの気持になった。
c) 大山の2回目、転倒
 本番までに少なくとももう1度登っておきたい、しかし、登山前の2週間程度は休んで体力を蓄えておいた方がいいとの説もあり、早めに行く方がいい。6/15に大山の2回目の登山をした(私の単独行)。1,252mの山頂を目指し、4時間ほど歩いた。
 前述の通り、5/2の1回目は途中までなのに、貧血で5分間ほどダウンした。再チャレンジだが、今回も割にきつかった。詳細は、次のYAMAPに記載したが、下り坂は、前日の雨で濡れていたせいもあり、数回転んだ。ひじの擦り傷は派手なもので数日残った。額も少し擦ったが髪で隠れるもので誰にも気づかれなかった。
https://yamap.co.jp/activity/948851

 その後は体力温存のため、登山トレーニングは終りとした。残りで気に懸るのは高山病だが、行って見ないとよく判らないし、事前の対策は無さそう。高山病と足つりが無ければ、5時間、4時間歩いた実績をもとに、とにかく我慢して足を出していけば、ひょっとしたら登れるかも知れない。しかし、仮に下山できても廃人になっているかも知れない。
 6月下旬にあった大学時代のクラス会で、山に詳しい友人に、高尾山3回、大山2回と準備状況を話したら、富士山は違うと鼻であしらわれた。しかし、大山で歩いた高低差は前述のYAMAPの記録によれば949mだ。富士山では約1400m(5合目から山頂)の予定だから、相当なものではないか(冗談)。

4) 登山用具その他
 ほぼ50年振りの登山なので、用具は一から用意しなければいけない。
 基本的に登山用具レンタルを利用することとした。東京では2店あり、その中で、「やまどうぐレンタル屋」(http://www.yamarent.com/guide.html )を利用することとした(HPのFAQが親切との雑駁な印象から)。

  • レインウェア(上下セパレート) 天候に恵まれた今回は、幸い出番がなかった。
  • 2本ストック 登山用品店のアンケートでも、持って行ってよかった品目の1-2位に挙げられている。50年前の素人登山の経験しかない自分としては、ストックの価値が判らなかったが、実際に使用して、特に登り道で2本ストックの価値を認識した。下り道は、石段など段差がはっきりした道なら足の衝撃を弱める効果は高いと思われるが、そのようなところは殆ど無く、ストック1本にしたが、実はあまり使い方は判らなかった。
  • ヘッドランプ
  • ザック 当初手持ちの大きめのバックパックで代用しようかと思ったが、腰にザックの重みを分散するようになってないこと等から*2レンタルとした。50年前しか経験のない自分としては驚きの構造で、かつ威力も感じた。
  • ヘルメット たまたま1週間前の7/1に登山用品店(石井山専。靴を買った)で開催された無料の富士登山セミナーで、転倒による頭部打撲の危険を示唆された。自分としては落石による頭部陥没などの事故は、そのような道は通らないから不要と考えていた。しかし、近年とみにバランス感覚の衰えを自覚している自分としては、滑って転倒し、頭部打撲に至ることはあり得る。レンタル店に電話して追加した。
  • ショートスパッツ 下り道で砂などが靴に入るのを防止する靴カバー。砂の多い道では必需品のようだが、今回は使わなかった。

 以上5点で、1泊2日用10,500円。

 購入したのは、

  • トレッキングシューズ (事前の低山登山にも活躍)
  • コムレケア (前述。足のつり、こむら返り対策の漢方薬)、
  • 缶酸素(5L)2缶 (次男*3の推薦。本人も使用実績はないと言っていた。私も使ったが効果はよく判らない)、
  • アミノバイタル (味の素、アミノ酸を含むスポーツサプリメント。登山用品ショップで衝動的に買った。ただし使わず)、
  • ハット (野球帽のようなキャップは持っている。日焼け対策用のツバ広のハットは今まで一般店で探したが、Mサイズばかりで私の頭には入らない。登山用品店ではLサイズも多い。高価(4700円)だが買った)*4
  • 軍手 (100円ショップで、3個108円)
  • 食品 (エネルギー補給のために必須とある。ウェブで見ていると、沢山買っている。つい買い過ぎて、息子からは荷物が多いと言われるし、疲れで食欲が少なかったせいもあり、大半を残した)

