糖質制限食に挑戦

 7月下旬から、糖尿病対策として「糖質制限食」なる新しい試みを始めた。約40日間弱続けた経過と成果、感想を紹介する。約9,500字と長いので、目次をつける。各章節にリンクを張ろうと調べてみたが、はてなダイアリーでは簡単にはできないようなので、断念。
1) (先ずイントロダクトリーに) 糖質制限食とは
2) 始めた経緯
3) 糖質制限食の実践 (糖質制限の量的基準、先ずはスタート、糖質ゼロのビール、糖質制限食の宅配、低血糖症対策)
4) 学界での論争 (参考・コレステロール論争、参考文献)
5) 結果

1) 糖質制限食とは
 糖尿病治療の鍵の1つである従来の食事療法のポイントは、「摂取総カロリーの制限」で、患者の体重、病態等により異なるが、例えば1日当り1800キロカロリー(kcal)と医師から指示を受ける。その総カロリーの中で、a)糖質(ほぼ炭水化物*1 )、b)タンパク質、c)脂質(ほぼ脂肪)、d)その他野菜等をバランスよく取ることが求められる。目的は血糖値(又は、その代替値であるヘモグロビンA1c)を抑えることである。
 これに対し、新しい「糖質制限食」は、糖質の摂取量さえ抑えれば、摂取カロリーの制限は無く、いくら食べてもいいとする。理論的背景は、近年の研究により、食後の血糖の上昇は糖質だけに依存し、タンパク質と脂質は関係しないことが判明したからだという。食後の血糖上昇は、インスリン分泌という膵臓への負担と血管壁への長期的影響がある。これを抑えるための従来のインスリン注射ないしインスリン分泌誘発薬は、血糖値の乱高下により膵臓への負担や低血糖症を誘発する恐れがあるとする。従って、糖質摂取量を制限して、血糖値の乱高下を抑えるべきという(以上は私の理解)。これについては、また後で触れる。
2) 始めた経緯
 かねてこのブログでも何回か紹介しているように*2、私は、1989年に人間ドックで発見(?)されて以来、四半世紀以上にわたる糖尿病患者だ。この間、インスリン注射はせずに投薬治療を続け、血糖値の上下に一喜一憂してきた。この数年ほどは、近くの糖尿病専門医の看板を掲げている町医者に定期的(1-2か月に1度程度)に通い、大体お褒めの言葉をもらっている。たまに血糖値(ヘモグロビンA1c)が悪化しても、「荻布さんなら努力できるから、次までに結果を出せるでしょう」と信頼が厚かった。
 ところが、7/24の定例の検診で、ヘモグロビンA1c値が7.5にまた上昇した*3。医師は、「前年まで普通だった6台に、今年になって下らなくなっているので少し心配だ」と言う。実は今春2-3月に上昇した(7.7ぐらい)時は、仕事が年度末で忙しかったからと思っていた。しかし暇になっても下らない。医師は、次回もこの調子なら薬を強くすることも検討すると言い出した。
 私は、薬を強くするということは、そのこと自体の弊害もさることながら、食事や生活一般への規制もよりうるさく言われることになりそうなので、避けたいと思った。自分の生活は、自分で体調を判断しつつ可能な限り自分でコントロールしていきたいと考えているからだ。アルコールも自分で判断しつつ飲んでいきたい。それで、1-2か月前に買って積読していた次の本、桐山秀樹「糖尿病治療の深い闇‐糖質制限食はなぜ異端視されてきたのか」(2011年)を読み始めた。
 この本は、ジャーナリストである著者が自分の糖尿病体験に基づき、日本の医学界では相当異端視されている「糖質制限食」を実践した結果、それを絶賛している本だ。
 それで、読み始めてある程度納得し、7/27(たまたま息子家族と一緒に出掛けた北海道旅行の2日目)から実践し始めた。というのは、旅行中の食事はビュッフェが多いので、糖質以外のものの種類が多く、糖質を容易に抜けると考えたからだ。一緒の家族は唖然としていたが、昼に札幌ラーメン店に行っても、具だけ食べて麺は残したりしていた。

