スマートウォッチ

 来月7月に満70歳になる。杜甫の曲江詩「人生70古来稀なり」にちなみ、「古稀」と呼ばれるが、高齢化の現在、今では並だから、私は「今並(いまなみ)」と言っている。それはそれとして、子供たちが何か贈ってくれるというので、スマートウォッチを頼んだ。以下、1)スマートウォッチを希望した理由、2)ウォッチの種類と検討候補、3)選定基準と結果、4)おまけのワイヤレスイヤフォン、について説明する。約5,000文字とやや長いがご容赦を。

1) スマートウォッチを希望した理由
 私は携帯電話を利用し始めた約20年前から腕時計をやめた。携帯を見れば時間が判るからだが、他にややみみっちい理由があった。というのは、背広に必須なワイシャツの袖口が、腕時計に比して細く、直ぐ痛むことだった。ワイシャツの袖口に収まらないこともあり、腕時計が常時袖口からはみ出してしまうのもみっともない。
 去る3月に(手伝いの)仕事を辞めてからは背広、ワイシャツを着る機会も甚だ少なくなった。携帯電話で時間を見るには2ステップ掛る。外を歩いていて、家人から今何時かと訊かれると、左のズボンポケットからスマホを取り出して、電源を入れるという手間がかかる(たまたま最初の画面に時刻が出ない時はもう1手間必要)。腕時計だと1ステップで早い。
 最近はやりのスマートウォッチだと、時計の他、スマホとの連携、身体活動量の記録など(後述)ができて便利そうだと思った次第だ。
2) スマートウォッチの種類と検討機種
 スマートウォッチは、ウェアラブルバイス/コンピューターの1種ではあるが、そうなると視点が拡がり過ぎる。ウォッチ以外はそれほど手軽で便利なものも登場していないと思われるので、時計型に限って説明する。包括的に説明しているページがある(http://securitysoft.asia/smartwatch/ )。
 私なりの理解では、スマートウォッチとは、a)時計、b) スマホとの連携、c)身体活動計測等ができる腕時計であると思う。
 b)スマホとの連携の内容は、電話、メール、SNSの着信、予定表の表示などだ。更に電話、メール、SNSの返信、送信は、可能なものもあるし、できないものもある。音声入力もある。機種によっては更に多彩なアプリがある。
 c)身体活動量計測の定番は、加速度センサーによる歩数計測だが、更に、心拍数(通常、脈拍と同値)等もある。これらに基づき、スマホと連携しての身体状況の分析、ログ記録などもある。
 以上のような定番スマートウォッチに対し、高機能なアスリート向きのモデルもある。エプソンWristableGPS というシリーズは、GPS付き活動量計機能付きランニングモデルといい、マラソンなどのランナーを意識している。足跡、各種の活動量をフォローできる(http://www.epson.jp/products/wgps/ )。更に高機能なものとして、登山者等を意識した、GPS、高度、足跡記録などが可能なものがある。同じエプソンWristableGPS for Trek (http://www.epson.jp/products/wgps/special/ )は、気圧、地磁気センサーが付き、日本百名山のルートデータを内蔵している。この他、アスリート向けではないが、血圧計付きのスマートウォッチがカシオで開発されているとの情報もある*1
 私は、登山家でもアスリートでもないので、定番スマートウォッチとし、Androidスマホと連携する次の3つを検討候補にした。大体2-3万円だ。
a) エプソンPULSENSE PS-600 (http://www.epson.jp/products/pulsense/ )

  • 時計機能 常時画面に表示されるのが有難い。(後述)
  • 活動量計測機能 歩数、カロリー(脈拍/歩数から推計)、脈拍、睡眠状況(脈拍等から推計。浅い/深い眠りの時間を算出)。ワークアウトといって、意識して運動する時間を設定して(例えばジョギングの開始と終了)、その間の総活動量を表示するのはいいと思う。
  • スマホ連携 電話/メールの着信、スケジュールの時刻の提示。(後述するが問題が多い)
  • 動作時間 5-7日間とある(省エネモードだともっと長い)。睡眠時間を分析するから、これくらいは必要か。検討候補の中では最長。

b) ソニー SmartWatch3 SWR-50 (http://www.sonymobile.co.jp/product/smartwear/swr50/ )

  • 時計機能 液晶デイスプレーで、常時の画面はオフで暗いようだ。
  • 活動計測機能 歩数、カロリー(歩数から推計)、GPS、位置情報
  • スマホ連携 電話/メールの着信。メールには音声で返信可能。スケジュールの時刻の提示。天気、交通情報等の表示。音楽、地図、タクシー呼出しなど多彩なオプションがある。
  • 動作時間 1-2日間。毎日充電が必要。コネクタは差込み式でやや面倒か。

c) ASUS Zenwatch2 *2

  • 時計機能 液晶デイスプレーで、常時の画面は暗いようだ。
  • 活動計測機能 歩数、カロリー(歩数から推計)
  • スマホ連携 着信メールの表示。SNSには音声、絵文字で返信可能。スケジュールの表示。
  • 動作時間 1日半。毎日充電が必要。コネクタはマグネット式でややいい。

d) Apple Watch *3
 私のスマホは、Androidだから、Apple Watchは対象外だが、人気ブランドだから、その仕様を紹介する。

  • 時計機能 液晶デイスプレーで、常時の画面は暗いようだ。
  • 活動計測機能 歩数、心拍数、カロリー(歩数、心拍数等から推計)。速足、立姿勢時の状況も計測。ワークアウト(運動時の計測。エプソンの項を参照)もある。
  • スマホ連携 着信メールの表示。着信をタップで知ったら、手首を持ち上げるだけで、読める。返信が可能(音声入力も可)。スケジュールの表示。電話にも対応。
  • 動作時間 バッテリー駆動時間は18時間。

