電子書籍

 最近電子書籍を買って読むことが多い。理由は、a)入手が早い、b)若干安い(ことが多い)、c)多くの本を持ち運ぶのに便利、保管スペースが不要、d)検索可能等便利なツールがある、などだ。それから、家で老犬の側にいなければということが多くなり、本屋にのんびり行くことがしにくくなっていることもある。もちろん紙の書籍の方が便利なところが多い。a)書き込みがしやすい、b)ぱらぱらとページをめくって目的のページを探すなどしやすい、などだ。
 以下、1)私の電子書籍の使いかた、2)一般の電子書籍の説明、3)電子書籍と 他の本の購入方法との比較、4)電子書籍の今後への期待について述べる。
1) 私の電子書籍の使い方
 私は7インチ・タブレットを昨年春に買ったので、後述の専用リーダーは持っていない。専用リーダーは、軽くてバッテリーが長持ちするというのは魅力的だ。しかし、何時も電子書籍を読んでいる訳ではないので、更に投資するには躊躇する。
 パソコン上で読むことも可能だが殆ど用いない。もっぱら前述のタブレットに加えスマホだ。後述の電子書籍ストアに応じた専用アプリ(無料)をインストールして読んでいる。1冊購入するとタブレットでもスマホでもパソコンでも読める(これらを一般に「読書端末」と言い、読める台数には3台ないし5台等の制限はある)。素晴らしいのは、どこまで読んだかがクラウドに登録され、外出時に別の読書端末で読んでも、一発で読みかけの場所から読めることだ。また、マーカー機能、メモ機能もあって、紙の本と同じに書き込める(私は若い時と違って、最近は紙の本でも書込みが多い)。
 また辞書機能や検索機能も便利だ。例えば小説で、ある脇役が既に出てきたかどうかが気になった時も直ぐ判る。もっとも、常に登場人物をチェックするというようなしつこい読み方を何時もしている訳ではない。
 パソコンではあまり読まないということは、外出中にしか読まないということではない。家の中でも、ソファー上とか寝そべってとか、テレビを見ながらでも、タブレットスマホで読んでいる。ベッドの中で読めるのもいい。紙の本だとスタンドを付けなければ読めないので、隣の家人の睡眠の邪魔になる。タブレットスマホだと、場合によっては布団の中に潜り込んでも読める。昔、本をベッドで読むために、本に取り付けられる小さな懐中電灯もどき(確かクリップライトという名称)を買った。しかし、小さいといえども寝転んで読むには重いし、光が周りに拡がって叱られるし、使わなくなった。
 電子書籍のストアとアプリとは今のところ次の2種を使っている。詳細は後述。
〇 Book Live! (所有の東芝レグザ・タブレットの標準アプリ)
〇 AmazonKindle (Amazon会員からの流れで)
 これで電子書籍しか読まなくなったということではなく、私は紙の本も買う。買い分けについては、後の3)で述べる。

