清里は今

(清里駅前の衰退)
 猛暑の東京(全国もそう)に堪えかねて八ヶ岳に避暑に出かけた。途中で、たまたま清里を通ったがその衰退ぶりに吃驚した。正確には清里駅前地区だが、かつて(1970-80年代)「高原の原宿」として有名だったところだ。今では、閉店してシャッターを下した店が並ぶいわゆる「シャッター通り」が目立つし、昔のメルヘンチックな建物はクローズして廃墟のようだ。この変貌は既に有名な話で、知らないのは私だけかと思ったが、帰京して息子夫婦に聞いたら彼等も知らないと吃驚していた(もっと若い世代ならそもそも清里自体を知らないかも)。それで、知らない人に紹介する。
 余りの変貌ぶりにショックを受け、車から降りて写真を撮るのも忘れた。廃墟振りは、次のブログ「清里高原に残る"バブルの幻"を見に行ってきた」の写真が詳しい。
http://syouwasuper.web.fc2.com/special/kiyosato.html 
 ついでに次のブログも写真が多い。「清里ブーム覚えていますか?」 http://ameblo.jp/syonanoyaji/entry-11583542641.html
 この変貌は1990年代頃かららしいが、いろいろウェブを調べても、日本経済のバブルの崩壊がきっかけとしか書いてなく、原因がよく判らない。若干詳細な解説は、次の財務省甲府財務事務所のレポートにある。

「再生するカンティ”清里”本来の魅力」(2012年、財務省甲府財務事務所) http://kantou.mof.go.jp/content/000006886.pdf)

 (ブーム崩壊に堪えて生き延びてきた等の所もあれば) 一方で、清里駅周辺は静かなシャッター通りと化しており、現時点で目立った再生の動きはみられない状況である。
 ・・・・加えて「清里ブーム」の後遺症は、一定の年代層以上に残された「メルヘン」の負のイメージである。このイメージは地域の特性に根ざしたものではなく、外から仕掛けられた作り物や借り物であったために、例えば清里でペンションに泊まるといった行為に、今でもある種の気恥ずかしさを感じるといった声を聞く。

(清里の他の観光スポット)
 我が家は、サンメドウズ清里(冬はスキー場)、清泉寮萌木の村といった清里の観光地を車で回った。清里駅前と違い、それぞれある程度の観光客でにぎわっていた。しかし、8月の避暑シーズンであるにも拘らず大盛況というほどではなく、駐車場にも余裕があった。
(中国語、韓国語の観光案内が見られない?)
 それらの場所で私が気付いた印象は、最近の観光地に多い中国語、韓国語の表示が少ないことだった。もっとも最初からそのような眼で観察していた訳ではないので、一部見落していたかも知れない。以下、このことに関し若干私見を述べる。
(外国人観光客の人気スポット)
 日本を訪れる外国人を国別にみると、1番韓国、2番台湾、3番中国の順だ*1。 観光地で中国語、韓国語の表示が多いはそのためだ。
 外国人観光客が多く訪れるスポットを調べた調査がある。先ず、トリップアドバイザー社の「外国人に人気の日本の観光スポット2014」*2には、第1位の伏見稲荷大社から30位までの日本の人気観光スポットが掲載されている。このリストの中に清里は無い。このリスト自身、外国人が日本人とは別の視点を有することが窺われ、興味深い。
 また、英語教材のアルク社のHPには、「外国人に人気の日本の観光スポット」が2回に渡って、50数か所紹介されている*3。どういう基準で選定したか判らないが、山梨県では、富士山、富士5湖、鳴沢氷穴だけだ。ちなみに八ヶ岳といえば隣の長野県の野辺山界隈も含まれるが、長野県で挙げられているのは軽井沢だけだ(上記のトリップアドバイザーのベスト30では、山梨県はゼロ、長野県は松本城)。
 30か所とか50数か所とかの外国人人気観光スポットに挙げられているかどうかで判断するのもおこがましいが、中国語、韓国語の表示が少ないことも併せ、清里一帯は、外国人に対しあまり関心が無いのかも知れない。もっとも清里の開拓に功績がある米国人ポール・ラッシュ博士は、今も清泉寮に名が残っているから、関心の無いのはアジア人に対してだけかも知れない。
(清里の今後)
 アジア人観光客への関心の乏しさの意味として、2つの可能性があろう。第1は、アジア人観光客への対応を怠ったことが清里衰退の原因の1つではないかと考える視点である。第2は、過去のメルヘン・ブームないし短期的視点の観光地化を反省して、「地域資源を活かし本来の魅力を発信する清里」(前述の甲府財務事務所レポート)の視点から、本物を目指していると考えるものである。ここからは、アジア人のための観光地との視点はあまり出てこないだろう。
 清里が今後どのような観光地として発展していくのか、いかないのか、興味が尽きない。幾ら立派な理念を掲げても、観光とは相手のあることだから悩ましいだろうと思う。