電子お薬手帳

 調剤薬局で「お薬手帳」を盛んに薦め出したのは10年ぐらい前からだろう。私のお薬手帳も最初のラベルが貼られているのは2008年だ。処方薬の履歴が判って安心だが、手帳を忘れることもある(ラベルシールを貰っても家で貼るのは面倒)。手帳が直ぐ一杯になりそうなので、同じ薬のラベルはもったいなくてなるべく貼らない。そのためまだ1冊使い終わっていず余裕があるが、正確な履歴の面では問題がある。
 先週末の5月31日(土)の日経新聞に、「お薬手帳、電子化で便利に」という5段抜きの記事が出ていた。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO72016010Q4A530C1W13001/ (有料会員限定ではなさそうだから一般に見られると思う)
 概要は、お薬手帳の薬剤履歴をスマホ等で管理すれば、治療、投薬の際に有用だ。携帯性の高いスマホで見られれば、震災等の非常事態でも極めて役に立つ。この観点から幾つかのアプリ等が登場し、今広まりつつある。
 確かに便利そうなので、早速トライしたが、割に難航した。以下、その次第を紹介する。
(近くの薬局を探す)
 自分のお薬手帳に貼り付けられているラベルを見て、近くの薬局に電話した。電子化に対応していますかと聞いても、電子化とは何ですかと言って通じない。悪いけれどこの薬局には今後行くのはやめだと思って、次いで最寄駅の近くの大きそうな薬局、合計4店に電話した。しかし、全く話が通じない。
 それで、上記の日経記事に出ていた次の薬局グループをウェブで調べ、最寄駅近くに店があるかどうか調べた。

 それで確認できたことは、最寄駅近くには日本調剤グループの1店しかないということだ。「日本調剤」とは恥かしながら知らなかったが(駅前通りにあったのにも気がつかなかった)、全国に約500店も有する。アインファーマシーズ・グループに次いで第2位の薬局チェーンらしい。
 早速その駅前店に電話した。しかし、領収証にQRコードを印字するが、それにアクセスしても領収金額しかなく、薬品名などは判らないはずと、信じられないことを言う。私はその時には既に同社のHPにアクセスしていて、薬品情報なども判ることを見ていたから(http://www.nicho.co.jp/prescription/book/ の下のコラム欄)、おかしいと指摘した。店員(多分薬剤師)も確かにおかしいと了解し、本社に問い合わせてくれることになった。
(日本調剤とポケットカルテ)
 日本調剤本社との遣り取りの結果は、2日後に駅前店の人が教えてくれた。領収証上のQRコードにはもちろん薬剤情報も記載されているとのことだ。聞いて判った仕組は、次のとおり。
a) 日本調剤の店舗に設置されているレセコン(処方薬局用コンピューター。レセプトコンピューターの略)では、領収証に薬剤情報等を記したQRコード(2次元バーコード)をプリントする。
b) 利用者はスマホバーコードリーダーでそのQRコードを読み取る。それでウェブページにアクセスし、お薬手帳を読むことができる。
c) スマホに特別のアプリをインストールする必要はない。必要なのは、事前に「ポケットカルテ」というサイトにアクセスして、利用者としてのIDとパスワードを取得しておくことだけだ。
 薬局はQRコードの印字だけ、システムの運営は「ポケットカルテ」(他の薬局も少し参加しているらしい)という別組織だから、店の人に聞いてもよく判らないということが判った。これでは普及が進まないのも理解できる。
 個々の利用者の薬剤情報は、b)のQRコードに記載されていてそれがポケットカルテのサイトに読み込まれるのか、又は、薬局(のレセコン)からポケットカルテのサイトに既に書き込まれていて、QRコードは、そのサイトにアクセスする際の本人のIDなのか、店の人の話では不明だ。前者なら嫌な薬はサイトに登録しなくていいが、一々スマホで読み込むのは面倒と思う人もいるかもしれない。今後実際に使えば判ることと思う。
 それで早速木曜日に、ポケットカルテのHPにアクセスして、利用者の登録をした。
https://pocketkarte.net/g_top.action
 このページを見ると、使う携帯から登録をしないといけないように思われる。しかし、私のグーグル・スマホからは、何度トライしても途中で(特に最後の登録のボタンを押す段階で)、「Web脅威対策によるブロック」なるメッセージが出てうまく行かない。思いあまって、サイトに載っているポケットカルテの番号に電話した。スマホの「Web脅威対策・・・」メッセージへの対応についてはコメントしてもらえなかったが、パソコンからの登録もできると言う。それならそういう風に読める書き方をしてほしいと文句を言った(先方も認めた)。
 大体、この申込みサイトは、最初にウェルコムのPHS端末から登録すべき、次いで3社の携帯でも可能という書き方で古い。ポケットカルテは、「どこカル.ネット」(ユビキタス地域健康・医療・福祉情報ネットワークプロジェクト http://www.dokokaru.net/ )の一環として2008年にスタートしたもののようで、サイトの表現が古くて更新されていないとの印象を受けた。電子お薬手帳が普及しないのも理解できる。
 このポケットカルテでは、名前に「カルテ」が含まれているように、診療履歴や健診情報の管理も(提携医療機関であれば)可能なようだ。
 ということで、金曜(6日)の朝には私の用意は整ったが、医者に行って処方せんを書いてもらう用事が無い。6月下旬には糖尿病の定期的な検診で薬剤を処方してもらう予定がある。今まではもっと近くの薬局で処方してもらっていたが、今後は断然日本調剤に替えることとする。その後特段の報告をすることがあれば、このブログでも紹介しよう。懸念の1つは、利用者登録段階でスマホ上に多発した「Web脅威対策によるブロック」が大丈夫かということだ。
(その他の電子お薬手帳のシステム)
 私が利用することとした「日本調剤‐ポケットカルテ」システムの他に、冒頭の日経の記事にもあったように幾つかのシステムがある。ウェブで調べられる範囲内で簡単に紹介する。それぞれ専用のアプリが用意されている。

