チャイナシンドローム

 あらかじめ断っておくが、このタイトルは竜頭蛇尾で、話は、テレビのニュース番組への私の感想(お辞儀、服装、手話通訳)に発展する。
1) チャイナシンドローム
 福島原発事故以来、見たいと思って気に懸っていた映画だったが、しばらく忘れていて、この度やっとレンタルDVDを借りてきた。以下、若干ネタバレなので、マナー*1に従い、あらかじめ断っておく。
チャイナ・シンドローム(原題: The China Syndrome、コロンビア映画、ジェームス・ブリッジス監督、1979年公開)
 米国での公開が1979年3月16日で、その12日後の3月28日にペンシルバニア州スリーマイル島で、本当の原発事故が発生した。ということで大いに話題になった映画だ。題名のチャイナ・シンドロームの語も流行した。
 私も以前は、メルトダウンとは、核分裂を制御する制御棒が無くなるので再臨界になって核分裂が始まり、核燃料がある限り核反応が継続し、その熱で核燃料が地中深く沈降を続け、果ては米国の裏側の中国にまで至るという、いわゆる「チャイナ・シンドローム」に〓がるものと思っていた。しかし、福島事故では、メルトダウンは確認されたが再臨界が起らず(少なくとも続かず)、メルトダウンが必ずしも再臨界に繋がらないことを知った。まだその機構を十分理解している訳ではないので、本稿では省略。
 借りたDVDを見たが、実はがっかりした。主に2点あって、第1は、「チャイナ・シンドローム」の語は、ジョーク的な雑談として出てくるだけで、その中身を詳しく紹介するものではなかった。チャイナシンドロームないし再臨界の仕組を映画で手軽に勉強したいとの甘い希望は叶えられなかった。
 第2は、原発の爆発事故が起きて、どのようなパニックになるか、政府等はどう対処するかに関心があったが(福島に比較して)、実際の爆発の発生には至らずに終った。というのは、原発の深刻なトラブルはあり、その原因を探っていく話ではあるが、メルトダウン、爆発等の事故に〓がるものかの結果がはっきりせず、うやむやのまま終ってしまった。スリーマイル島事故の前でもあり、具体的な原発事故の可能性がはっきりせず、イメージが描きにくかったということがあるかも知れない。
 映画のよかった点もあり、それは懐かしのジェーン・フォンダが主演だったこと。1937年12月生れということだから、この映画の時は41歳か。十分若い。地方テレビのレポーター役を演じていて、原発のトラブルを追っていく。電力会社の社長はトラブルを隠して、新規発電所の建設許可に影響を与えたくないとする。一方、発電所の安全責任者は、トラブルの背後に建設業者の手抜きの可能性を発見するというストーリーだ。
2) ニュース番組でのお辞儀とキャスターの服装
 前項の映画で格好よかったのは、ジェーン・フォンダのレポーター振りだ。これとの比較で、日本のテレビニュース番組を見ていてかねて気に懸かっていることに触れる。日本のテレビキャスターは何故あんなにお辞儀ばかりするのだろうかということだ。特に番組の最後にはキャスター全員打ち揃って深々とお辞儀するのが定例のエンディングである。
 ジェーンフォンダはお辞儀をしなかった。現代の欧米のテレビでもそうだ。米国のテレビのCNNや英国のBBCでは、ニュース番組の終りでも誰もお辞儀しない(私は見た記憶があまり無い)。お辞儀の有無は、非言語コミュニケーションの国際比較の最大のテーマの1つと思うが、その議論はここではしない。
 私の気懸りは、お辞儀をしなければいけないために、日本の女性キャスターの服装に制約があることだ。胸開きのデザインのブラウスやジャケットを着るときは、下に胸当てのシャツなどを着ているが、これが非常に目立つ(Vゾーンにあるから「三角巾」のようだ)。これが見苦しいというのが私の気に障っていることだ。
 ニュース番組の最後にみんなで深々とお辞儀をする必要はないと思う。バイバイと手を振るぐらいでいいのではないか。それよりもセンスのいい服装をしていてもらった方がいいと思う*2
3) 手話通訳
 テレビのニュースの話のついでに、政府首脳の記者会見に同席する手話通訳についても気に懸かっている。官房長官と首相の記者会見に手話通訳が登場するようになったのは、東日本大震災以来のことらしい。ある視聴者からの要望というか提案を受け入れてのことと聞く。
 官房長官の記者会見は、私が見るのはほとんどニュースの画面でだが、最初に手話通訳が登場した後、すぐ官房長官だけのアップになる。テレビを見ている聴覚障害者には何の意味も無い。ネットで調べたら、記者会見をそのまま放送する場合には、手話通訳と官房長官のアップの2重画面にしているそうだ。確かに、首相官邸のHPにある官房長官の記者会見の動画を見ると2重画面になっていて、これは有意義であろう。藤村新官房長官になっても同じである。http://nettv.gov-online.go.jp/prg/prg5304.html?t=60&a=1
 しかし、ニュースを見ている聴覚障害者もいるだろうし、折角手話通訳を入れているなら、手話通訳の画面は入れた方がいいのではないかと思う。他のニュースには手話通訳が無いから聴覚障害者はニュースを見ていないであろうからという議論には、テレビニュースの画像はラジオと違って相当な情報量で、また一般に結構字幕もあるから、聴覚障害者も割に見ているのではないかと思う。
 それから、首相の記者会見も、菅首相の時は手話通訳を入れていた。しかし、官邸のHPに保存されている画像は、官房長官の場合と違って2重画面にはなっていない。冒頭に手話通訳が首相の近くに寄ってくる場面があるだけで、直ぐ首相だけのアップになる。http://www.kantei.go.jp/jp/kan/statement/201108/26kaiken.html
 なお、野田首相になってからは、官邸のHPを見ても手話通訳は最初から入っていない。どうなったのだろう。

*1:ネタバレ警告のマナーについては、 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8D%E3%82%BF%E3%83%90%E3%83%AC

*2:胸チラなどの放送事故を期待している訳では決してない。