3) 糖質制限食の実践
(糖質制限の量的基準)
 糖質制限食は、ご飯、パン、うどん、パスタなどの糖質(ほぼ炭水化物)を食べない、その代り、カロリー制限は無く、肉、魚(タンパク質)、脂肪類(脂質)はいくら食べてもいい。従ってカロリー制限食よりも守りやすい、との触れ込みだ。アルコールも、日本酒、ビールなどの醸造酒は駄目だが、ウィスキー、焼酎などの蒸留酒はいい。赤ワインは醸造酒だが何故か許される。私は、この蒸留酒であればアルコールは自由に飲んでいい、肉、魚は食べ放題というのに(強く)心惹かれた。
 糖質制限食の場合、1日当り糖質の量は120-130g以下だが、望ましくは30gから80gだという。これがどのくらいの量かということを、厚生労働省が5年ごとに改訂している「日本人の食事摂取基準(2015年版)」(2014/3/28)を参考に見てみよう。同基準は複雑で、先ず年齢別、性別、活動レベル別に、1日当り推定エネルギー必要量を設定し、次いでそのエネルギー量の中での比率として炭水化物摂取の目標量を設定している*4。50-69歳、活動レベル普通、の人の推定エネルギー必要量は、男性2,450kcal/日、女性1,900 kcal/日だ。炭水化物の摂取目標量は、上述の通り%エネルギー(総エネルギー量の中での比率の意)で設定されていて、50-69歳で男女共通50-65%だ。
 これから炭水化物摂取目標量は、50-69歳、活動レベル普通、の人で、男性1,225-1,593kcal/日、女性950-1,235kcal/日だ。中学で習った、1g当り炭水化物のエネルギー量4kcal*5で換算し中間値を取ると、炭水化物(糖質)摂取目標値は、概算して男性350g/日、女性270g/日となる。
 私の持つ別の資料によれば、ご飯1杯は150gでうち糖質56g、エネルギー量250kcal(糖質以外のタンパク質等を含むので、カロリーは4kcal/糖質1gより高くなる)だ。6枚切りの食パン1枚は、60gでうち糖質28g、エネルギー量158kcalだ。上述の30-60g/日という糖質制限食の目標の厳しさが理解できると思う。
(先ずはスタート)
 糖質制限食を開始するに当っては、a)100数十g/日程度から始めて順次下げていく、b)最初から厳しく10g程度から始める、c)それらの中間があるという。低糖質体質に早期に切り替えるためには、最初から厳しくするのを推奨するとあるので、b)から始め、高くても20-30g/日以下を目指すこととした。
 糖質制限を始めて直ぐ気が付いたが、世の中、糖質が氾濫しており、これを絶つというのは、総摂取カロリー制限並みの努力が必要だ。ご飯、パンの他、ラーメン、そば、うどん、スパゲッテイが駄目だ。フルーツ、菓子、ケーキ、ポテトチップも駄目。チョコレート自体はいいが普通のチョコレートは砂糖を多く混ぜている。明治の「チョコレート効果」にカカオ95%というのがあり数か月前に食べてみたが、とても苦かった(今は時々食べる)。おやつ代わりに口に入れていいのが、アーモンドや、大豆、ミニチーズだが、寂しい。
 外食も苦しい。ラーメン屋、そば屋、イタリアン(昼はパスタとピザばかり)、インド料理(昼はカレーとライス又はナン)は駄目だ。ハンバーガー、牛丼、駅の立食いソバなどのファーストフードもパンとご飯だから駄目。従って、和洋華の定食からご飯、パンを除いたものを注文する。今まで昼で忙しい時は、ファーストフードやコンビニのおにぎり、サンドイッチなどを買っていたが、駄目だ。
 今回のことで、スーパー、コンビニで食品のパックに書かれている栄養成分表示を随分熟読するようになった。一般にこの成分表示は丁寧に書かれている。生産者、販売者は大変だろうと思うが、糖質制限者には有難い。細かいことを言うと、炭水化物(a)、糖質(b)、食物繊維(c)の表現が混在しているのは若干困る。上述の通り、a=b+cだ。aとc、bとcが併記してある場合は、加減算をすれば各成分の量が判るが、aしか書いてない場合があって、その場合知りたいbの量が判らない。
 糖質を食さずに半月ほど経つと慣れてはきたが、エネルギー不足か力が入らず、時々ぼうっとするような気がする。朝食は従来食パンとコーヒーだったが、パンの替りにエネルギー補給のため、オムレツやチーズ、納豆、肉などを炒めて食べることとした。卵は目玉やスクランブルでなく、もっぱらオムレツに挑戦している。外側が焼けて中身がとろとろしている段階で、具を入れ、半分をかぶせてひっくり返そうとしているが、なかなかうまく行かない。早く、トンと一発でひっくり返せるようになりたいものだ。
(糖質ゼロのビール)
