株式売却益

 3月15日の確定申告日(今年は土曜のため3月17日)の前だが、2月に入ると早々と電子申告で確定申告をした。今年の申告は、昨年3月までの給与所得の源泉徴収額の一部を還付請求することが主で、株の売却損の損益通算が従であった。無事受け付けられたようで、明17日(月)に銀行口座に振り込まれるとの連絡があった。本稿では、この株の譲渡に関して勘違いをしていたのでそのことと、今年以降の課題として分離課税から総合課税へという話を紹介する。
(株の売却)
 さる12月の半ばになって突然気が付いたのは、株式売却益に関する分離課税の税率が、2013年12月までは10%だが、2014年1月から本来の20%になることだ。*1 従って、売却益が出るものなら、12月中に売却するのと1月以降に売却するのとでは、税額が倍違う。
 私は退職後、年金収入の補填のため資産の切り売り生活を余儀なくされている。この一環として、今回は数年前の相続で譲られた株(取得価額は低い)の一部を売却することにした。年内(12月30日(月)まで)に株式の引渡しが終了していることが条件で、売買約定は12月25日(水)までに済ませねばならない。ネット・トレーディングにより、刻一刻の価格別の売買気配を見ながら売った(東証の旧2部市場上場株なので取引量は少ない)。
 この値上り株の売却の一方、たとえ半額でも納税するのがもったいない、値下り株の売却損を通算すれば納税額が減らせることに気が付いた。値下り株といえば、2008年9月のリーマンショックの直前の7月に765円で買った「東芝」が、値下りが続いていて嫌になっていたのでそれを売ることにした。それで慌てて同じように12月末に424円で売った。何れも大した株数ではないが、売却益は少し減り、うまくやったような気がしていた。
 しかし、年が明けて確定申告の作業をしていて気が付いたが、どうも間違ったようだ。売却損の申告で減額できる税額は、今年になると倍額になる。年が明けてから売るべきだった。正しくは、値上り株はできるだけ2013年中に、値下り株は2014年に、それぞれ売却だ。判断を間違ってがっかりした。
(分離課税から総合課税へ)
 これに関連して話は変るが、分離課税率が20%(復興特別税の加算分の話は適宜省略)になると、分離課税よりも総合課税を申告した方が有利になることに気が付いた。すなわち、所得税の総合課税の税率は累進税率で、課税所得が195万円以下は5%、195万を超える分は10%、更に330万円を超える分は20%などと累進的に高くなる。住民税は一律に10%(均等割の4,000円もあるが省略)だから、所得税と住民税との合計は、課税所得195万円以下は15%、それを超える部分は20%ないしそれ以上となる。
 自分の低所得をカミングアウトするようで躊躇するが、年金生活者たる私の具体例に基づいて説明しよう。私の昨年の公的年金収入は318万円だ。年金収入が330万円以下の場合の控除額は120万円(65歳以上)だから年金所得は198万円。基礎控除38万円を引けば、年金所得だけを考えた総合課税の所得金額は、高々160万円(実際は、その他社会保険料控除などがあってもっと少なくなる)となる。
 株の売却益を加えても、課税所得195万円以下の部分は、総合課税の15%の方が分離課税の20%より有利だ。195万円を超えても、330万円までの場合は、総合課税の方が僅かだが有利だ。何故なら、復興特別税の2.1%の元の所得税率が総合課税の場合10%で、分離課税の場合の15%より小さく、復興特別税額が少なくなるからだ。
 以上は株の売却の話だが、1月26日付け日本経済新聞の記事「投資の損を節税の味方に 確定申告活用のススメ」には、配当についても20%の分離課税ではなく、総合課税の方が有利であると紹介されていた。 http://www.nikkei.com/money/investment/mandi.aspx?g=DGXZZO6562320021012014000000 (多分、日経会員専用のページなので、一般には見ることができないだろう)
 すなわち、課税所得金額が330万円超695万円以下の場合(所得税率は20%で住民税と合せた税率は30%)であっても、総合課税で申告すれば所得税については10%、住民税については2.8%の配当控除があるので、実際は計17.2%の税率となるからだ。
 以上の話は、所得の高い人たちには適用されない。分離課税が断然有利だ。我ながらみみっちい話をしていて恥かしい。税金を沢山(今よりも)払っていた時代がつくづく懐かしい。
 なお、上記の日経新聞の記事のメインは、そのタイトルにもあるように、株の売却損があれば確定申告をして翌年以降に繰り越して損益通算ができることの説明だ。3月17日の確定申告の期限までにまだ日がある。該当する売却損がある人は、今からでも確定申告をされたら如何だろうか。

*1:正確に言うと、所得税7%、住民税3%から、所得税15%、住民税5%。更に細かく言うと、2013年から25年間は、所得税については、東日本大震災に係る復興特別税(基準所得税額の2.1%)が加算される。従って、上記の7%は7.147%、15%は15.315%となる。なお、住民税には復興特別税の加算はない。