2) 電子書籍の概要
 電子書籍一般を説明する場合、書籍を提供する「書籍ストア」とそれを読む「読書端末」との関係を認識することが必要で少しややこしい。「読書端末」には、各「書籍ストア」に対応した「専用リーダー」と、どの「書籍ストア」にも対応できる「汎用タブレット」(実は通常のタブレットPC)の2種類がある。「汎用タブレット」で読めるものは、実はスマホでも、多くの場合パソコンでも読める(後述)。「専用リーダー」と「汎用タブレット」は、似たようなサイズと大きさであるから「読書端末」の代表的な2つのタイプと考えられている訳だ。以下、「500円でわかる電子書籍」(学研パブリシング、2013年4月発行、紙の書籍)を参考にして、例を幾つか紹介する。
 第1に、「書籍ストア」の(世界的)代表例はAmazon Kindleストアだ。紙の書籍と併せて電子書籍を販売し、Kindleという「専用リーダー」(Kindle Fire他各種ある)がある。Kindleは2007年米国で発表され、昨2012年10月に日本向けのKindleストアが開設され、日本語書籍も急速に充実している。Kindleストアの電子書籍は、この「専用リーダー」の他に、タブレット(iPadAndroid)とスマホ(iPhoneiPod touchAndroid)向けに「Kindle無料アプリ」が提供され、それをインストールすれば、専用リーダーとほぼ同じ要領で読める。書籍ストアとしては、「Kindleストア」の他、紙の書籍の通信販売が主体の「Amazonストア」でも、電子書籍版があれば、(紙の)書籍の説明欄にその旨記載されている。大体1割から2割安い。Kindleの場合、パソコン向けのアプリ(ソフトというべきか)は何故か提供されていない。
 第2の例は、日本で最大手の書籍ストアと言われている「BookLive!」(以下、ブックライブ)だ。凸版印刷を母体とし、PCメーカーでは東芝日本電気が参加しており、16万冊という国内随一のタイトル数とのこと。専ら汎用タブレットスマホで、ブックライブ専用アプリをインストールし(無料)、ブックライブ・ストアにアクセスして書籍を購入してダウンロードする。Kindleとは異なり、パソコン向けの専用ソフトもある。専用リーダーは無いと思っていたら、「ブックライブ Reader Lideo」というのが販売されていることを今回知った。
 この書籍ストア、専用リーダー、汎用タブレット用アプリの系列は多く、競争が激しい。第3の例は、楽天が主導している「koboイーブックストア」で、専用リーダーは「kobo glo」、汎用タブレットスマホ向けは、Android 用アプリ(iPad向けは無い模様)だ。
 専用リーダーは大半が、特定の書籍ストアに対応したものだが、第4の例として珍しく2つのストアに対応しているのが、ソニーの専用リーダー「Reader PRS-T2」だ。ストアは「ソニーReader Store」と「紀伊国屋書店Kinoppy」。汎用タブレット向けアプリもあり、ソニーのストアはAndroidだけ、紀伊国屋のストアはAndroidiPadと両者向けを提供している。
 第5の例は、専用リーダーが無くもっぱら汎用タブレットスマホ向けのストアだ。「honto」(丸善ジュンク堂文教堂など)、「電子文庫パブリ」(講談社小学館集英社など)がある。後者の「パブリ」の設立は2000年9月と古く、スマホの前の携帯電話向けに電子書籍を提供していて、私としても懐かしい*1。しかし、現在は他のストアに押されているようだ。
 改めて説明すると、どのストアでも、一旦書籍を購入すれば、汎用タブレットスマホの何れでも(多くはパソコンでも。多分専用リーダーでも。台数の制限はある)読め、かつ同期(読み進んだ場所の記録、マーカー、メモ等の記録)ができる。注意すべきことは、電子書籍で一般的な「リフロー型」の場合、読書端末のサイズや読者の好み(字の大きさ、行間隔等)に応じて1ページ当りの字数が異なることから、読んでいる場所はページ数ではなく、パーセントでしか表示されないことだ。場所も含めて引用する場合には注意が必要だ。これに対し「フィックス型」と呼ばれるものはページのレイアウトが固定されているのでページ数の概念がある。絵、写真の多い雑誌などの場合に採用されており、ページ内を移動したり、画面をズームアップして読むことになる。
 専用リーダーが汎用タブレットに対して有する利点は、a)安価、b)軽い*2、c)バッテリーが長持ちすることであろう。汎用タブレットの場合精々10時間程度しか持たないのに対し、1か月間程度はざらなようだ。
(雑誌のオンライン・ストア)
 このような本来的な電子書籍のほか、雑誌の場合、タブレット、パソコンを対象にしたストアがある。「電子雑誌向け比較サイト」 http://www.digital-zasshi.jp/service-hikaku/ というサイトもある。私は、最近たまたま見つけた 「Fujisanhttp://www.fujisan.co.jp/ を利用することがある。「雑誌2000冊以上が読み放題!! タダ読み」(http://www.fujisan.co.jp/signup/tadayomi/use)との触れ込みに釣られたが、タダ読みは、古いバックナンバーのものだけの場合が多く、余り大きな期待を持たない方がいい。また、電子版や紙版の雑誌の定期購読が多い。それにしても少し安価に買え、バックナンバーも入手でき、便利な場合がある。
