ボディタッチの男女差

 先月になるが、「所さんの目がテン!」というテレビ番組を見て、妻と大笑いしたことがあった。セクハラをテーマにしたものだが、その中のサブテーマ「女性が嫌がるボディータッチ、男性はなぜしがちなの?」で、実際の実験により男女の感覚の差を実証していた。本稿では、1)そのテレビでの実験の概要と、2)それに類似した個人的体験をを紹介するとともに、更に3)ボディタッチやセクハラの国際比較について若干調べたことを述べる。
1) ボディタッチに対する男女差の実験
 標記のテレビ番組の内容は、ウェブに掲載されている。本記事の最後に該当部分を抜粋して添付したが、概要は次の通り。
 実験は女性を被験者としたもの(A)と男性を被験者としたもの(B)と2つある。実験A)では、女性から見た第1印象の好感度最高位の男性でも、女性にボディタッチを何度か行うと、好感度が最低ランクに落ちることが示された。実験B)では、逆に男性から見た第1印象の好感度が最低位の女性でも、その後男性にボディタッチを何度か行うと、(男性からの)好感度が大幅にアップする。しかも、男性はボディタッチされると全員嬉しそうだったとのこと。
 我が家ではボディタッチに対する男女の感じ方がこれほど違うのかと感心し、改めてお互いを見て、それぞれに過去何十年かの歴史を回顧した。妻からは、電車の中で間違っても女性に接触しないよう改めて注意された(私は痴漢とされたことは誓って無い)。
2) 喫茶店等でのお釣りの渡し方
 1か月ぐらい経って、妻と喫茶店に入った。レジの店員(女性)が私にコインで釣り銭を渡す際に、多分落さないようにと気を遣ってか、左手で私の右手を下から支え、手のひらに上からコインを乗せてくれた。感じがよくて感心した。妻に、この喫茶店では、あのテレビ番組のように男性心理を考えた釣り銭の返し方を教育しているのかなと言ったら、叱られた。手を触られたぐらいでニコニコする男は許せないとのことだ。
 その後、妻は自分もスーパーのレジで手に触られながらお釣りをもらったことがあったが、あまり気分がよくなかったとのこと。我が家でも男女の溝は埋らない。ちなみに、私が愛用している電子マネーではお釣りが出ないので、このような触合いの機会は無い。
3) 外国でのボディタッチ
 私が男だから感じるのかも知れないが、1)の実験のようなボディタッチへの嫌悪感は、日本人(女性)に特有ではないだろうか。外国人と接する際に特に気になるのは、ボディタッチの中でもハグ(軽い抱擁)であろう。欧米や韓国、その他多くの世界の国(国別の詳細はよく知らないが)では、親戚や親しい友人とのハグ、更にハグアンドキスは、普通の挨拶としてよく見られる。異性間に限らず同性間でも普通で、政治家などは友好を誇示するためか、カメラの前でハグすることが普通に見られる。夫婦や恋人以外の親しい人との挨拶としてハグを認めない日本の文化は、恐らく世界で少数派だと思う*1
 異文化の壁を越えてグローバルな活動をする日本人は増えているが、多分最も苦手にするものの1つがこのハグであろうと思う。男性はまだしも、国際的に活躍する日本人女性にとって、この外国人(特に男性)からのハグ(アンドキス)攻勢に対してどう対応するかが大きな問題でないだろうか。例えば、エッセイスト遙洋子の2年前の日経ビジネスのウェブでのコラム「セクハラと「文化」の微妙な関係」
*2では、オーストラリアに行った時に、知人の友人の男性からのハグ・キス攻勢にあって感じた嫌悪感が書かれている。私は、このようにかねて明解な議論をしている人でも異文化を乗り越えることは難しいのかと感心した。
 また、高校生、大学生の女子(男子も)を外国のホームステイに出す仲介をする機関でも、現地で予想されるハグ等への対処方法をどういう風に伝えるかに悩んでいると聞く。
4) セクハラの国際比較
 日本で、恋人以外からハグをされれば如何に相手と親しくても、セクハラである。外国では、親しくない相手であればもちろんセクハラとして拒否できる。しかし、友人関係や職場の人間関係で親しくなった時にどうすればよいかは悩ましい。職場等の関係のパーティにおいて、米国人達が再会や別れの挨拶等でハグをして盛り上がっている時に、割り切ってハグの仲間入りをするか、自分の嫌悪感に従って離れるか。たまたま見つけた次のウェブページでは、いろいろな人がそれぞれに悩んでいる様子が読み取れる。
http://komachi.yomiuri.co.jp/t/2007/0410/126161.htm?o=0&p=3
 米国企業に勤務していて、ハグの仲間入りをしなければ、本当に心を許した仕事仲間とは認めてもらえないかも知れない。しかしそこで嫌悪感を我慢しては、かつて日本企業の男系社会で生きるために不当な差別に屈したのと変りはない。だからと言って、日本の文化を押し通すことで、今後より多くの外国人とうまくやって行けるのだろうか。国際的でない私はハグの経験も無いし、アドバイスできることは無い。
 話題は少し変るが、昨年の8月に、ロイターが世界各国のセクハラ経験率の調査をした*3。それによれば、調査対象22国の中で、日本の会社員のセクハラ経験率は6%で、低い方から8番目だ(ただし、同じ6%の国が計4か国あるので、同率8位又は同率11位とも言える)。これを見ると、米国は日本より高い8%だが、欧州は日本より低く、フランス3%、英国4%である。よく判らないが、欧州では米国や日本よりセクハラが少ないというより、セクハラへの許容度が高いという面があるとも言えそうだ*4
 話は冒頭の所ジョージのテレビ番組に戻ると、同じボディタッチの実験を外国人の男女についても行ってほしいと思う。日本人の感覚との差がどうなるか、興味は尽きない。

