はやぶさ・グランクラス 

 夏休みを取って青森県に行ってきた(2泊3日)。青森県の理由は、家人も私も奥入瀬渓流等に行ったことが無いということ。特に家人は中学時代の修学旅行の途中で発熱し、奥入瀬渓谷に行けず帰京させられたという40年以上も経た悲願があった。また、3月5日が運転初日で*13月11日の東日本大震災で不通となっていた新幹線「はやぶさ」も4月29日に運転が再開され、更に7月9日には徐行運転区間が相当解除されたとのこと。ネットで見ると3週間後のグランクラスの席がたまたま空いていたので、これを利用することとした。以下、グランクラスの乗車感想。
 先ずは、東京駅に入線してきた際に撮影したビデオのファイルを添付した。後ろ向きに1号車から入線。東京駅発の先頭車の10号車は最後。はやぶさ201107..3gp 直

 飛行機のファーストクラスに相当すると話題になっているグランクラスを簡単に紹介すると、1列に3席(1人+2人)で、前後の座席ピッチ
も広くゆったりとしている。1列車に6列で、3×6の計18席しかない*2。専属のアテンダントが2人付いて、ビールやワイン、ソフトドリンクなどの飲み物が無料で飲み放題のサービスだ。軽食とはいえ弁当程度の食事が出る(写真参照)。
 東京-新青森間の料金は、新幹線普通席特急券に比較して大体9,500円高*3。所要時間は、東京-新青森間で当初3時間10分だったが、震災後の徐行区間が一部あるので、利用した日(7月31日)のダイヤは3時間30分だった。最高時速は時速300km。
 いよいよ乗ったが、始動もスムーズで全体として快適だった。座席間隔が広いのはやはりいい。リクライニングがきめ細かく、かつ大きな角度(45度)で設定できる。バックシェルタイプといって、前の座席のリクライニング幅分があらかじめシェルとして確保されているのは後ろの座席の人にとっては安心だ(写真参照)。

 乗客は常に満席で、近くのある座席を見ていると、仙台で降りると別の人が乗ってきて、その人が盛岡で降りるとまた次の人が乗ってきて座るという盛況だった(途中停車駅は、大宮、仙台、盛岡)。女性は、わが家人を含めて5人だったと思う。時々周りを見渡したが、連れ合って話をしている人達はいないようで、我が家を除いては単身乗車組ばかりのようだった。このことは、「鉄道ジャーナル」9月号の特集「新幹線大集合」中の鹿児島から青森まで4新幹線を乗り継いだ報告中にも記されている。グランクラス内の乗客は、「最大にシートをリクライニングさせてくつろぐ人、ちびちびと杯を傾ける人、カメラで撮影に余念のない人がいる。連れ立っての乗車はないようで、話す人もおらず極めて静か。何れもパーソナルな空間を満喫しているよう」とある。すなわち、グランクラスに乗りたくて乗ったというマニアックな人たちばかりのように見えた。家人の観察では、ある若い人は、コーラを5杯もお替りしたそうだ。我が家は期待もしないうちに偶然に2人の席が取れた訳で、気楽にグランクラスを楽しんだ。なお、青森からの帰途は、身分相応の「はやせ」の普通席だ。