 雑誌の電子版は「フィックス型」が一般で、絵、写真が入ったレイアウトをそのまま楽しめる。
 雑誌のオンライン販売は、通常の電子書籍ストアでも行っている。不思議なのは文藝春秋で、例えばAmazonでは、紙版が840円、Kindle版が1000円と、電子版の方が高い(2013年8月号)。これは昨2012年の発売開始以来で、紙の本より高い価格設定の理由については、http://www.j-cast.com/2012/05/15131801.html?p=all で解説されているが、腑に落ちない。
3) 本の買い方の選択肢
 私は今でも紙の本の方をよく読む。本(紙、電子)の買い方(読み方)の選択肢は、a)近所ないし都心の(大きな)書店、b)Amazonでの通信販売、c)電子書籍、d)ブックオフなどの中古本販売店、e)図書館、と昔から見ると多彩に、かつそれぞれ便利になっている。
 便利になった例として、公営の図書館(私の場合世田谷区立図書館)の開館時間は、原則午後7時まで、土日祭日も開いている。2-3年前からインターネットでも予約ができるようになった。世田谷区立図書館全15館から探し、希望する図書館に配送してくれる。借出しが可能になるとメールで通知が来る。この1年間でも運用が改善されたことがある。シリーズものを予約する場合、巻数順に準備してくれるというオプションができたことだ(予約本の確保の通知以降1週間内に受け取る必要がある)。1年半ほど前、私は全6巻の小説の第2巻から6巻までを1度に予約したところ、後の方から確保できたとの連絡が来て困ったことがあった。図書館の受付でも理解してくれたが、やりくりは面倒だったらしい。
 閑話休題。私の買い方の選択基準は、重要度(関心度)、緊急度、自分の暇度、価格、保存する可能性等だ。理想は、ゆっくり時間をかけて書店内をうろついて紙の本を選ぶことだ。しかし、理想通りには行かない。以下、価格と緊急度について補足する。
 電子書籍の利点の1つは価格だ(ただし、安くない場合もある)。新刊本に比して大体1割から2割安い。時にキャンペーンをやっていて、例えばKindleは、月替わりセールとして50タイトルの本を4割引きで販売している。もちろん価格の点でいえば、一番いいのは図書館の無料だ(ただし書込みはできない)。次はブックオフAmazon の紙の書籍の中古本だ。Amazonの中古本には100円程度のもの(送料250円がプラスされるが)もあって嬉しい(体裁が、良い、非常に良いとされているのしか買わないが)。図書館の本は若干汚れているのでカバーをかけて読むことが多い。
 緊急度の点は、電子書籍の登場で格段に改善した。このブログ執筆のための調査資料として、電子版を購入した時もある。真夜中でも注文してその場で読めるのは感激だ。私は、以前のある手続上のミスで、知らない間にAmazonのプライム会員となっていた(年額3900円)。お急ぎ便でも送料無料(通常350円)などのメリットがあるが、ややもったいないと思っていた。しかし、毎年自動更新となっていて、止めるのが面倒くさく、期限を忘れたと自分を納得させて何年か続けてきた。今後は電子版を利用することができるので、今月に期限到来のプライム会員自動更新の手続きを数か月前に止めることとし、今度こそ脱退する積りだ。
4) 期待
 電子書籍への期待を3つ述べる。
a) 多量にかつ安価に
 電子書籍は、米国に比して普及が遅れていたが、近年出版社、書店側の関心も高まり、タイトル数が増えてきた。誠に結構なことでこの傾向が更に加速することを期待している。その中で、電子版の価格はもっと安くならないかと思う。紙の本に比して、一覧性、ページのあちこちをめくる際の容易さ等に難がある(例えば、離れたページにあるグラフ、イラスト等を何度も参照しつつ本文を読むのは非常に不便)。それを同じ価格にするのは不当だと思う。それに実際のコストも紙の本ほどはかからない筈だ。
b) 紙と電子書籍との複合販売
 電子書籍は読みづらいが、検索機能、辞書機能は素晴らしい。紙の書籍と電子書籍の両者を揃えたい場合があろう。その場合電子版が無料とか大幅割引というサービスを導入してもらえないかと思う。現在でも新聞には、宅配版と電子版の両者を利用する場合に大幅割引制度がある。
c) 部分コピーを可能に
 私の利用している電子書籍は、文章のコピーができないし、他も同じだと思う。著作権を意識しての制限であろうが、止めてほしい。友人への紹介、ブログ等への引用の場合に、著作権法も認めている「正当な引用」(詳細は省略するが、目的上正当な範囲、引用部分の明示、本文との主従関係があること、出所の明示)が可能な部分コピーを認めるべきであると思う*3。著作物は利用されてこそその価値があり、それが人類の文化の発展に資するとの観点をもっと理解してほしいと考える。

*1:biblio」という東芝auの「電子書籍用携帯」との触れ込みの携帯(スマホではない)を2009年から暫く持っていて、「パブリ」ストアから10数冊買って通勤電車内で読んでいた。

*2:例えば、ブックライブのLideoは170グラム、私の7インチ・タブレットは380グラム。上着のポケットに入れていると、そのうちポケットの底が抜けるような気がするので、上着の外からタブレットを支えて歩いている。

*3:弊ブログ「著作物の無許諾引用について」 id:oginos:20110306 中「2) 引用についての一般的な解説」を参照