上野駅櫛形ホームと上野東京ライン

 前回の弊ブログ「50年以上前の東京の想い出」(id:oginos:20150327 )で、余談的に、北陸新幹線の開通と同じ3月14日に東京のJRに上野東京ラインができたことを紹介した。そして、上野駅の終着駅型ホームの使い道がなくなってどうなるのだろうかと書いた(同ブログの「上野着の夜行列車」の項)。その後気になり、3月末に上野駅に見に行った。結論からいうと、この「櫛形ホーム」は幸い(?)残っていた。以下、1)櫛形ホームの説明、2)上野駅の2種の櫛形ホーム、3)上野駅発着列車の使用ホーム、4)(上野東京ラインの相方の)東京駅の始発列車の状況、5)感想(上野駅櫛形ホームの行方、常磐線の平面交差、東京駅の直通運転の可能性)を述べる。東京ローカルの話ばかりだ。
 写真が多くて長いように見えるが、本文自体は6,000文字程度で異例に長い訳ではない。。
1) 頭端式、櫛形ホームとは
 上野東京ラインの登場は私には、上野駅が始発終着駅でなくなるという意味で衝撃だった。かつて上京した際終着の上野駅に降り立ったことをまだ覚えている自分としては一抹の寂しさはある。しかし、その後何十年も基本的に利用してないし、時代の流れだからしょうがないと思う。
 それよりも終着駅(ターミナル)の頭端式(櫛形)ホームはどうなったのだろうかということで、上野駅に見に行った。「頭端式ホーム」とは、終着駅に見られる、ホームと改札口が同一平面*1にあるホームだ。「櫛形ホーム」の方が判りやすい。*2 *3

2) 上野駅の2種の櫛形ホーム
 上野駅で有名なのは、13番線から17番線の地上ホームで、改札口と同じ地上1階のレベルにあり、階段を使わずに改札口に行き来できる。本来の櫛形ホームだ(以下「1階櫛形ホーム」)。ところがウェブで見ると、高架地上2階の10番線から12番線も頭端式ホームとある。これは後述することにして、先ず地上櫛形ホームから紹介する。
 次の写真は14番線で出発を控えている列車だ。

13-17番線に他の列車は無く、閑散としている。次はその閑散とした15番線だ。

次は、13-17番線から改札口方向を見た写真。個人的想い出では、上京して降車すると最初にこの方向に歩いて改札口に向かい、多くは地下鉄銀座線に乗り換えて浅草方面に向かった。

(2階の行止りホーム)
 上述したように、2階高架ホームの10-12番線の3線も頭端式で、東京駅方面の南行き側が行止りとなっているとのことだ。そのホームに行って確認した写真が次で、ホームの南端を撮った。11番線(左)、10番線(右)の線路に車止めが設置して行止りになっている。12番線も写真に見えないが行止りだ。ただ、右側の9-10番線のホームは変っていて、9番線側は上野東京ラインの線路で車止めは無い。

 ホームの端から1階行きの階段があるのが見えたが、その横までは確かめなかった。頭端式とあるが、線路が行止りであることを言っているだけだろうと勝手に思い込んでいた。しかし、その後、スマホにインストールしてある「JR東日本アプリ」の上野駅構内図(フロア別の図が出てくる)を拡大してよく見ると、11-12番線のホ−ムの島と9-10番線のホームの島とが、南端で細く繋がっているようだ。スマホのアプリの図を転載する方法は知らないので、グーグルマップの屋内マップを利用することとした(これもフロア別の図が出てくる)。次の図は、グーグルマップの上野駅構内図の2階レイアウトをトリミングし、私が説明メモを付けたものだ*4

 櫛部で両ホームがつながっているのが判るが、私としては想定外だったので、もう一度上野駅に行って確認してきた。1枚目の写真は、10番線側から両ホームを繋ぐ櫛部を見たものだ。狭い。