 本当に楽しめたのに、文句を言うのも憚られるが、いくつか気づいたことを言う。JR東日本のセンスには疑われるところがある。
1) 女性トイレ
 家人がクレームを付けたのが、男女共用トイレしか無いということ。確かにおかしいと思って、アテンダントに聞き、かつ調べに行った。グランクラスの10号車にはトイレは無く、9号車のグリーン車の10号車寄りにあるトイレは確かに男女共用だ。女性用トイレは、9号車と普通車の8号車を越えた7号車の8号車寄りにある。なお、9号車の座席は14列(2人+2人席)、8号車は20列(2人+3人席)で、10号車から歩いていくと狭苦しく、再び通りたいとは思わなくなる。
 ちなみに、グランクラスグリーン車の近くに男女共用トイレしか無いというのは国際標準からみると大きな問題だと思う。20年以上前のことだが、成田空港から帰るリムジンバスの座席に、外国人向けの日本文化紹介のパンフレットがあった。その中に、注意すべきことの1つとして、レストラン、列車等のトイレの多くが男女共用であるからビックリしないようにということが挙げられていた。公共の男女共用トイレは、古くからこれほど異質に思われていることなので、はやぶさに残っているのには甚だびっくりした。他の新幹線でも多くは女性専用があると思っていたし、帰途のはやせでも、社内のレイアウト案内を見ると、1両おきのトイレ車両にはちゃんと女性用があった。
2) Gran Class
 Gran Classとは、仏語のGrandと英語のClassの合成語であって、しかしGranはスペイン語から取ったと解説されている。よく判らない話だが、そもそもこのグランクラスという名称は、スペインをベースとする国際寝台特急エリプソス(Elipsos)の中の最上級クラスである「グランクラス」が元になっているらしい。このようなちゃんぽんな合成語が本当に使われているのかと思って、Elipsosのホ−ムページを見てみた。さすが国際特急、各国語で表示されたページがある。しかし、スペイン語ではGran Clase、英語ではGrand Class、仏語ではGrande Classeと、何れも各国語の表現に従っていて、Gran Classなどというちゃんぽんな表示は無い。このような無国籍な言葉に会うと、私は落ち着かなくなる。
3) Exclusive Dream
 JRのウェブページで、グランクラスの開発コンセプトが掲げられている。デザインコンセプトは「特別な旅のひとときをあなたに−Exclusive Dream−」」だとある(http://granclass.jp/)。しかし、exclusiveは何かを排除することを意味し、特別とか高級とかの意味はそれ自体としては無いと思う。高級クラブをexclusive clubという用例があるが、あくまで会員制のクラブの場合であろう。Dreamがexclusiveというのは、どうもよく判らなくて落ち着かない。
4) ユーザー乗車記の公募
 グランクラスのウェブページに、「グランクラス乗車レポート・ユーザー乗車記」という欄がある。しかし、掲載されているのは、3月5日の運転初日の事務局が執筆したものだけである。一般のユーザーの乗車記の掲載は1つも無い。投稿フォームも用意されていて、多分たくさんの投稿があると思うが、何故載せないのだろうか。不思議だ。http://granclass.jp/report/
5) 座席前の物入れ
 前の弊ブログ 「東北新幹線はやぶさ」(id:oginos:20110310)で書いたが、かねて東北新幹線の座席の前の物入れには不満だった。というのは、袋でなく、水平方向のベルトで書類などを留めるだけなので、小さなもの、例えば空き缶やお菓子の袋など入れることができず、甚だ不便だった。はやぶさの普通席では網袋*4になり、多少改善されたが小さいという問題があった(既述)。今回のグランクラスでは、先ほどのシェルタイプの写真から判るように、ベルトも網袋も無くなった。収納としては座席の上部が拡がり、膝の上部に拡げるテーブルも飛行機並に用意された。座席の前に縦の書類入れができた(写真では見えない)。しかし、上述のようなお菓子袋等の小物を入れる網袋はほしい。バックシェルの写真から明らかなように、そのスペースは広範囲にくぼんでいて完全に空いている。改善を期待したい。
以上

*1:私は3月8日の仙台出張の際に利用。その状況は、id:oginos:20110310 「東北新幹線はやぶさ」。

*2:グランクラスは先頭10号車だけで、先頭車は、ロングノーズという長い流線型の部分と運転席があるので、座席部分は車両全長の中では半分程度以下(?)であることに留意。

*3:グリーン券は大体4,500円高いので、それより5,000円高い。この他に運賃が9,870円。この他、はやぶさの割増料金(700円)が平常時だと追加されるが、震災後の徐行中の現時点では適用されない。

*4:なお、その後たまたま読んだ週刊誌で、この網袋は、モリトという会社が新しく開発した結び目の無い網でできているものだということを知った(週刊東洋経済2011/3/5号)。