(カーボローディング)
 トレーニングに飽きて、本やウェブを見ていて、「カーボローディング」という、注目すべき食事対策を見つけた。マラソンなどの持久性を要求されるスポーツなどでは、活動中に体内のグリコーゲンを大量に消費する。そのため、本番の3日ほど前から炭水化物を大量に摂取し、グリコーゲン化して体内の筋肉、肝臓に蓄える方法だ。*5
 筋肉のエネルギー源は、グリコーゲン(ブドウ糖に分解する)と脂肪酸が主で(タンパク質もあるがやや特殊)、そのうちグリコーゲンの方が長時間の運動には効率的らしい。私は、約2年前から糖尿病のため「糖質制限」を実行している*6ため、炭水化物の摂取は甚だ抑制的だ。2-3日間は大量に炭水化物を食べられるということで、楽しみになった。この2年間殆ど食べたことのないラーメン、パスタ、鮨、親子丼などを3日間の昼、夜で順番に食べようと計画を練った。
 ところが、糖尿病の身では、蓄えたグリコーゲンを当日に費消する前に、血糖値が上昇すること(血糖値スパイクなど)が心配になった。糖尿病の定期検診を受けている糖尿病専門の町医者に相談すると、2-3日ならいいでしょうと気楽にいう。しかし、心配になってウェブで、「糖尿病、カーボローディング」と検索すると、糖質制限を主唱している学者を中心に否定的なコメントが多い。中には、エネルギー代謝について、グリコーゲンは必須でなく、脂肪酸で十分という人もいる。学者の世界は、誰が正しいか、本当に信頼できない。
 結果、私のカーボローディング計画は大幅に縮小し、前日の夜にパスタ、当日の昼、夜に現地でトリモツ丼、カレーライス(山小屋等)、歩行中にキャラメルなど(血糖が増えても直ちに費消される)、しょぼいものとなってしまった。
(家人の挑戦)
 番外として、春頃、家人が一緒に行きたいと言い出した時には焦った。スポーツクラブなどで身体をよく動かしているが、登山の経験は生まれて以来ないという。息子ともども青ざめて、人のことを面倒見る余裕は全くなく、自分のことだけで必死なのだということで諦めてもらった。その後、私がいざとなれば面倒見ないと言った言葉が独り歩きし、嫌味を言われている。

5) 実際の登山
(計画した登山コース)
 最も一般的な吉田口ルートの1泊2日コースを取った。息子のマイカーで、「富士スバルライン5合目」(標高2305m)まで行って登山を開始し、7合目の山小屋「鎌岩館」(標高2790m)に宿泊。2日目は朝3時半ごろまでに出発し、途中で御来光を見(山頂での御来光には拘らない)、山頂に行って下山というものだ。
(登山日)
 7/8-9(土日)の選定は、息子と私との日程調整の結果だが、主に息子に任せていて、特に週末というのは息子の仕事の事情による。一般的にいうと少し早かったかも知れない。7/1が富士山の山開きというのは報道されていたが、それは吉田口ルートだけで、他の3ルート(須走口、富士宮口、御殿場口)のオープンは7/10からだ。ということは、前述の7/1の富士登山セミナーで初めて知った(少なくとも私は)。
 山頂を1-2時間で巡る「お鉢めぐり」のオープンも7/10だ。ということは最高峰3776mの剣が峰には行けないということで、吉田口頂上(久須志神社)の3710mで満足しなければならない。
 7/8-9のメリットもあって、7/10からはマイカー規制が実施されるが、規制前なので、「富士スバルライン5合目」まで、高速道路で行って駐車場に停められる。マイカー規制が始まると、富士急河口湖駅に近い「富士北麓駐車場」でマイカーを停め、それから登山バスで45分間かけ登山口の「富士スバルライン5合目」まで行くことになる(吉田口ルートの場合)。
 7/9以前に登る場合の最大の問題は、天候が不安定なことだ。今回も毎日天気予報のウェブページをチェックした。幸いなことに、だんだん良い予報になっていった。
(登山結果)
 天候については2日間全く降らなかった。特に2日目の朝は快晴だった。問題は私で、体力の限界を知った。第1日目の7合目(2700m辺り)は、予想以上の岩場で山小屋(鎌岩館、2790m)に到着する(17:30頃)までに疲れた。
 夜予想外だったのは、足のつりと悪寒だ。足はコムレケアを飲み、悪寒についてはぶるぶる震え出したので焦った。汗で濡れていたシャツを着替え、フリースを着て寝た。横に寝ていた息子は2つとも気が付かなかったという。夜は割によく眠れて朝3時に起床し、食事をして、3:40に山小屋を出発した。御来光は4:38に山腹で眺めた。
 よく寝たので出発時は快調のように思えたが、厳しい岩場が続き、疲れて直ぐ休みたくなる。缶酸素を吸っても効果が感じられない。3300m辺りで、自分としては撤退を決意した。9合目は更に厳しいと言われているからだ。本8合目(3400m)に登りと下りの接点*7があるので、そこまで登ろうと息子に提案した。そこの山小屋で私が休んでいれば、その間に息子が1人で山頂まで往復できると思ったからだ。それ以外の場所だと落ち合い方が複雑になる。ところが、息子は1人で登っても詰らないから一緒に下りるという。2-3度押し問答したが、結局息子に従った。
 ということで、本8合目*8まで苦労して登り、胸突江戸屋(上江戸屋、標高3400m)脇から下山道に入った(7:15頃)。10:15頃に出発点の5合目に無事戻ってきた。
 私としては、体力の限界と思っていたので、悔しいという気持は余りなかった。ただ息子には悪かった。
 登山の軌跡は、YAMAPに載せた。ただ、疲れのため、写真を撮る元気はなく、写真は少ない。
https://yamap.co.jp/activity/1002311
 