 私の好きなビールは醸造酒だから元来アウトだが、発泡酒の中に、糖質ゼロというのがある。かねて糖質ゼロ、プリン体ゼロなどは試飲しても美味しくないと思っていた。改めて私のビール類(発泡酒を含む)の評価基準の1つを思い起こすと、「ビールの味はアルコール度数に比例する」という理論がある。糖質ゼロのビールは、大体アルコール度数が3-5%程度で低いが、改めてスーパーでよく探してみると、6%のものが2つあった。
a) アサヒ「クリアアサヒ」 (糖質0、エネルギー39kcal/100ml、アルコール分6.0%、缶に、大きく「本格ゼロ」の記載がある)、
b) アサヒ「スタイルフリー」 (プリン体0.00、糖質0、エネルギー36kcal/100ml、アルコール分6.0%、缶の色が青調で、「のどごし爽快Alc.6%」のマークがある)、
 他の3-5%の糖質ゼロと飲み比べた結果、a)クリアアサヒの6%は、かねて愛飲している第3のビールと比べても大きくは劣らない、我慢できると感じた。一方のb)プリン体ゼロのスタイルフリーは6%だが、少し違和感を感じた(表現が難しいが、薬臭がある)。
 この糖質ゼロというのは割に大きくて、例えば手許の冷蔵庫に入っている発泡酒の糖質は3.2g/100mlとある。350ml缶だと11.2gになる*6。1日当り20-30gなどという極端な糖質制限をしようとすると非常に厳しい。不味くない糖質ゼロのビールは有難い。あと、焼酎とウィスキーという蒸留酒と赤ワインが飲める。
(糖質制限食の宅配)
 通常のダイエット食ではカロリーの無い野菜などが重要だが、糖質制限食では、野菜などもさることながら、糖質の替りのエネルギー補給のためタンパク質と脂質を大量にということがポイントだ。家人は、私が皿に並べる食物はタンパク質と脂肪が過剰で気持ち悪いという。標準的な制限食は違うのではないかという家人の勧めで、糖質制限食の宅配を頼むことにした。
 幾つかあったが*7、「小樽ダイニング」(http://www.ofk-jp.com/ )に頼んだ。これがなかなか良くて、1食ごとないし単品ごとに注文できる。従来の糖尿病患者向けのカロリー制限食の宅配の場合、1日単位(2食又は3食)で何週間分というのが普通のパターンだ。1日の総摂取カロリーを管理する訳だから考えれば当然だ。宅配されたもの以外は食べてはいけない。
 糖質制限食の場合、同定が割に容易な糖質系食品の量を抑えれば、他のタンパク質、脂質、アルコール(醸造酒を除く)は無制限だから、1食単位、個別の食品単位の注文も意味がある(まとめないと送料がかかるのは当然)。注文すると冷凍パックで送られ、適宜解凍して食する。
 小樽ダイニングの糖質制限食の中には、ご飯もどき、パンもどき、うどんもどきなどがある。これらの材料は豆腐、おから、大豆などでタンパク質だ。これらが栄養面でより有効という訳でなく、ご飯、麺類等が懐かしい人向けだから、他にエネルギー源を補給すれば食べなくていい(私の理解)。ご飯などに比して味が劣るが、味音痴の私は結構美味しいと思った。洋菓子、ケーキなどがあるのにも感激。シュークリーム、エクレアなどを注文した。生クリーム自体は糖質が無いが、普通は砂糖を入れる。その代りに人工甘味料だが、久しぶりにシュークリームを食べて幸せになった。
(低血糖症対策)
 2)経緯の中で述べたとおり、7月末の北海道への家族旅行の時にビュッフェ食が多いからと、突然開始した。実はきっかけの「糖尿病治療の深い闇」は、往きの飛行機の中では全部読んでいなかった。帰京してから読み終わったのだが、最後の方に、糖質制限食導入の際の注意事項が書いてあった。その1つに、血糖値降下剤を服用している際には、低血糖症に注意する必要があり、医師と相談した方がいい場合があると書いてある。
 私はまさに血糖値降下剤の長年の服用者だから、この部分をもし先に読んでいれば、こんなに直ぐには始めず、多分いろいろ悩んでいたと思う。というのは、いろいろ議論のある食事療法だから、私の医師が了解してくれるか判らず、また次回の検診が9/4で先が長いからだ。結局最初の数日間のトライアルでも低血糖症の症状や他に不都合が無いことから、当面次回検診日までを目標にして続けることにした。
 糖質を制限することから血液中の糖分(血糖)は上昇しないはず、ということは血糖値降下剤も不要と推論でき、服用を続けるとむしろ低血糖の可能性があると予想できる。しかし、医師に相談せずに薬を止めるのは勇気がいるし、次回検診で血糖値が下った結果を見せたいということで、薬の服用も続けることとした。これは低血糖症が生ずる危険があるので、念のため、かねて薬局がくれていた低血糖症対策のブドウ糖を毎日携行することとした。
 これで、約40日間ほぼ20-30g/日程度以下の糖質摂取量で過した。結果は後ほど。