3) 私の選定基準と選定結果の評価
 次を基準にして、結論はエプソンを選択した。
a) 時計画面が常時見られること
 すなわち、多くのウォッチは、バッテリーの関係で、通常は画面がオフだ。タッチないし角度の変化で、時計画面を提示するものが多い。画面タッチやボタンを押すのは1アクションの手間が必要で、遅くなる。特に両手が必要になるのは面倒。私の場合、ズボンの左ポケットに入れてあるスマホを左手で出し、片手持ちのまま左手で電源を入れるから、片手で操作がすむ。腕時計だと、画面へのタッチやボタンを押すにはもう1本の手が必要だ。これにより操作性が悪化する。
 アップルウォッチは、画面を見るために手首を顔方向に近づけると、その角度変化を感知して時計画面を出す。わずかにワンテンポ遅れるので、嫌がる人もいるらしい(私もそう)。また、プレゼンをしている時に、机の上に置いて残り時間を確認しようとする場合、消えてしまう。
b) 睡眠モニターに魅力を感じたこと
 エプソンは、毎晩、浅い眠りと深い眠りの時間を計測してくれる。私は、最近睡眠時間が短く、睡眠状況の把握には関心がある。これには当然眠っている時にもウォッチを装着している必要がある。そのためにもエプソンのバッテリーの動作時間が数日間というのは大きな意味がある。他の機種の1-2日間では実現できないであろう。
c) 身体活動計測については、脈拍(心拍数)が計測できるものに魅力を感じたこと
 上記ではエプソンとアップルが該当する。活動量の負荷を計算する時に、単なる歩数だけではなく、心拍数が多い場合と少ない場合とでは当然負荷が違う。実際に歩いている時に脈拍が判り、100を越えるとピピッとなって教えてくれる。更に110を越えるなどするとまたピピッとなって教えてくれ(下っても鳴る)、その段階が画面上に円環状に図示される。速足で歩いている時には励みになる。
d) スマホとの連携については、上記の機種はすべて可能だ。
 エプソンもメール等の着信の表示とあるので、音声入力の返信は駄目でも、送信者等、内容の一部は読めるだろうと勝手に思っていたが、実際に手にして、これは完全に裏切られた。振動で手首に知らせるだけで、内容は全く判らない。スマホを取り出して確認するしかない。スマホ連携という他の機種の用語とほぼ同じなので、つい間違った。これを知っていたら、エプソンを選んでいたか判らないと思う。エプソン以外には(特にソニー、アップル)には、多彩なアプリがあって楽しそうだ。
 負け惜しみをいうと、私がスマホ連携を条件とした理由は、ズボンのポケットに入れたまま(特にマナーモードにして)、外を歩いている時に、家人からの電話、メールがあっても気が付かないことがあるからだ(家人からの場合に限らないが)。電話したのに何時も出ないと嫌味を言われる。スマートウォッチで直接手首に振動が来れば、歩いていても気が付くだろうということだ。だから、内容が判らなくても、ウォッチで返信できなくても、最低限の条件は充たしている訳だ。
 しかし、他機種のスマホ連携は、内容もすぐ読め、返信も簡単にできるようで、素晴らしい。その他のアプリも正直言って羨ましい。
e) しかし、しかしだが、エプソンも悪くない。
 時刻が直ぐ判る。(老眼鏡を取り出すのが面倒な)家人の問合せに直ぐ応えられる。(今では機会が無いが)プレゼンをしていても残り時間が直ぐ判る。バッテリー持ちの良さを活かして、睡眠をモニターできる。歩いている時など心拍数をモニターして、活動量を管理できる。
 以上のようにスマートウォッチを1か月間ほど調べて、希望機種が決ると、誕生日の7月まで待てなくなった。1か月早くとおねだりをして入手し、6月13日から使い始めた。歩数計については、かねてスマホでモニターしている。週当り5万歩から7万歩を歩いている。今度のスマートウォッチの歩数との違いを本日(15日)確認した。スマホで8,872歩、ウォッチで8,968歩、わずか1.1%の違いだ。装着場所がズボンのポケットと左手首と違うのに、割に精度が高いと感心した。

4) おまけのワイヤレスイヤフォン
 上記のスマートウォッチに加え、おまけとしてワイヤレスイヤフォンをねだった。スマートウォッチのカタログを見ているうちに、特に音楽との連携を売り物にしているソニーなどのカタログに、ウォッチを付けてジョギングしている女性アスリートがワイヤレスイヤフォンを付けて音楽を聴いている。これだと思っておねだりをした次第。3000円ぐらいだと思う。Bluedioという中国のブランドだ。
 今まで通勤時に音楽を聴く方法として、iPodICプレーヤースマホなどを時々使っていた。もっぱらイヤフォンのコードをスマホなどに差し込んで聴く。しかし、この3月に勤めを辞めて以来上着を着る機会が減ると、音楽を聴く際にスマホを入れる上着の胸の内ポケットが無くなった。スマホはもっぱらズボンのポケットだ。イヤフォンのコードが長くて扱いに困る。ワイヤレスは便利だと思った。
 今日早速、散歩に出た時に装着した(ジョギングではない)。スマホで聞き放題のAmazonMusicを掛けてイヤフォンで聴いた。私は耳が悪いので、音質の違いが判らないが、快適だと思う。ちなみにスマホとの無線通信はBluetoothで、スマートウォッチとスマホとの通信と同じだ。周波数の輻輳は起らないのだろうか。
 ワイヤレスで聴きながら食堂で食事したら、コードが皿の上に垂れ下がって少し焦った。それはともかく、楽しい70代が送れそうだ。贈ってくれた皆さん、有難う。