スーパークールビズ

 福島原発事故による節電対策の一環として、政府は、今年の夏向けにスーパークールビズを提唱した(後述)。 「スーパー」とは大げさだが、基本的にはいいことと思う。これを踏まえ、私の今夏の服装を計画した。昨夏の方針を踏まえて述べる。
1) 昨夏の方針
 昨年6月15日の弊ブログ(id:oginos:20100615)で、「ワイシャツの衣替え・夏モード」と題して駄文を書いた。私の夏の通勤スタイルについての話だ。ポイントの第1は、半袖ワイシャツをベースにして、a)ネクタイ及び上着を着用、b)ネクタイ着用、ノー上着、c)ノーネクタイ、ノー上着(真夏モード)の3モードを設定し、暑さの進展に応じて順次変えていくこと。第2は、世の中のビジネス界では、ノーネクタイが予想以上に普及しているので(ノー上着はそれほどでもない)、昨夏は、自分も早くノーネクタイの真夏モードに移行するということだった。
 今夏は、暑い夏の予想と節電でのエアコンの設定温度が高くなること、更にスーパークールビズの普及により、半袖ワイシャツ姿でさえ、他人から見て暑苦しく感じられるようになるのではないかと思う。
2) スーパークールビズの提唱
 環境省は、福島原発事故を踏まえた今夏の節電対策として、a)従来のクールビズの1か月前倒し(5月1日から)*1に加え、b)6月1日からのスーパークールビズを打ち出した(5月13日発表)*2
 5月1日からの適用については、菅総理以下7名の閣僚がノーネクタイになったのをテレビで見て、若干の季節外れ感を感じつつもその意気込みにびっくりした。もっともネクタイ、上着を着ている閣僚、政治家も多く、一般にはまだ抵抗感があるのだろう。
 スーパークールビズの内容は、環境省によれば、ポロシャツ、アロハシャツなどを認め、Tシャツ、サンダル、チノパン*3についても条件付きで認めるとのことだ。
 私の印象では、従来のクールビズからの変更のポイントは、a)襟、b)シャツの材質にあると思う。半袖ワイシャツの襟はかっちりしている。これをハードカラーと呼ぶと、ポロシャツ等の襟は柔らかく、ソフトカラーと言っていいかと思う(こんな呼び方が正しいかどうかは知らない)。ソフトカラーは、通風性、吸水性の面で過ごしやすい。シャツの材質についても、ワイシャツは綿ないし合繊製で、クリーニング後にプレスしてかっちりしているが、ポロシャツ等はソフトで吸水性があり、汗を吸い取ってくれるので快適だ。家での洗濯も可能。
 襟の無い(ノーカラー?)Tシャツが、環境省資料では「△(無地のもので執務室内に限られる)」というのも、公の席でのノーカラーには抵抗が強いのであろう。
 こういうもので「スーパー」と名付けるのには違和感もあるが、何れにしろ、ソフトカラー、ソフト材質は、サラリーマンの外見に相当の変化をもたらすと予想する。
 この際の政府ないし経済界への提案だが、学生の就職企業訪問については、ノーネクタイ、ノー上着を条件とするという方針を公表したらどうであろうか。幾つかの企業が個別にその方針を採っても、複数の企業を廻らなければならない学生にとっては、効果は限られる。日本経団連などで統一的に方針を決め、プレスで公表することが重要と思う。夏季の学生の上着をきっちり着込んだリクルートスタイルは本当にかわいそうだ。見ていると暑苦しく、自分の(スーパー)クールビズで快適になった気持ちも冷え込む(いや、沸き返る)。
3) 私の今夏の方針
 結論から言うと、私の今夏の「真夏モード」は、無地単色のポロシャツで胸ポケットの付いているものとしたい。視点は次のようなことである。
a) ソフトカラー、ソフト材質のシャツは、通風性、吸水性に優れているので、周りがそれを受け容れていくなら、私もその快適性を享受したい。胸ポケットは、定期券入れ等を入れるため必要。
b) 私は、客観的に見て高齢者だから、更に貧相な外見にならないようにしたい。ノー上着なのでなおさら、だらしなく見られたくない。その意味でネクタイ、ハードカラー等は年寄りとしては安心できたが、暑い夏では他人に暑苦しさを与える。アロハシャツの開襟デザインについては、個人的好みではややだらしないような気がする。ということでポロシャツを選んだ次第。
 色については、かつて(10年以上前)、「年寄りの原色チェックのカラーシャツ*4はダサい」と書いてあるのを読んで、そんな観かたがあるのかと思い、以後原色チェックのシャツ類は避けている。いわんや通勤着においては、それに準ずる色合いや模様も好ましくないだろう。
c) 真夏モードの前の段階では、去年辺りからネクタイも暑苦しく感じられるようになったので*5、(周りに合せて)早めに、ノーネクタイのボタンダウンの半袖シャツにすることにする(直ちにポロシャツは抵抗があるから)。
4) その他
 以下は、どうでもいい視点だ。やや細かな点が多いが、参考まで。
a) 従来のクールビズの長袖シャツについては、我が家のクリーニング屋の配送スケジュール(週1回)を考えると、ちゃんと導入するには新たに10セット揃えなければいけない。これでは投資額が膨大になるので、私はかねてためらっていた。今夏のソフト材質だと家で洗濯できるから、数着ぐらいの投資でよく、手軽に導入できる点もいい。
b) 従来のワイシャツだと、吸水性に劣るので、汗を吸収するための肌着をワイシャツの下に着ていた。今夏のソフト材質だとそれが不要になり、より涼しくなると期待できる。
c) スーパークールビズのシャツ以外のスニーカー、サンダルとチノパン等については、まだ結論を出していない。職場でそんな恰好をしていいのだろうか。チノパンなどのコットン製ズボンは折り目が無くよれよれで、そんなので人前に出ていいものだろうか。サンダルは素足でいいのだろうか。先ずは周りの様子を見て、という気持だ。
d) いろんなシチュエーションに備えて、職場に上着ないし背広の上下と半袖ワイシャツを揃えておくことも必要かと思う。従来のクールビズでは、ネクタイを着け、上着を羽織るだけでよかったが、今後は着替えが面倒になる。
e) 環境省の上記の発表では、6月に向けて各デパートでスーパークールビズの商品が発表されるとのことだ。それを見つつ改めて検討しよう。
f) サラリーマン生活を始めて以来、毎夏、女性の軽装が羨ましくてしょうがなかった(夏は女性に生れたい)。今夏は、それが逆転するのではないかと期待している。
5) 追記(5月17日)
 スーパークールビズにぴったりの俳句を見つけた。

