広辞苑第7版

 2018年1月に広辞苑第7版が発行されたことは、事前に広告もされ、報道もされた。私は紙の辞書は高価だから手が出ない。私の手元の主な電子辞書は2機(外出用、家用)で、広辞苑は5版と6版だ。7版のためだけに電子辞書を買い替えるのも大げさだ(実は買換え自体は魅力的だが)。以下はこれに関連する雑談。
(広辞苑第7版)
 電子辞書の他に、実はもう1つスマホにインストールしている広辞苑がある。富士通パーソナルなる会社が提供する「ウルトラ統合辞書」だ。その中に入っている。月額250円の有料アプリだ。私の目的は広辞苑ではなく、リーダーズ英和辞典(研究社)と角川類語新辞典が主目的だった。他にも漢和辞典など幾つか入っている。
 広辞苑アプリはあまり使っていなかった(スマホには後述のとおり他にも国語辞書がインストールされている)。広辞苑第7版の発売開始後、早速アップデートの案内が来て、それに従うと、最新の第7版がインストールされたので、感激した。
(第7版の訂正)
 さる1月26日にこの広辞苑第7版に訂正があることが新聞で報道された。
岩波書店おわび 「LGBT広辞苑を訂正 「しまなみ海道」も」 (毎日新聞1月26日)
https://mainichi.jp/articles/20180126/ddm/041/040/126000c
 新聞で読んだ日にスマホ広辞苑を見ると修正されていない。ウルトラ統合辞書に出ていた電話番号(後で判ったが富士通パーソナル)に電話して何時対応するか聞いたところ、丁寧に状況を調べてくれたが、結果は、広辞苑岩波書店に聞いてほしいという。
 週明けの月曜日(29日)に、岩波に電話かメールしようと準備していて、念のため、ウルトラ統合辞書を開いたら、アップデートがあるという。インストールすると、LGBTしまなみ海道も見事修正されていた。*1
 ということで、改めてデジタル辞書の威力を認識した次第。以下、この話のついでに、私のスマホの辞書を中心に幾つか雑談したい。
(スマホの辞書)
 上述の電子辞書は便利で、それぞれ100コンテンツ以上入っていて、それにプラスして、仏語、独語、スペイン語、イタリー語の辞書ソフトを昔購入してインストールしている。それらの特殊外国語辞書は今ではほとんど使わず、もっぱらブリタニカ百科事典や国語辞書、英和辞書を愛用している。私のは古くて音声入力が無いのが残念だが(スマホはその点がいい)、取扱いは便利だ。孫たちにもジュニア版の電子辞書を何年か前にプレゼントした。
 電子辞書は好きだが、何時も持ち歩く訳にはいかず(バックパックを持つ場合には入れるが)、スマホに幾つか辞書アプリをインストールしている。前述のウルトラ統合辞書(有料)の他、もっぱら無料の辞書を探して入れている。ただ、auのスマートパス(月額350円で相当数のアプリが無料で使える)も活用しているので、本当に無料かはよく判らない。
 インストールしている無料辞書は、新明解国語辞典(三省堂)、三省堂国語辞典ウィズダム英和・和英辞典(三省堂)、大辞林(三省堂)、ジーニアス英和大辞典・和英辞典(大修館)、Merriam-Webster(アメリカの英語辞典)などだ。幾つかコメントする。
 Merriam-Webster辞典には、他にない特徴が2つある。
a)各語の説明項目に、語源の他にFirst useの欄があり、その言葉が最初に使われたという西暦年が出ている。出典が記載されていないし、根拠もよく判らないが、その言葉について少し想像できて楽しい。
b)相当数の単語クイズがあり、時間があれば楽しめる。ただし私には難しく、何時まで経ってもbeginnerレベルから抜けられない。
 クロスワード辞典も入れていて、週刊誌などのパズルの際の隠し技だ。他にも無料にまかせてインストールしただけのものが多く、使っていず恥ずかしいので省略する。
 最初の三省堂の3辞典(新明解、国語辞典、ウィズダム)には編者達が投稿するコラムがあって、1か月に1回ほどの頻度で連絡が来る。次項はそれに関連した話題で、広辞苑にも話が及ぶ。
(プリン体)
 三省堂国語辞典のコラムは「三国(三省堂国語辞典のこと)のすすめ」と題され、辞書の編者達のコメントが面白くて、このため、私は「三国」の価値を見直し、適宜引くようになった。そのコラムの第62回のタイトル「プリン体の説明、なかなか甘くない」は、この1月に配信された。
 内容は、同じ言葉についての国語辞書の説明と百科事典の説明との違いを解説したもので、「プリン体」を例にとっている。
 「プリン体」は、百科事典的には「ピリミジン環とイミダゾール環の縮合環をもつ塩基性物質」ということが先ずある。しかし、「生活」的には、ビールなどでプリン体がカットされているかが話題である。それはプリン体が体内で尿酸に変わり、高尿酸血症痛風の原因になると言われているからだ。従って国語辞書としては、「尿酸に変わり、痛風の原因になる」という「生活感」を踏まえた説明が中心になる。百科事典ではこのことに触れないものもあるという。
 それで、三国では、「プリン体」の項で、「…尿酸になる。⇒尿酸」とし、「尿酸」の項で、病気との関係の説明を充実させたとある。
 それにしても、何故わざわざ2項目に説明を分散させたかが、私には不可解だ*2。ちなみに同じ三省堂の「新明解」では、「プリン体」の項に、「…痛風になるという」とまで記述してあって、「尿酸」の項を見る必要は無い。この方が「生活感」に沿っている。
(プリン体広辞苑)
 それで広辞苑7版の話だ。三国のコラムの話から、広辞苑7版ではどうかと、「プリン体」を調べた。何とその見出しは無く、「プリン塩基」という生活感の無い見出し中の説明の最後に、「プリン体」と触れてあるだけだ*3。しかも、説明は、尿酸を生じることには触れているが、痛風には触れてない。「三国」式の2項目分散方式かと思い、「尿酸」を見たが、痛風には触れていない。
 これで、考えたのだが、プリン体痛風の原因というのは未だ定説となっていないのではなかろうか。他の辞書では紹介しているのに、天下の広辞苑が、第6版にあった「プリン体」見出しを「プリン塩基」に変え、かつ痛風原因説に触れないのは、それを疑う余程の自信があるからに違いない。私も、ビールのプリン体ゼロなどの表示に騙されず、美味しいビールを楽しむことにしたい。

*1:ダウンロードに要した時間は2-3分で、その前に7版全体をダウンロードした時間と変らない印象だ。2項目の修正のために全部を改めてダウンロードしたようだ。

*2:スマホだから、クリックして簡単にジャンプできるが。

*3:電子辞書内の第6版では「プリン体」の見出しはある。ただし説明は生活感の全くない不愛想なものだ。