 日本最大の薬局チェーンのアイングループが、「アインお薬手帳」のアプリをドコモと共同開発し、2012年7月からサービスが提供されている。調剤明細書上のQRコード又はFeliCa機能を利用して、手許のスマホで内容を見ることができる。家族の分も1台のスマホで共同管理できるとのこと。
http://www.ainj.co.jp/pharmacy/record.html

  • アイセイ薬局

 今週アクセスしたところでは、店舗数297の調剤薬局チェーン。2014年5月12日から、アプリ「おくすりPASS」の公開と実証実験を開始。ただし、サービスの全国展開は今年の秋ごろとのこと。
http://www.aisei.co.jp/news//tabid/172/Default.aspx?itemid=187&dispmid=515

 木曜日(6月5日)の日経新聞によれば、電通が今年9月に電子お薬手帳のシステムを中小薬店向けに提供し、初年度5000店を目指すとのことだ。クラウドサービスで、薬局で薬の情報を入力し、患者はスマホの専用アプリで内容を見られる。
「中小薬局でも電子お薬手帳 電通スマホ向け無料で 初年度導入5000店めざす」
http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140605&ng=DGKDASDZ040FF_U4A600C1TI0000 (有料会員限定ページ)

 ソニーは、昨2013年秋より、同社のFeliCa(フェリカ)カードを利用した電子お薬手帳の試験サービスを川崎市にて開始した。FeliCaカードとスマホ用アプリを利用することで、データと個人情報との分離が可能とのことだが、やや面倒か。
http://www.sony.co.jp/SonyInfo/News/Press/201308/13-094/
 提携相手の川崎市薬剤師会も積極的で、この電子お薬手帳を「harmo(ハルモ)」と名付けている。
http://www.kawayaku.or.jp/10_harmo.html
(データ・フォーマット)
 上記のようにアプリやシステムは種々あるが、データ・フォーマットは、「一般社団法人 保健医療福祉情報システム工業会(JAHIS)」がかねて開発してきた「JAHIS電子版お薬手帳データフォーマット」が使われているようだ。厚生労働省も後押ししていて、2014年度から(4月から)の調剤薬局のシステムにQRコードの印字等を行えるような環境整備をするよう関係者に要請している。このこともあって、上記のように各種のシステムが登場しているのであろう。
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/dl/01-07.pdf
(個人情報保護、他)
 このような服用医薬の情報をクラウドにおくということになると、個人情報保護の観点から問題だという人も多いだろう。しかし私としては、医者や健診などの時に、一々既往症や服用医薬を聞かれるのが面倒だ。今後年齢に応じ益々面倒になってくると思う。救急病院に搬送されることもあるかも知れない。その時にスマホを見せればいいというのは有難い。このシステムの普及を支持する。
 ところで、今回縁があって、「日本調剤−ポケットカルテ」のシステムを利用することとなったが(現時点では家の近くに他に無い)、少し古くてウェブページの更新もされていない。他グループで活発に開発・普及が行われている状況で、今後メジャーなものとして残っていけるか心配だ。止むを得ず他の薬局に行かなければならないこともあり得るが、システムが異なると不便だ。日本調剤には頑張ってほしい。