4) 学界での論争
 糖質制限食に関する学界での論争は激しい。素人の私としても、血糖になる唯一の成分と言われる(従来は別)糖質を制限するので血糖値は下がるというのは理解できるにしても、高タンパク、高脂質の食事でいいのか、3大栄養素とかねて教育されてきた糖質を摂取しなくて本当に大丈夫かという疑問がある。日本の糖尿病学会は、後述するが「現時点では勧められない」とコメントしている。これが守旧派だとすると、糖質制限派の教祖は、江部康二医師で、2001年ごろから糖質制限食による糖尿病治療の実践に取り組んでおられる。江部医師の著書「江部先生、「糖質制限は危ない」って本当ですか?」(2015/4)を読んだが、高タンパク、高脂質についてはその心配は少ないと一応説明してある。
 後に私の読んだ参考文献をリストアップしているが、こういう類の本をいろいろ読んでいると、いろいろな人がいろいろなことを書いているということが改めてよく判る。例えば、アメリカの糖尿病学会は2004年に、タンパク質と脂質は血糖値を上昇させないと発表しているのに、日本の糖尿病学会は無視しているらしい。どちらが正しいか判らないので、私が論争内容を説明するのは避けたい。実績もあるし、糖尿病学会も長期的には疑念があると言っているだけだから、自分で確かめたいと考えている。
 このような学界内の論争は、よく判らない。だが、最近になって食事療法がドラスチックに変更された例があるので、若干余談だが次にそれを紹介する。
(参考:コレステロール論争)
 糖質病に若干関係する話題として、糖尿病と並ぶ生活習慣病動脈硬化に密接に関係すると言われてきたコレステロール摂取の基準が、最近変更されたことを紹介する。
 上述した「日本人の食事摂取基準(2015年版)」(2014/3/28)では、脂質のうちコレステロールに関する基準が無い。すなわちコレステロールを含むと言われるイクラなどでも幾ら食べてもいい。ところが、5年前の2010年版(5年ごとに改定されているので、直前版)では、コレステロール摂取について、男性750mg未満/日、女性600mg未満/日と明記してある*8
 このようにドラスチックに改訂された背景は、別の資料で読んだが、「血液中のコレステロールの70-80%は体内で合成されるので、食物として摂取するコレステロールとは関係が無い、仮にコレステロール摂取量が増えても体内合成量は減少する」との研究成果によるものという。
 これは食物からの摂取量に関するもので一応決着がついて、政府の基準も変更された。しかし、驚くべきことに、血液中コレステロール濃度自体(従来、これが血管壁にこびりつくと言われてきた)の評価について、現在でも学会間で意見が対立している。すなわち、日本動脈硬化学会は、血液中コレステロール*9は低ければ低いほどいい、それの上限値を定めて治療すべきとの立場だ。これに対し、日本脂質栄養学会(http://jsln.umin.jp/topics.html )は、2010年以来、高コレステロール値は長寿の指標で、コレステロール値(LDL)を下げる治療は弊害があり、総死亡を高めると主張してきた。
 この両学会の論争は現在でも続いており、昨2014年8月には、日本脂質栄養学会から動脈硬化学会への提言(内容は反論)が公開されている。ざっと読むと、2013年に、米国の心臓病学会、心臓病協会等が共同で、数十年来の従来の立場を変え、コレステロール値について低ければ低いという考えを放棄したという。日本でも、日本人間ドック学会と健保組合連合会が2014年にLDLコレステロール基準範囲を公表したが、この範囲は、動脈硬化学会の上限値を含む広範囲のもの(すなわち動脈硬化学会の見解を否定)だという。
 なぜ、学界内で意見が異なるのか。訳知りの説明は、製薬企業と結びついた守旧派が従来の収益体制を維持しようとするものだという。私は、そういう面もあるかも知れないが、本当は人体の仕組、生理の機構が殆ど(言い過ぎか)判っていないからだと思う。新しい理論も、コンベンショナルな理論への反例は言えるが、人体の機構が解らない以上、決定的な治療策を説得的に提示できない。そうなると、大多数の多忙な医師は、従来の理論に従う方が安全だと考える。学会というのはそのような医師のためにあるのかと思う。
(参考文献)
 本文中にも出てきて重複するが、私が最近この関係で読んだ本を列挙する。
○ 桐山秀樹「糖尿病治療の深い闇‐糖質制限食はなぜ異端視されてきたのか」(東洋経済新報社、2011年)
 本文中でも紹介。医者に血糖値の上昇を注意されて、7月の旅行直前から読み始めた本。
○ 江部康二 「江部先生、「糖質制限は危ない」って本当ですか?」(洋泉社、2015/4 初版発行)
 本文中でも紹介。江部医師とは、上記の「糖尿病理療の深い闇」が全面的に依拠している医師で、2001年ごろから糖質制限食による糖尿病治療の実践に取り組んでいる人だ。今までもいろいろ本も書き、啓発活動もされているのでいろいろ反発が多く、それへの再反論をまとめた本だ。
○ 日本糖尿病学会編 「(患者さんとその家族のための)糖尿病治療の手びき」(日本糖尿病協会・南江堂、2014/6 改訂第56版)
 守旧派の見解も読んでみようとの考えて買った糖尿病学会の本。この「手びき」では、糖質制限について次のように書かれている。「勧められない」と書いてあると、普通の医師はそれに従うだろう。