2枚目の写真は11-12番線から見たもので、到着した乗客が1階への階段に向っている。櫛部にトイレがある(左側に見える)。

 これは、ホームの端が同一平面でつながっているという意味では頭端式ホームであるが、改札口とは同じ平面でないので、櫛形ホームと呼ぶには抵抗を感ずる。この10-12番線は、私としては本来の櫛形ホームではないということで、以下「高架(2階)行止りホーム」と呼ぶ。
 2つの島がつながっている意味がよく判らない(昔は全てつながっていたのかも知れない)。この辺りに10分間位うろうろしていたが、この櫛部を通る乗客はいなかった。利点といえば、写真にあるように櫛部のスペースにトイレを置けることかも知れない。階段を駆け下りなくてもトイレに行ける。緊急な人には有難いだろう。

3) 上野駅発着列車の使用ホーム
 上野東京ラインができて、始発終着ばかりではなくなった上野駅の発着はどうなっただろうか。先ず、改定後の上野駅のホーム利用の全般を説明すると、基本的に各路線は南北(正確には30度ほど北東の方向)に走っている。ホームは西から
1-4番線は山手、京浜東北線
5-6番線は、上野東京ラインに続く北行き方面(東北線高崎線、一部の常磐線)、
7-9番線は、東北線高崎線常磐線から続く上野東京ライン南行き(東京方面)、
10-12番線(高架行止り)は、常磐線の始発終着用
13-17番線(1階櫛形)は、東北線高崎線常磐線の始発終着用、
18番線は欠番で、
19-22番線(地下)は、新幹線用ホームだ。
 手許に1997年4月号のJR時刻表があり、今回買ったJTB時刻表3月号と比較して、上野駅構内図をチェックしたが、番線の位置と番号の付け方は全く同じだ。しかし、5-9番線が頭端式ないし行止りだったかは、構内図を見てもよく判らないし、自分にも全く記憶が無い。
(列車の発着番線調べ)
 上野駅から北行き、南行きの列車(東北線高崎線常磐線上野東京ライン)の発着番線を、ホームの時刻表や買った時刻表で概略チェックした。
○ 東北線(愛称、宇都宮線)
 東海道線から上野東京ライン経由の直通列車が多い。北行き直通列車のホームは5番線が基本だが、早朝深夜などは6番線も使われる。上野始発の列車も数少ないが10数本ほどある。大半が1階櫛形ホーム発だが、早朝深夜には上野東京ライン用の5番線発のものがある(本来は何本中何本と正確に調べなければいけないだろうが略)。
 北からの到着ホームは、上野東京ライン(東海道方面直通)は南行き7番線が基本。終着は1階櫛形ホームが基本。
 東北線の特急列車は何本かあるが、ほぼ全てが新宿湘南ラインを経由するもので上野は通らない。特急きぬがわ95号(大船−鬼怒川温泉)は、上野東京ライン経由で上野に停車するが不定期列車だ。特急寝台北斗星とカシオペア上野駅始発(13番線)だが、既に不定期列車でそのうち無くなると言われている。
○ 高崎線(一部は高崎から上越線へ乗入れ)
 東海道線から上野東京ライン経由の直通列車が多い。北行きホーム東北線同様、5番線が基本だが、早朝深夜などは6番線も使われる。上野始発の列車は、東北線より多く20数本ほどある。東北線同様、大半が1階櫛形ホーム発だが、早朝深夜には5番線発のものがある。
 北からの到着ホーム東北線とほぼ同じ。
 高崎線の特急は、草津スワローあかぎ他何本かあるが、全て1階櫛形ホームを使った上野始発列車だ(上野東京ライン又は湘南新宿ラインを通る特急は無い)。
○ 常磐線
 品川始発と上野始発がある。朝夕は上野始発が多いが、昼の10:00頃から18:00頃の間は品川始発が多い。上野始発列車の出発ホームは、1階の櫛形ホーム、2階の高架行止りホーム(10-12番線)の両者の各番線を万遍に使っているようだ。
 上野東京ラインを経由する品川始発の直通電車北行き6番線か8番線が基本だが、8番線の使用は異例のように見える。というのは、同線は7番線(南行き)の東にあって通常は南行きに使うのが自然だからだ。しかし、品川始発の特急ひたち号、特急ときわ号(何れも本数は多い)の全てが、不思議なことにこの上野駅8番線を使っている(後の5のbの項で述べる常磐線の配線に関係しているのであろうか)。
 常磐線の特急は、このひたち、ときわが基本だが、昼は品川始発、朝、夕は両方混在で判りにくい。
 北からの到着ホームは、上野駅終着列車は、1階櫛形ホームと高架行止りホームを適当に使っている。南行きの上野東京ライン経由の品川行きは、北行きの2線混合使用と違い、全て9番線を使用している。
 北行常磐線の利用者は出発番線を各列車ごとに確かめる必要があり、大変であろう。
 なお、東海道線から東北線又は高崎線行きには、湘南新宿ライン経由があって(従来から)、上野は通らない。この間を利用する人は注意が必要だ。所要時間はそれほど大きくは違わないようだ。