6) 反省
(トレーニングが不十分だったか)
 トレーニングが少し適当になってきた理由は、運動しない歴50年のため、トレーニングの目標と成果計測が判らないまま、多少の改善でいいとしたことだろうかと思う。何時まで経っても、(富士登山に必要な)体力が付いたとの自信が出てこない。一方心なしか体が疲れる気もしていた。
 トレーニングを十分していれば登れたかという問題もある。70歳以上の富士山登頂者については、浅間大社の記帳名簿がある。最新版は2015年夏のようで、数え年*970歳以上が1086名だ。 http://mainichi.jp/articles/20151224/ddl/k22/040/032000c
 富士山全体の登頂者数は2016年の夏で24.8万人(各8合目に設置したカウンターによる)とのこと*10。70歳以上は0.4%でこれをどう評価するかは問題だが、私は結構多いと思った。長期のトレーニングをする人であれば登れるかとも思う。ただ私は余りやりたくない。
(転倒)
 私は、実は自分のバランス感覚の衰えを気にしていた。時々足がもつれたり、よろめいたりする。今回の収穫は、殆ど転ばなかったことだ。岩場を登っていた時に、よろめいたことはあったが、転ばなかった。一度滑って膝をつき、ズボンのすね部に土がついた程度だ。高齢者の3訓として、「転ぶな、骨を折るな、義理を欠け」と言われているので、少し安心した。
 とにかく2人とも全く怪我なく、無事帰ってこれたのはよかった。息子は、翌、月曜日に通常通り出勤したというので驚嘆した。
(息子は若い)
 息子は、先月41歳になったばかりだが、やはり若い。最近は忙しいようで、特に登山前の1週間(それ以前は知らない)は帰宅が11時頃で、電話での相談もままならない。前日も帰宅は11時半頃だ。こんな猛烈サラリーマンに育てた記憶は家人にも私にも無く、本人も不本意だと言いつつ、多忙だ。富士山で体力が持つかと私の方で少し心配だったが杞憂だった。私の荷物が多すぎると言い、少し分担してくれた。2日目は更に分担してくれた。その中で、重いカメラを持ち、景色や私などよく撮ってくれた。
 下山後、息子は再度の挑戦を提案してきた。折角始めたトレーニングをこれからも続け、来年また登ろうというのだ。富士宮ルートの方が短そうだともいう。今回は素面の私は、直ぐ遠慮申し上げた。

*1:階段の近くにいる店員とたまたま2回目が合うと、怪訝な顔をされる。

*2:登山用ザックは上部に蓋が付いた構造で雨に強い(逆に開け閉めが面倒)、防水用のザックカバーが内蔵しているなど

*3:次男は、弾丸のの富士登山やマラソンをよくしている。もし参加していたら、激しくしごかれたかも。

*4:家人からハットとレンタルのヘルメットとの関係を指摘された。確かに、ハットの上からヘルメットをして、ヘルメットの紐をハットの上から首に回すと、ハットの折角のつばが痛む。面倒だけれど両方持っていって、ヘルメットを基本とし、平坦な道などはハットにすることとした。

*5: https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%83%BC%E3%83%9C%E3%83%BB%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%82%B0

*6:弊ブログ「糖質制限食に挑戦」 http://d.hatena.ne.jp/oginos/20150904

*7:7/10の全山オープン以降は、頂上から6合目までは登りと下りが全くの別道だ(吉田口ルートの場合)。7/9までは頂上から本8合目までだけは共通。

*8:吉田口ルートの8合目は、下から(単なる)8合目、本8合目、8合5勺と3つあってややこしい。

*9:数え年というのが珍しい。最近は葬式でも享年を満でいうのを見ることがある。ちなみに7月生れの私は今数えで72歳。

*10:http://kanto.env.go.jp/pre_2016/28.html