襟にふく風あたらしきここちかな (蕪村)

 句の内容自体は明快でコメントしようもない(ひょっとして深い意味があるかも知れないが)。しかし情景には注釈が必要だろう。
 着物の襟と洋服のカラーとは、そもそもは内容が異なるらしい。着物の襟は、着物に密着している。立っているのは中国から伝わったものだ(あげくび「上頸」と言うらしい)が、日本本来の襟は平たい。これに対し、洋服のカラーは、首の回りに着用されるもの全てで、襟、首飾り、(犬の)首輪など、形、材料を問わないらしい。ビクトリア女王などの華やかな襟飾りもカラーだ(以上、電子辞書のブリタニカ百科事典)。
 ということで、蕪村の句の「襟」は、ワイシャツ、ポロシャツのカラーではなく、着物の平たい襟のことだ*6。俳句の主題はあくまで「風」で、季節は「風あたらしき」から見て、「風薫る」と同じ初夏であろう。
 蕪村が見ていた情景とは異なるが、同じ文字表現が、現代の我々の感じる風情をも適切に表現していると思う(正確には、6月以降の風情の予想であるが)。

*1:http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=13732

*2:http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=13775

*3:コットン製のズボン。チノ・パンツ。

*4:このカラーは、collarではなくcolor

*5:昨年の弊ブログ(id:oginos:20100615)の最後を参照。

*6:「襟」には、衣服の襟の他に、首の後ろの部分を指す意味もあるが、多分派生的な意味だろう。手許の古語辞典には、首の後部分の意味は出ていない。