電話機のシャープ記号

 電話機のキーパッドには、一番下段の「0」キーの左に「*」キー、右に「#」キーがある。この「#」を「シャープ」と呼ぶと思っていたが、携帯電話についてのある本を読んでいたら、英語で「sharp」は通じないという。pound mark又はpound signと言うと書いてあった。
 びっくりして調べてみたら、このことは既に相当有名で、いろんなブログで紹介されている。冒頭に紹介した本では、pound signしか出ていないが、英語でも国によって違うらしい。以下、英語の各国について、英語版のWikipediaの「number sign」の項に従って紹介する。http://en.wikipedia.org/wiki/Number_sign
 更に英語以外、また音楽記号についても若干調べた。以下音楽記号のシャープもあって紛らわしいので、この記号を「番号記号」と呼ぶ。日本語のWikipediaでもこの名前で項目が立っている。
1) 音楽のシャープ記号との違い
 音楽のシャープ記号は、英語でもsharpだが、番号記号とは、正式な図形が異なる。すなわち、音楽記号は、縦2本が垂直で横棒が右上りに傾いている。そうでないと横線ばかりの五線譜上で読み辛いことは理解できる。番号記号の場合は、横線2本は水平で、縦棒は垂直か右下りに傾いている。この両者はJISの記号でも違っている。
2) 英語の表記
 米国では、上記のとおり、pound mark、pound signで、電話機のキーは、pound keyだ。しかし、英国等(後述)では、hash sign又はhashと言うとのこと。その他の国(カナダを含む)では、number signが一般的らしい。
 米国のpoundは、英国の通貨のポンドや重さの単位のポンドのことで、£、lbと並んでこの記号#も使われるとのこと(私は恥かしながら記憶に無い)。hashは、英連邦のアイルランド、豪州、インド、南アフリカ、シンポールでも使われている。その他の国のnumber signは、#1、#2などと使われるからだ*1。カナダは英連邦のはずなのにhashではなく、前述のとおり、number sign
 英語では、他の言い方もあるらしいが、詳しくは省略。面白いのは、1960年代に、ATTのベル研で、押しボタン式の電話機を開発途中に、数字キーに加え、*と#の2つのボタンを発案し、#用にoctothorpの言葉を作ったとのことだ。その後、情報技術者はこのoctothorpの言葉を使うべしと言う人もいるらしい*2。ちなみに、octo(ラテン語で8)は#の端点が8個あるからだ。この点で、もう1つの記号*(star)をsextileと言うこともあるらしい。sexはラテン語の6だから、つじつまはあっている。
3) ITU-T E.161
 電話機のキーパッドは、国際通信連合(ITU)の規格で定まっている。 具体的にはTU-T E.161だ。 http://en.wikipedia.org/wiki/E.161
 英数字、記号の配置は定まっているが、ついでに呼び方も規格として定めておいてくれればよかったのではないかと思う。また、かねての疑問で、そのうち調べてみたいと思っているが、電話機のキーパッドと電卓のそれとは、何故数字キーの配置が上下逆なのだろうか。
4) 他の外国語
 英語以外の外国語も調べたくなる。幾つかの外国語の辞書は手持ちの電子辞書に入っているが、このような記号はどうやって調べればいいか判らなかった。先ほどのWikipediaの「Number sign」の左の欄にlanguagesと言う欄があり、いろんな言語がリストされている。これは便利そうだと言うことで、以下、幾つか紹介する。音楽記号のシャープも併せて。
○フランス語:Croisillon 辞書を見ると、十字架の横木とか窓の桟が本来の意味らしい。音楽記号のシャープはdi〓se。
○ドイツ語:Doppelkreuz、Nummernzeichen、Rautenzeichen、Hash-Zeichenと、英語並みにいろいろある。Doppelは2重、Kreuzは十字架、Rautenはひし形、Zeichenは印。音楽記号はKreuz。
スペイン語:almohadilla、numera 他にもあるらしい。almohadillaは、元来クッションとかパッドとかの意味。音楽記号はsostenido (sostener 支える、からか)。
○イタリー語:Cancelletto。cancellata(格子)からか。音楽記号はdiesis
○中国語:「井號」、「井字」。音楽記号は、「升音符」。「井」と「升」と微妙に違う。
○ロシア語:oktotorp(本来はキリル文字)。上述のベル研の命名がロシアの地に伝承されていことに感動。音楽記号はdiez。
 上記の外国語では全て、日本語と異なり、番号記号と音楽記号は呼び方が違うことも興味深い。
以上
 

*1:No.1 no.1と同じ

*2:http://homepage1.nifty.com/tabotabo/ccc/num.htm 。octothorpについては、http://www.worldwidewords.org/weirdwords/ww-oct1.htm が詳しいが、相当マニアック