最近話題になっている糖質制限について日本糖尿病学会では、「総エネルギー摂取量を制限せずに、炭水化物(糖質)のみを極端に制限して減量を図ることは、長期的な食事療法の安全性などがはっきりしていないことから、現時点では勧められない」とコメントしています。

○ 牧田善二・牛尾理恵 「糖質オフ! でやせるレシピ」 (成美堂出版、2015/6)
 このレシピ本は、家人にも理解してもらおうとの考えで買った。書店の料理本コーナーに行くと、糖質制限食はブームで、10種類近くあった。糖尿病治療というよりも、美容等のためのダイエットにも効果があるとのことからだ。雑誌、本やネット、テレビで、食べて痩せる画期的な方法と宣伝しているのは、中を読むと糖質制限食の話が多い。
○ 岡本卓 「薬が減らせて、血糖値にもしばられない、糖尿病最新療法2」(角川SSC新書、2012/4第2刷、2013/6電子書籍)
 今年の6月に読んでいた本で、「糖尿病治療の深い闇」はこれがきっかけで買っていた。「深い闇」を引用し評価していたが、糖質制限食については、2か月間ほどがいいかと、割に穏当だ。
○ ヒース・イーストン、トンプソン真理子 「小麦は「毒」? −小麦のグルテンがあなたの健康をむしばんでいる−」
 Amazonキンドルストアでたまたま見つけた本で、奥付がはっきりしない(出版社、発行年が不明)。あとがきの日付は2015年1月。前半は1人目の著者(多分米国人)が米国を中心に欧米の小麦の改良の歴史とその各種の害について説明する。後半は2人目の著者が、前半もカバーした日本の事情について触れ、要するに糖質制限の立場だ。
○ MYSTER-JAPAN 「炭水化物量検索アプリ カーボデータ2014」 (スマホのアプリ)
 スマホへのアプリも調べた。糖質制限食のアプリは、グーグルのプレイストアで見ると沢山ある。その中で、「炭水化物量検索アプリカーボデータ2014」をインストールした。3万食以上の糖質量、カロリー量が登録されているとある。音声認識もあるので検索しやすい。3万食というのは、例えば「納豆」を調べると、一般的な納豆のほか、各種納豆、ミツカン、おかめ納豆等銘柄別に数十品目出てくる。100g単位ばかりでなく、1人前や1パック当りの糖質、カロリーが記載されている(ただ、データが無い品目もある)。スーパーの商品には前述の通り栄養成分表示がしっかりしているが、外食などの時は助けになる。今後糖質制限量の基準を緩和する際には益々参考にすることになろう。

