死ねばいいのに

京極夏彦「死ねばいいのに」(講談社2010年5月)
 本書については、内容もさることながら、読んだ形態について先ず紹介する。形態は携帯電話にダウンロードしたもの。私が読み出したのは、この9月だが、単行本が5月15日に出版された。それで5月中に電子書籍として、iPad等向けに発売されていたらしい。
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20100520_368320.html
 興味深いのは、価格だ。紙の単行本は1785円、iPad用アプリは発売から2週間はキャンペーン価格として735円、それ以降は945円(第1章については無料配信も行う)だ。携帯電話向けは複雑で、第1章は無料、その後1章につき105円(第2-6章)。全て読むと525円だ。
 私は、以上の背景を知らずに、9月ごろ携帯での電子書籍を探していてたまたま見つけた。京極夏彦の名前は聞いたことがあったが、実際に読んだ本は無く、第1章無料に惹かれて読み始めた。結果は、面白くて、第2章以下全部を順次購入し、満足した。
 内容への感想は最後に触れるが、最初に私と電子書籍との繋がりについて幾つか述べよう。
1) 電子書籍には、a)PC、b)電子辞書に付属したもの、c)電子ブック(iPadキンドル等)、d)携帯電話にダウンロードしたものがあると思う。
a) 私は、仕事をしている机上のPCで書籍まで読もうという気はない。最近はノートPCを持ち歩くことはないが、よく持ち歩いていた昔に、今のような電子書籍のソフトが多かったならトライしていたかも知れない。
b) 電子辞書については、2年ほど前に買ったものが、130コンテンツ(辞書の意)に加え、日本文学100選がついていた。只のおまけに惹かれ、数編ほど読んでそれなりに楽しんだが、疲れたので止めた。欠点は、片手で読めず、両手を使うので、電車の中での立ち読みに不便だったことだ。それに操作性も悪い。全体が何ページか判らない。ある本は、途中まで読んでまだ先がありそうだったので、図書館に行って調べたら全体が390ページの本でびっくりした。電子辞書で200ページ辺りまで読んでいたが、それ以上それで読む気はせず、早速図書館で借りて、紙の本で続きを読んだ。
c) 電子ブックは、妻がiPadを持っているので、雑誌を読むなどで時々使っている。居間でソファーに座りながら読むにはいい。操作性もなかなかいいが、重く、やはり両手が必要なので、外に持っていくには不便だ。
d) 携帯電話については、昨2009年夏に機種変更で買った biblio (au、メーカーは東芝)が、その名のとおり、電子書籍を意識している。読書が主目的でこの機種を選んだわけではないが、折角だから、割りに読んでいる。以下、この携帯での読書について述べる。
2) 読んでいるもの
 biblioで購入した書籍は10数冊になろうと思う。伊坂幸太郎宮部みゆき阿刀田高は、2冊以上組だ。レイモンド・チャンドラーも読んだ。雑誌では、週間ダイヤモンドのインサイド情報版というのを定期購読している。しかし面白くないので近々止めようかと思っている。
 購入版のほかに、無料版、サンプル版、定期配信版も読んでいる。
 いわゆる携帯小説(作家が携帯で書いているものを言うらしい。若い人が書いている)はまだ読んでいないし、読もうともあまり思わない。
3) 携帯読書の得失
 携帯電話での読書の利点は、場所を選ばず読めることで、満員電車の中でその利点は発揮される。参考までに、私の電車の中の読書は3種類ある。a)座れた場合は、かばんから書類や大判の本を出して読む。b)座席の前の吊り革に立ったときは、かばんを網棚に乗せ、かばんから出した新書等を立って読む。c)満員電車で座席の前に立てない時は、片手にかばん、片手に携帯電話という形で読書する。他の利点は、かばんの中や本棚のスペースを取らないことだろう。
 携帯読書の欠点は色々ある。a)本全体の分量と今読んでいる場所が判らないので何時読み終わるか検討がつかない(それがスリリングの場合もある)。b)既に読んだところを読み返すのが、不可能ではないが面倒なので殆どしない。読み流しになる。c)下線やメモを書くことができない。d)人に貸すなど、読み回しができない、e)混んでいる電車の中では窮屈なので、頚椎に無理がかかっていそう。
 携帯読書は、普通の本を読めない満員電車の中でを基本としているので、分断読みになる。読み急ぎたいのを抑えるのに努力が必要だが、新聞小説と同じだと割り切っている。前述の読返しができない等も合せると雑な読み方になるのは事実だ。
4) 死ねばいいのにを読んで
 面白かったが、殆ど満員電車の中で雑な読み方をしたことの反省がある。ちなみに、単行本だと402ページらしいので、結構な分量ではある。ややネタばれなところがあるが、携帯読書の感想は次のとおり。
 先ず、推理小説であることに、半ばを過ぎても気をつかなかったことが恥かしい。犯人についても明かされるまで気がつかず、気がつかなかったことにも愕然とした。途中まで、多様な人間模様を描いた小説と思い、次の章を楽しみにして順次105円で購入していた。登場人物の饒舌に多少辟易した面があるが、雑な読み方の結果だ。
 負け惜しみだが、紙の本ならこんなことはなかったと思う。推理小説は、紙の本で時間を集中させて読むのがいい。
以上