「上司がセクハラする訳」(「所さんの目がテン!」第1082回 2011/5/14日本テレビ) http://www.ntv.co.jp/megaten/ から。
③女性が嫌がるボディータッチ、男性はなぜしがちなの?
 セクハラは男も女も被害にあうものですが、なぜ世の中で男性が加害者になりやすいんでしょうか?セクハラの中でも、男女で意識の違いが大きいものを探ってみると…「肩をもむ」などのボディータッチは、女性の皆さんはかなり嫌なようです。そこで、どれだけ嫌なのか実験!20代の男性の前に、アイマスクをした4人の女性が登場。まず、女性にはアイマスクを外した時の第一印象だけで男性4人の好感度ランキングをつけてもらいます。そして、男女でペアになり、大相撲の八百長問題についてトークしてもらい、きっちり5分後に席替え。全員と会話をしてもらいます。ただし、第一印象一番人気だった男性には、会話中「膝を当てる」、「肩を触る」、「髪を触る」という3回のボディータッチをするように指令を出してあります。彼の評価がどう変わるのかを見る…というのが実験の狙いなんです!さて、一番人気の男性は指令通りに全員にボディータッチを行い、実験終了。男性が退室し、女性たちに再び好感度ランキングをつけてもらうと…なんと全員が一番人気の男性を最下位に下げたのです!女性たちに理由を聞くと、やはり触られたことが印象をグッと悪くしたそうです。女性は、よほど好意を抱く相手や、親しい相手でない限りボディータッチは許せないようです。
 では、逆に女性が男性に対して行うボディータッチはどうなのでしょう?そこでさらに実験!別の男女8名に、今度は男性に第一印象で女性の好感度を順位付けしてもらいます。そして、最下位だった女性に、会話中、先ほどの男性と同じ、3つのボディータッチのミッションを行ってもらいます。女性は指令通り、全員にボディータッチ!すると、男性は全員嬉しそうです。そして、実験終了後、男性に再び女性のランキングをつけてもらうと…全員この女性のランクを上げ、中には4位から1位にした人も。男性たちに理由を聞いてみると、やはりボディータッチが好感度を大きく上げたようです。髪に触る女性「あっ ちょっと ごめんなさい」金子先生によると、女性は「よほど好意を抱く相手以外のボディータッチ許せない」のに対し、男性は、「よほど嫌いでなければ女性からのボディータッチOK」なので、自分が許すのと同じように女性も許してくれると勘違いして、思わずボディータッチしてしまうようです。この男女のコミュニケーションギャップにより、上司や年配の男性サラリーマンは、気を付けていても、セクハラ加害者になりがちなので注意しましょう!

*1:私の生家は地方でやや古いからかも知れないが、私はもの心ついて以来、両親や兄姉とハグしたことが無い。

*2:http://business.nikkeibp.co.jp/article/person/20090114/182684/?ST=manage_200901&rt=nocnt

*3:「職場のセクハラ経験率は日本6%、インドがワースト1位=調査」 2010/8/12 http://jp.reuters.com/article/oddlyEnoughNews/idJPJAPAN-16751820100812?pageNumber=1&virtualBrandChannel=0

*4:フランス人のストロスカーンIMF専務理事のセクハラ事件(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%89%E3%83%9F%E3%83%8B%E3%82%AF%E3%83%BB%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%AD%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%82%AB%E3%83%BC%E3%83%B3)やサルコジ大統領のスキャンダルもかつてあった。