5) 結果
 約40日間の糖質制限食(概ね10-30g/日以下)を続けて、9/4に定例検診に行った。検査結果は、A1cが6.5(前回7.5)、食後(2.5時間後)血糖値が106mg/dl(前回165、今年の初めは200を越していたこともあった)と、赫々たる戦果(?)だ。特に食後血糖値の106は、正常人の範囲だ。正確には空腹時血糖値で109以下が正常な基準値(例えば、http://medical-checkup.info/article/44936157.html )で、今回は食後血糖値だから、空腹時はもっと低いと推定される。
 驚いた医師に聞かれて糖質制限食の話をした。やり過ぎとの評価であったが、それは体重が54kgから52kgに減っていたからだ。カロリー補給が足りなかったのだろう。今後は少し程度を緩めて行き、体重も戻そうということになった。私としては、80g/日位(120-30g以下なら、一応糖質制限と言われている)に緩和しようかと思っている。
 リバウンドが怖いと言う人もいるが、私はあまり心配していない。というのは、肉、魚に制限が無いし、また、私はグルメと言われる人たちと違って食べ物に拘りが殆どない。カミングアウトすると、他人と比して味音痴ではないかと思っている。今回の糖質制限で益々そのことを確信した。アルコールについても、糖質ゼロのビールと焼酎の水割り(この1か月間、それぞれ350ml缶1缶プラスコップ1杯が定例の晩酌)でハッピーに過ごせることが判った。
 時々は、シュークリーム、ソフトクリーム、甘いチョコレートなどを食べたいというのがささやかな望みだが、リバウンドの発端にならないよう注意しよう。

*1:炭水化物は正確には糖質と食物繊維からなる。ただ、食物繊維は小腸等で吸収されず、カロリーにはならない。

*2:例えば、2012/01/29付け弊ブログ 「ヘモグロビンA1c値の変更」 id:oginos:20120129 中 5)私の糖尿病

*3:日本糖尿病学会の「糖尿病治療ガイド2014-2015」中「3.治療の基本方針」には、「合併症予防のための血糖コントロール目標がヘモグロビンA1c値で7.0未満」とされ、これが患者の目標だ。

*4:厚生労働省の食事摂取基準の中では何故か「糖質」という語は使われず、もっぱら「炭水化物」だ。しかし、炭水化物摂取目標量がエネルギー比率で示されていることから、この「炭水化物」は食物繊維を除く「糖質」である。

*5:タンパク質は1g当り4kcal、糖質は1g当り9kcal。

*6:カロリーを気にする人のために、39kcal/100mlだから1缶当り約140kcal。

*7:糖質制限食、宅配」で検索しても、実は糖尿病患者向けの伝統的なカロリー制限食の宅配というのが多い。これは、糖質制限の考えには反するものだ。

*8:2010年版の食事摂取基準のウェブへのアップの仕方は2015年版とやや異なっていて判りにくいので、厚生労働省の講習会資料を紹介する。次のpdfの15枚目。http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/pdf/blockbetu-shiryou03.pdf 

*9:コレステロール値には、LDL(低濃度)コレステロール(いわゆる悪玉)とHDL(高濃度)コレステロール(善玉)があるが、ここでは悪玉を指す。