中国語雑稿(1人っ子政策)

 東京では(全国でもらしいが)残暑が厳しい。8月以来、来週にも秋が訪れるとの天気予報が続いていたと思うが、それが先送りされている。政治の世界での先送りを真似たようだ。
(中国の反日デモ)
 中国では、尖閣諸島日本国政府による国有化に反対するデモが、昨日(9月15日)、今日(16日)と各都市で行われ、一部暴徒化し、日本企業の被害も伝えられている。今後の日本人の被害の可能性や中期的な日中関係への深刻な影響も懸念される。尖閣諸島の国有化は、元来は石原慎太郎都知事の東京都による購入計画の発表に端を発している。日中双方における見込み違いが今回の暴動に発展したとも考えられるが、今後の対応策は悩ましい。
 ところで、石原都知事は、このように展開する可能性をどう想定していたのだろうか。まさか都が購入すれば反日デモは起らないと考えていたのだろうか。それとも中国政府や中国の社会に強硬な態度で臨めばデモは鎮静化すると考えているのだろうか。更迭される丹羽宇一郎駐中国大使*1のかつての「(東京都の尖閣諸島購入計画は)日中関係に極めて深刻な危機をもたらす」との発言が真実味を帯び出した。
 このような日中関係緊迫化の中で、暇つぶしみたいな中国語の勉強をしていると、家人から猛烈に批判される。国賊扱いだ。ここ半月ぐらいバタバタしていて、余り世の中のことをフォローしていなので、今日は中国語の話題を1つ紹介する。1人っ子政策の影響で、中国国内もなかなか大変だという話だ。
(中国語のオジ、オバ)
 先ず前置きから話すと、中国語では、親戚関係を細かく表現する。例えば、両親の兄弟姉妹(いわゆる、オジ、オバ)について、手許の中国語基本単語集では次のような呼称が挙げられている(中国語表記は簡体字もあるので省略して、私流の記号で表わす)。以下、「m」は男、「f」は女、「-」は配偶者関係を示す。例えば「mf-m」は「父の姉妹の夫」との意味。なお、実際の中国語での表現は、殆どが漢字2文字だ。
 第1に、父方では、父の兄弟について、兄(mm1)と弟(mm2)の2通り*2。その妻がそれぞれいる(mm1-f、mm2-f)ので2通り。次に、父の姉妹は1つ(mf)、その夫は1つ(mf-m)。
 第2に、母方では、母の兄弟が1つ(fm) *3、その妻が1つ(fm-f)。次に、母の姉妹が1つ(ff)、その夫が1つ(ff-m)だ。
 まとめると、「オジ」(上記の記号では末尾がm)が5通り、「オバ」(末尾がf)が5通りの計10通りになる。
 オジ、オバに対応するオイ、メイは、日本語では男女別の「甥姪」の2種類だが、中国語では兄弟の子と姉妹の子との別があって合計4種類だ。またイトコは父方系と母方系との別を示す2種類の呼称がある。
(1人っ子政策)
 本題に入ると、中国では、人口増大に対応するため、よく知られているように1979年以来1人っ子政策が講じられている。この1人っ子達は、生まれた年代に応じ、「八〇后(パーリンホウ、」(1980年以後生れとの意)、「九〇后(チョウリンホウ、」(1990年以後生れ)などと呼ばれ、その甘やかされ振りがよく話題になっている。今では1人っ子達の子供たちも生まれ、「独二代(トゥアルタイ)」(1人っ子第2世代)と呼ばれている(梁過「現代中国「解体」新書」、講談社現代新書、2011年6月1刷発行)。
 それで、1人っ子だから兄弟姉妹はいない、甥姪もいない、「独二代」に至っては、オジ、オバもいない。前述の親戚関係を表現する豊穣な単語群は無用なものとなりつつあるようだ。
 前述の梁過著では、中国の都市部で「四二一家庭」が急増しているとのことだ。すなわち、1人っ子同士が結婚し、夫婦2人で(二)、両人の両親(四)と1人っ子(一)の面倒を見るという家庭だ。中国社会における高齢化の進展は、1組の夫婦が多くの親の面倒を見る事態を生じ、更に介護の問題も出てくると若い夫婦にとって大きな負担になっているとのことだ。
 中国はその経済成長と併せ、大きな社会変革の試みを実施したが、その結果が順次現われ、一部にはこのような社会問題も発生し、若い人たち潜在的不満が蓄積しているようだ。

*1:後任の西宮伸一氏が9月11日に駐中国大使として発令され、かつ9月16日に急逝したので、丹羽氏の現時点でのタイトルをどう呼べばいいか悩ましい。

*2:日本語でも、父の兄は「伯父」、父の弟は「叔父」

*3:父の兄弟とは違い、母系の場合、その兄、弟での呼称の区別は無い。