4) 東京駅の始発列車
 ここまで上野駅を調べたところで、上野東京ラインができて始発終着が同じように無くなりそうな相方の東京駅がどうなったのかを調べたくなり、東京駅に出かけた。
 東京駅の東海道線用ホームは、西側7-8番線が北行(上り)、東側9-10番線が南行(下り)だ。7番線と10番線の使用が基本だが、他の2線も適当に使われている。9-10番線(南行き)ホームの時刻表を見ると、始発列車についての特段の表示が無いようなので、全て上野東京ラインからの直通列車かと思った(上野駅のホーム時刻表では、始発の正否を明解に表示)。次いで7-8番線のホームに行っても時刻表に始発電車の特段の表示は無い。ふと気が付いたのは、9-10番線の南行きの時刻表に赤字で表示されていた伊東線の特急「踊り子号」が出ていないことだ。よく見ると、各種「踊り子号」だけは東京駅始発だ。
 その後見付けたのは「東京駅始発の東海道線 平日14本&土日5本の時刻表をまとめてみた」(http://shihatsu.enogineer.com/blog/allday-tokaido-tokyo.html)というページだ。タイトルと異なり、平日28本、土日8本の始発列車が掲載されている。特急踊り子号や何本かのライナーの他の東京始発の普通列車は、早朝深夜だ。ということで、東海道線の東京駅始発が激減したのは確かだ。湘南電車で丸の内に通勤するのは一種のステータスシンボルだが、その特権の1つに夕方に始発電車に乗れることもあったのではなかろうか。その感覚も若干変質するかもしれない。
 このウェブページには、同種のページへのリンクがあり、例えば「東京駅始発の横須賀線 平日5本&休日13本の時刻表をまとめてみた」というのもある(これはタイトル通りの本数だ)。
 直行列車の速さを喜ぶ人ばかりではない。従来都心からの利用者は、上野駅始発列車や東京駅始発列車で座っていくことを選択できた。東北線高崎線常磐線東海道線の利用者にとって、3月のダイヤ改正後、その選択肢は極端に狭くなった。今東京駅を始発としているのは、中央線、京葉線総武線(横須賀線と直通だが始発も割にある)と各新幹線だ。
 一方始発終着が無くなるのは、その駅にとってホームの稼働率*5、路線にとっては線路の稼働率が上ることを意味するから、鉄道経営サイドにとっては推進したいことであろう。

