米国の戦後政治思想と日本の政治状況

 私としては珍しく、政治思想に関するレポートを書いたので、紹介する。A4版で15ページと長くなったので、別添ファイル(Word)とした。決して面白いものではないので、お勧めしない。
 背景を2点説明する。
 第1は、今年の春から世田谷区の市民大学のゼミに参加しているが、図らずもそこでレポートを書くこととなった。ゼミの名前は「戦後の政治思想を読む」、指導講師は苅部(かるべ)直 東大教授だ。内容は、宇野重規編『民主社会と市民社会』(岩波書店リーディングス戦後日本の思想体系シリーズ、2016年8月)に掲載されている戦後の日本の識者の評論約20編の中から10数編を選び、輪読形式で報告者を決め議論していくというものだ。最後の2-3回は同書から離れ、何人かが自由にテーマを設定してレポートを作成して議論ということになった。自発的な立候補者が何人かいたが数が少し足りず、ここで図らずも苅部講師から私が指名されてしまった(決して自発的でないという説明)。
 第2は、私のテーマ選定の背景で、詳しくは別添ファイルに書いてある。要するに、私は最近の日本の政治状況に当惑しており、そのため外国、具体的には米国の政治思想論争を調べたということだ。
 内容は、半分強が仲正昌樹アメリ現代思想』(NHKブックス、集中講義!シリーズ、2008年9月)の紹介で、半分弱がその他の本の紹介だ。仲正著は、ウェブでこの調査に関連する文書を調べ図書館で何冊か借りた後、気に入ったのでアマゾンで買った(書込みができるから)。なかなかいい本だと思う。索引がしっかりしているのもうれしい。
 もう1つのpdf版の添付ファイルは、仲正著に出ていた人物関係図に、私が四角や丸などを書き込んだものだ。本文の参考になればと思う。

 今回の調べで、私が印象的に感じたことは、21世紀に入っての世界の潮流として、「多文化主義の行き詰まり」と「脱世俗化(=宗教の復権)」が挙げられていることだ。世界の民族間、宗教間の争いは当分無くなりそうもない。
 それから最後に書いた、日本の政治学で今後議論してほしいこととして挙げた「今進行しつつあることは何なのか、我々の身に何が起ころうとしているのか」は、フーコーが哲学の問いとして言ったことだそうだ(孫引き)。イスラエルとアラブはどうなるのか、北朝鮮はどうなるのか、トランプ大統領はどうなるのか、安倍首相はどうなるのか、そのような細かい具体的な設問への回答は期待しないが、大きな方向についての議論がほしい。

以上
苅部ゼミレポート.docx 直
仲正・米国現代思想のあらまし.pdf 直