新元号「令和」

 4月1日に発表された「令和」に違和感を覚える。小旅行をしていたので投稿が遅れたがご容赦を。

 最初の感想は、安倍首相に忖度する「安」を使うとの噂がネットで流れる中で、それがなくてほっとしたこと。更に、「令和」の「れいわ」という響きに清新さを感じた。しかし、その後旅行中にいろいろ疑問を感じた。以下に述べる。

1) 「令」の字は、やはり命令とか上が定める掟の意味が強い漢和辞典の第1義もそうである。令に 「よい 」という意味があるので問題ないとの考えもあるが(次節で反論)、第1印象が重要だ。人名にも使われているが、人の名前の目的の第1は、他人との識別にある(異論もあろうが)。名前の各文字に、親がそれぞれの思いを込めていいと思う。しかし、万人が使う元号では少しまずいのではないか。

 第1義、第1印象が重要との例を、孫の命名候補の例で述べる。息子が、「ジョウ」の響きがいいということで、「丞」を考えていると言ってきたことがある。助けるの意味があっていいのではないかとのことだ。私はスマホの辞書で調べ、「丞」は、昔の官職で補佐役の意味だからどうかねと言った。その後別の名にしたから納得したのだろう。

2) 「令」の「よい」という意味では、令夫人、令室、令息、令嬢など多くの熟語がある。漢和辞典で見たが、その大半が他人の親族を呼ぶときの敬称だ。「美人」というが、「令人」とは普通いわない(少なくとも広辞苑には出ていない)。純粋な「よい」の意味での熟語は非常に少ない。「お世辞のよい」という印象。人間関係⁽上下の⁾を背景とする「よい」だ。

 しつこく言うと、角川の類語新辞典で、語彙分類体系表の「良否」のカテゴリーである172番に掲げられている語を見たが、「令」は無い。「令(よい)」は通常の「いい」とは別の概念であろう。更にいうと、通常の良否では、良否、長短、好悪などの反対語があるが、「令(よい)」の反対語は無さそうだ。

3) 漢和辞典に出ている「令」の意味に、「しむ」(使役)がある。その意味では「令和」は「和(なご)ましむ」とも読める。命令の「令」も合せると、押し付けられた和を連想させられる。真面目に考えて、民主主義の理念に反すると思う。

4) 冒頭に述べたが、「れいわ」の響きは新しく、すがすがしくていい。「令」ではなく、「麗」などだったらよかったと思う。ただし、a)画数が多い(15画以内との条件もあったよう)、b)もっともらしい出典が見つからない、など問題点がある。

5) 安倍首相談話では、「この「令和」には、人々が美しく心を寄せ合う中で、文化が生まれ育つ、という意味が込められております」とあるが、私には理解できない。「麗和」でも似たような解釈ができそうだ。

https://www.kantei.go.jp/jp/headline/singengou/singengou_sentei.html (官邸ウェブページ)

6) 新元号にまつわる諸悪の根源は、それまでも今も、他で使われていない言葉を創り出さなければいけないという条件だ。新しさは、ポイントの1つぐらいに考えて検討したらどうか。そのことも含め、現在の秘密主義での審議は不適切だと思う。

7) 参考までに、本ブログでも、2016年8月14日に、元号について私見を述べた(「天皇生前退位(その2)の第2項(改元への期待)」)。私見の中で実現したのは、中国語の文献を出典としないことだけだ。これは国粋主義からではない。中国に(次いで韓国にも)馬鹿にされるのが嫌だからだ(これも国粋主義の1つか)。