5) 感想
a) 上野駅櫛形ホームの行方
 上野駅の現在も残る多数の櫛形ホーム(高架行止りホームも含め計8線)の稼働状況が悪い。私が行った時も1階櫛形ホーム5線のうち列車がいたのは14番線の特急「草津」だけだった。上野始発終着列車の意義が今後ますます薄らいでいくのではないかと思う。特急電車については清掃等の準備を車両基地の他、始発駅のホームで行う意義はあるが、程度問題であろう。
 上野駅の櫛形ホームは使い道がなくなり、今後他用途に転用されると思われる。ショッピングセンターなどもあり得るが、現在既に3階に相当の規模のものがあり、過剰になる心配もある。何に転用されるのか、転用されないのか興味津々だ。
b) 常磐線と東北、高崎線との平面交差
 常磐線上野駅北側部で、東北、高崎線との平面交差が多くなっているのが気に懸る。すなわち、常磐線の上野−日暮里間の配線図は、南北を並行して走る京浜東北線・山手線(4線)、東北線/高崎線(4線を共用)、常磐線(2線)があって、常磐線が最東端を走る。従来は上野駅が始発なので、地上ホームに加え、高架ホームは東側の9-12番線を使っていた。そのため逆方向の平面交差が無かったようだ。*6
 同じ方向の列車の線路が交差するのではなく、上下逆方向の線路が平面交差するのが問題だ。例えば、上野東京ラインを通って6番線に来た北行きの常磐線の電車が上野駅を出た後、7-8番線を通る南行東北線高崎線用の線路を平面交差して東側の常磐線の線路に行くことになる。また、上述した品川始発の常磐線特急電車が上野駅8番線に入る場合も東北・高崎線南行き線路と交差することになる(この場合の交差は上野駅の南側)。同じ方向の平面交差が全く安全とはいえないが、逆方向の交差の方がリスクが高いのは明らかだ。
 将来本数が増えれば、上野駅近傍での常磐線の立体交差工事が必要になるのではないかと思う。これにより安全に加え、線路とホームの利用効率が高まることが期待される。
c) 東京駅での相互直通運転の拡大の可能性
 直通運転は、線路とホームの利用効率がアップする。始発駅で座れることが期待できなくなる面で乗客サービスとしては評判が悪いかも知れない。しかし、全席指定席列車で座席指定手順が容易なら問題は少ない。その意味で、次の課題は東海道新幹線北行き各新幹線の相互直通運転かも知れない。東海道新幹線の交流サイクル60Hzに対しJR東日本の他の新幹線は50Hzと違うので現在の車両ではできないかも知れない*7。しかし北陸新幹線であれば可能だ*8。東北、上越新幹線もサイクル共用のモーターを開発して続くかも知れない。
 その次は中央線だが、南行きの新線が必要になるから流石に難しいか。しかし、京葉線(東京駅の南側で東方向に走る)と繋ぐというウルトラCの夢物語があるかも知れない。利点は、東京駅を通る中央線特急列車が可能になるかも知れないことだ。東京駅折返し運行の場合は清掃等に時間が掛かる特別列車を、東京駅を途中駅として始発としなければ運行させることができるかも知れない。
 多分JRの人はいろいろ考えているだろう。以上の話よりも脈絡なく希望するのは、JR東海JR東日本がなかよくなってほしいことだ(詳細は略)。

*1:外国では改札口が無い駅も多いが、その場合、ホームと出口が同一平面

*2:wikiの「頭端式ホーム」では、「同一平面上に2本以上のプラットホームが存在し、それぞれの一端が1つにつながっている形状のものをいう」と定義している。私は、更に改札口も同じ平面にあることを条件に加えたい。列車を降りてから階段が無くて出口まで歩いて行ける便利さが利点だと思う。 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A0%AD%E7%AB%AF%E5%BC%8F%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0

*3:「頭端式」ないし「櫛形」ホームを英語で何というかという興味深い疑問がある。wikiの「頭端式ホーム」の「他言語版、英語」ボタンをクリックすると「Bay platform」が出てくる。http://en.wikipedia.org/wiki/Bay_platform ざっと読んだが、頭端式とは微妙に概念が違うと思う。すなわち、Bay platformとは行止りの線路があるプラットホームのことを指していて、ホームの端がつながっていることに主眼を置く頭端式とは少し違う。短い行き詰りの引込み線のあるホームも含めているようだが、櫛形にはそのような概念はあまり無い。

*4:上野駅の構内図は通常pdfファイルで提供されているが、各フロアが同一図面に画かれていて、細かくはよく判らない。URLは次の通り。 https://www.jreast.co.jp/estation/stations/204.html

*5:折返し、その際の車内掃除等に要する停車時間が短くなる。

*6:ダイヤ改正後の状況は「配線略図.net」を参照。 http://www.haisenryakuzu.net/documents/jr/east/tohoku_1/#ueno

*7:前回の弊ブログを読んだ友人が注意喚起をしてくれた。

*8:北陸新幹線は電力会社4社の管轄を運行し、その度に交流サイクルが3回変る。東京を出発した場合、50Hz(東京電力)→60Hz(中部電力)→50Hz(東北電力)→60Hz(北陸電力)。なお、東海道新幹線は、一部50Hzの東京電力管内(東京−静岡県の東部)を走るが、線路側の変電所で50→60Hzの周波数変換を行い、全体として60Hzで統一しているとのことだ。